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犬とあなたと珈琲と。Vol.107 抱っこ散歩の良い点・注意点(社会性への影響)

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

6月21日のお客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)今回も前回に引き続き『抱っこ散歩』の良い点・注意点。第2回目。抱っこ散歩は犬の月齢や状態によって、とても多くの利点があります。でも、抱っこを卒業するタイミングを逃してしまうと大きな問題に発展することも。たとえば、「分離不安」。今回は注意点3つのうちの2つ目「社会性への影響」を分離不安を例に、保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関わりを探究しているドッグカウンセラーの白田祐子がそれぞれの視点で考えていきます。


祐子 こんにちは。ゆきちゃん、いつもありがとうございます
ゆき こんにちは祐子さん。うりちゃんもこんにちは。今日はリマ君と来ましたー(写真は本文最後)

祐子 沖永良部4兄弟のうちのスリムでイケメンのリマ君。先月1歳になったばかりなんだよね

ゆき そうなんですよね。祐子さんのところにいる“うるるちゃん”の兄弟です。中型犬としては10キロない位と小さいですけど、体つきやお顔は野犬並みの精悍さで、性格は甘えん坊。とっても魅力的なわんこです。

祐子 大きな耳がピンと立っているのも特徴的だよね。クリーム色と白の間の色もなんだか不思議で本当にかわいい

ゆき そろそろ、うるるちゃんも看板犬デビューしないんですか?

祐子 うりに色々教わりながらデビューさせますか…
ゆき 楽しみに待ってます。うりちゃんも若手の育成に頑張ってね(笑)

*中山ゆきさんが所属する保護団体の譲渡会の情報は「PAK」(Paws Adoption かながわ)ただいまInstagramが乗っとられ被害中。フォロー中の方はフォローを外した方が安全です

抱っこ習慣が分離不安へ。
それって個人の問題?


ゆき そうそう、祐子さん、今日は前回の話の続きを聞きたいです。

祐子 そうでした。前回は抱っこをしてお散歩をする「抱っこ散歩」について、抱っこ散歩のいい点、特に子犬のワクチンプログラム期間の散歩デビュー前とか、保護犬も含めてまだ社会経験の浅い犬は「抱っこ」をして散歩をさせることで、地面を歩かせるときには落ち着いてスタートできるよ。という話をしました。

ゆき 落ち着いてスタートできるって大事。でも、抱っこを卒業するタイミングを間違って、いつまでも抱っこばかりしていると、いくつかのトラブルも起きてしまう。その注意点の一つが「本能への影響」でした。しっかり自分で歩いて、走って、本能が目覚めていかないと、どうしても気持ちもカラダも活性化していかないっていうね…。

祐子 そこまで話たら、ゆきちゃんが「分離不安」にもなりそうって言って、本当にそうだなって思った所で時間切れでした。

ゆき そうです、そうです。分離不安は重症化するととっても厄介な問題だと思います。なので、しっかり考えていきたいです。

祐子 じゃあ、抱っこ散歩の注意点3つ「本能」「社会性」「副反応」から、今日は「社会性」への影響。分離不安の関係もありありです。というのも、「分離不安」って、飼い主と愛犬の間の起こるものだから、一見プライベートな問題のようにも感じるけど、ゆきちゃんが前回話していたように、たとえば、トリミングに来たお客様がワンコを「はい」ってトリマーさんに渡した瞬間から、ずっと鳴き続けちゃう…みたいな。そうなるとこれはもうプライベートな問題ではなくなるよね。

それから、分離不安の代表でもある「お留守番問題」。留守番の間中吠えてしまう。でも、飼い主さんはお出かけ中だから気づけない。結果、近所迷惑になって苦情がきてしまう…とか。パブリックな問題へと発展してしまう。

ゆき なるほど。パブリックな問題へとなると犬も人も幸せじゃないですね。飼い主さんもここまでくると「なんとかした」「治したい」って思うようになりそう。

分離不安の原因3つ


ゆき 分離不安ってそもそもは、可愛くてしょうがないから…ついつい甘やかして…。心配だから抱っこして。でも、抱っこばかりじゃ経験値が上がらないから、結果、いつまでも自信が持てなかったり、不安な気分から抜けきれなくなって、気付けば「分離不安」。そういう流れなんでしょうかね。

祐子 そうね。「分離不安」の原因ってだいたい3つかな…

1.環境の変化

祐子 まずは「環境」によるもの。たとえば、家族がいる時と誰もいないときのギャップ。この変化が大きすぎても起こりやすい。

ゆき なるほど。それまでワイワイしていたのに、突然「一人にされた感」が強い…みたいな…?

