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血統書のない雑種犬は純血種より劣る??

道路で寝そべる白と茶の大型犬にしゃがみこみ話しかける少年

今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組“宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』”に寄せられたお便りにお答えします。

血統書がないの?
と言われた違和感

今回のお便り:雑種ですが何か?さんからいただきました。
祐子さん、うり店長、はじめまして。私の話を聞いてください!先日散歩をしていたら「お利口ですね」と声をかけられ、そこから何犬かという話になり「雑種です」と答えたところ、「じゃあ血統書がないの?こんなにお利口なのに」と言われました。「えっ?」と思いましたが、何に引っかかったのか、すぐに言葉が出てきませでした。私のこの気持ちわかってもらえますか?

雑種ですが何か?さん…。その、何か引っかかる「ん?」という、モヤっとした気持ち、私もわかります。

「雑種です」って答えた後の相手のリアクション。私も経験がありますよ。

「雑種なのにこんなに綺麗なんですね」「雑種なのに頭が良さそう」「雑種でもこんなに穏やかなんですね」って。雑種に対する大いなる勘違いですよね。その証拠に雑種といわず「ミックスです」と言えばリアクションは変わります。「ハイブリッドです」と言えば「おー、やっぱり!」とかね(笑)。

犬はとても身近な存在なのによく理解されていない。そんな現実を知る瞬間です。

そういう「コトバ」の響きが作るイメージが、「血統書(正式名称:血統証明書)」に対しても間違った知識を生んでいるのかなと思います。

血統書は
なぜ必要?


そもそも、犬の血統書は、純血種を販売するときに「他の犬種の血は混じっていませんよ」と、証明するために必要とされています。また、純血種には体の大きさや毛の色などの規定があったり、純血種特有の遺伝疾患などもあるので、交配には注意が必要です。

そこでブリーダーはその犬の家系図(戸籍謄本)でもある血統書から世代を遡り「どの犬同士を掛け合わせるとベストなのか」を探りながら、生まれてくる子犬の色や大きさ、健康状態などを予測し管理していく必要があります。

つまりブリーダーにとって血統書は、健全に繁殖させるために必要な家系図であり、設計図のような存在とも言えるかもしれません。

偽造も非常に多い

血統書は血統登録された純血種だけに与えられる証明書です。

でも、この「血統書」
実は発行団体とブリーダーの“信頼関係”だけで成り立っているそう。

これまでも、非常に偽造も多かったようですが、現在はさまざまなブリーダーが存在しますから、その勢いはとまらず、ミックス犬にまで血統書があるというおかしなことになっているようです。本来の血統書の意味を理解しないで、なんとなく「血統書付き=価値がある」と考える人が多いからこその結果なのではないでしょうか。

言葉のイメージが
本来の意味を失った

昔は隣近所で生まれた犬をもらって育てていた家庭が多いように思います。しかも、輸入品の少ない時代に「マルチーズ」のように「〇〇犬」と犬種で呼ぶ西洋の犬が流行り出しました。

「純血種」というだけで、珍しくて高級。その犬には「血統書」というものがついているらしい。「血統書つきの犬を飼っている」というのは、お金持ちの比喩にもなった時代があった程です。

そんな昔の笑い話のようなものが、今の時代においても「血統書」=「価値の高さ示すもの」と誤解されたまま根付いしまっている。そういう感じなのかもしれませんね。

血統書から犬の優劣は
わからない


血統書の本来の役割は、その品種の「スタンダード」を守るためのものであって、どんな親から生まれたのかを知る「戸籍謄本」のようなものです。犬の“善し悪し”や“優劣”を測るものでもなければ、飼いやすさや性格などを保証するものではない。

全ての人がそう正しく理解してくれると、血統書のない雑種犬はちょっと残念。そういうリアクションはなくなっていくと私は思います。

雑種ですが何か?さん。どうでしょう。
少しは参考になったでしょうか。何かの尺度に当てはめて判断することは時に大切ですが、時に無意味でもあります。

目の前の子を見て「愛おしい」と感じたり、「すごいな」って尊敬しちゃう。そのリアルな気持ちこそが一番大切だと私は思っています。みなさんもそう思いますよね。これからも素敵なドッグライフをお過ごしください。

この記事はラジオ番組:radio café『犬とあなたと珈琲と。』
(毎週金曜16:00~16:29/FM83.1Mhzレディオ湘南)の2023年2月24日放送分を修正しました。

本記事は「こちら」から視聴可能。後半部分にお便りのコーナーがあります。
レディオ湘南は世界中どこからでもワンクリックで視聴可能です。
番組サイトにもぜひ遊びにきてください→『犬とあなたと珈琲と。』

◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。

文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagramは『こちらから』
ル・ブラン湘南のInstagramは『こちらから』

白田祐子(しらたゆうこ)

プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中、2022年4月(毎週金曜16:00~16:30)から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。

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