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犬の心理*犬の心と行動の関係

遺伝子や脳の発達などさまざまな分野の研究を通して犬の問題行動を科学的・客観的に分析をしようという試みが近年行われているようです。

その過程で、犬の問題行動の一因として心の病が関係しているケースがあることを耳にするようになりました。

そこで犬の問題行動と呼ばれる“困った行動”や“望まない行動”があった場合、どのような心の問題と関係しているのか、また私たちがしてあげられることは何かをお伝えしていきます。

少しでも愛犬の心を理解するための手がかりとなれば幸いです。

犬の心は複雑で人に近い

ここで取り上げる心とは喜怒哀楽の感情よりももっと豊かでより人に近い複雑な感情のことを意味します。

例えば、達成感や満足感、倦怠感や高揚感のようなものから、集団の一員でいたいという所属欲求やそこで信頼され認められたいという欲求など、犬は他者との繋がりの中で意識される感情も持っているといわれています。

そして、社会や集団にうまく溶け込み自分は大切にされていると感じると、犬も自己効力感や自信、チャレンジ精神が高まるなど、どんどん心が成熟していくと考えられています。

犬の心を理解するには

そんな犬の心はどのように理解すれば良いのでしょう。例えば、他の犬と穏やかに接している犬を見て「優しい性格(心)の犬」と思う人がいるとします。でも、心は残念ながら見ることはできませんから、現実には穏やかな行動を見たことで、心や性格を優しいと判断しているものと考えられます。

犬の顔で判断することもできるかもしれませんが、容姿だけで犬の心の状態を判断するのは、かなり危険なことでもあります。

一方で行動はどうでしょう。行動を観察することで犬の心を理解することは可能かもしれません。なかでも問題行動と言われる行動の原因を理解することは、犬の心を理解する早道であると私は考えています。

問題行動の原因

では問題行動とはどのようなもので、どこに原因があるのでしょうか。その一部を見ていきます。

一つには、ストレスを抱えやすい生活環境が原因といわれています。例えば、運動不足や人工的な刺激、長時間の留守番など、過度にストレスがかかると、人には不都合(問題)と思える行動が発現する可能性は高まります。その他にもわたし達が気づかずにやってしまっていることなど、さまざまなストレス因子があります。

今回は目に見えない部分にフォーカスしてストレスと問題行動の関係を見ていきます。

*未学習によるストレス

✓他の犬を恐れる
特に成長期に他の犬との接触機会を逃してしまった結果、他の犬を恐れるようになり、吠えたり逃げたりするようになるなど。

✓不安と緊張
犬同士のコミュニケーションを通して、挨拶や接近の仕方など正しい振る舞いを学ぶことができなかった結果、他の犬に近づきたいという欲求が不安や緊張に阻害される。その結果、欲求不満や心の葛藤から欲求対象に吠えるようになるなど。

*嫌な経験によるストレス

✓嫌な経験
他の犬に吠えられるなど、ストレスやその他の経験が加わった結果、それまでは友好的だったのに吠えたり逃げたりするようになるなど。

*誤学習によるストレス

✓不安の誤学習
他の犬と接触させるときに、飼い主が躊躇したり緊張したりしてしまうと、それが愛犬に伝わり、愛犬も他の犬をみると緊張から吠えたり逃げたりするようになるなど。

✓不安の助長
愛犬が他の犬を避けたり吠えたりするのを見て、飼い主が「怖いね、怖かったね」と同情の言葉をかけた結果、「犬は怖い存在なのだ」と不安が助長されてしまうなど。

✓報酬の誤学習
愛犬が他の犬に吠えているときに、静かにさせようとおやつを与えたり、「大丈夫よ、いい子ね」と優しく声をかけた結果、吠えるとおやつが貰えたり、褒められると勘違いしてしまい、ますます他の犬に反応するようになるなど。

✓嫌悪刺激の誤学習
愛犬が他の犬に突進しないように、リードを強く引いて行動を制御しようとした結果、反発からますます力ずくで前へ進むようになったり、首が苦しくなったりする嫌悪刺激から、苦しくなったのは他の犬のせいだと間違った関連付けをしてしまい、他の犬を見るだけで攻撃性などを示すようになるなど。

原因は複雑

問題行動の一部には、注意のタイミングや方法、接し方を間違ってしまったことが原因の外的な行動トラブルと、経験や学習をする機会がなかった結果、欲求が満たされなかったり、ストレスが加わったりするなどが原因の内的な心理トラブルの2種類があるようです。

トイレを決められ場所でできないという問題を一つとっても、トイレの場所や大きさが愛犬に適していない、床とトイレの境界が分りにくいなど環境による場合や、トイレの教え方が犬にはわかりにくく「どこにしても良い」と勘違いしている場合もあるでしょう。一緒にいる時間が短いために、孤独感や不安感が原因で排泄をしてしまう内的な心理トラブルが原因のことも少なくありません。

私は仕事柄、友人や知人に「ウチの子はこんな問題があるのですが原因は何ですか?」と気軽に聞かれることがあります。でもそれに即答することはできません。それは、このように問題行動の原因は一つではなく、ときに複合的に絡み合っている可能性があるからです。

愛犬により身近な人の接し方や犬の行動を注意深く観察しなくては、正しい原因を理解することはできない。そういうことも多くのかたに少しでも知ってもらえるよう日々努力しています。

おわりに

犬と暮らす多くの方が愛犬を幸せにしたいと願っていると思います。

そのためにも、犬の心のありようを想像して内面に注意を向けることはとても大切なことです。

「ウチの子のこの行動は、どんな心の欲求を満たしてほしいからなのだろう?」と視点を変えて考えることは、犬の生活の質を改善してあげられるだけではなくて、互いに理解しあい絆をより深める道標になるのではないでしょうか。

たとえ無意識下であっても、あなたの行動や感情が〝犬の心や行動に大きな影響を与えている“と知ること。それが愛犬とあなたの*もっと幸せ*に繋がると私は思っています。

◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。

文:白田祐子(しらたゆうこ)
この記事は初出2017年4月12日『犬の心を育む1~心と行動の関係』(「犬のココカラ」掲載)を加筆・修正しました。

Instagram:@doggy_uri
      @ル・ブラン湘南


白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:公益社団法人日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ、ル・ブラン湘南代表。

1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。

大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した犬のしつけ相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師、2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中。

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