祐子 そうそう。家族がいるときは賑やかなのに、留守番が始まった途端「シーン」ってね。「あー、やっと静かになった」って、ゆっくり眠れる犬もいるだろうけど、周囲の音や動きに神経が向いて敏感になっちゃって、ちょっとした音にも吠えちゃう子もいる。こういう場合は普段とのギャップを減らすといいので、対応策として私がいつもススメているのがラジオ。

 ラジオはTVや動画サイトと違って、突然音量が上がったり、刺激音もあまり鳴らない。それに、だいたい、いつも同じ時間に同じ人の声が流れてくるので声に慣れて安心感が生まれる。留守番以外の普段の生活でも同じ局のラジオをかけておくと更にギャップは減るよね。

ゆき 犬を置いて出かける私たちにもやれることがある。って、いうのはいいですね。安心材料の一つです。

2.不安と自信のなさ

祐子 もう一つはゆきちゃんが今言ってた「不安感」

ゆき 特にこれっていう不安要因がなくても、自分に自信がないと一人にされたら、不安がこみ上げてきますよね…

祐子 自信をつけるには、色々チャレンジしてクリアしていくこと。それから、犬は社会的な動物だから、他の犬と仲間になりたい、受け入れてもらいたい、認めてもらいたいっていう欲求もある。そういう「社会的欲求」や「承認欲求」が満たされると自信につながっていく。

ゆき おー承認欲求!!人間でも最近よく使われるあれですね。面白いー。犬も「仲間に認めてもらいたい」っていう気持ちがあるの、なんとなく見ていてわかります。

祐子 「自信があるから挑戦できる」とか「心が強いからやれる」のではなくて、「挑戦することで自信がついてくる」「経験したから強くなれた」っていう部分は人も犬もあることを忘れちゃいけない。
ゆき なるほど!だからチャレンジするチャンスを人間が作ってあげなきゃ!ですね。

祐子 そう。抱っこばかりだと、それが叶わないって話だよね。

3.退屈しのぎ

祐子 そして、分離不安の最後の原因は「暇だから」。暇だからなにかイタズラしはじめて、それが止まらなくて最後まで齧りました、壊しましたとか。あとは、色々なカラダの使い方とか動きを経験していないと、自分の可能性を知りたくて、「えっ、それいったの」って位、大きなものを倒したり…、ちょっと私たちの想像を絶する「ちから技」の披露をしちゃうよね。留守番中の破壊行動も「分離不安」って呼ばれるけど、実際は「不安」ではない、こういう場合もある。

ゆき 不安とは違って、「暇だなぁ~」からのちから技!!あー思い出しました。うちのぶうちゃんはドアノブ破壊パーティ。他の日はクッション綿出しパーティ。壁に穴作るパーティ。やってました…

祐子 やりだしたら面白くて止まらなくなるんだよね。うちのちゃまはソファーの座面掘りとか、全ての本の角齧りとか…(笑)


音楽::Bruno Mars『Count on Me』(楽曲はYouTubeにリンクしています)

分離不安の陰には
支配欲もある


ゆき 祐子さん。いっけん分離不安に見えて、似て非なるものって…なんですか

祐子 たとえば、ゆきちゃんの言ってた、飼い主さんから引き離したら必要以上に吠えるとか。そういうのって、実は「支配欲」っていうのも考えられる。

ゆき へー。支配欲か…

祐子 そう。最初は「抱っこして」って足元に手をかけてきたり、甘えてきたから、抱っこするっていう人も多いと思うのね。実際、その姿は愛おしくて、抱っこしたくなるよね。でも、それに答え続けていると、要求する方(犬)が優位になって人や状況をコントロールするようになってくる、「要求過多」の状態。そうなると、どうなるか…。要求に応えてくれない、自分の期待と違う反応をされちゃうと…

ゆき  うん。面白くない、激しく要求、最終的には攻撃的な要求とか。飼い主さんから離された後の一連の行動が「支配欲」から来ているとしたら、エスカレートすると怖いですね。そう考えると、ますます「抱っこ」って奥が深い…。

祐子 ね。抱っこから降ろそうとしたら「唸ってくる」。そういう悩みを持っている飼い主さんもいるかもしれないよね。大好きな「抱っこ」も“ほどほどに”ってことだよね。抱っこをせがむ回数が多い子には、たまには掛けてきた手を外して、いつでも要望に応えられる訳ではないことも教えてあげることが大切。その代わり、たっぷり甘えさせてイチャイチャする時間をこちらから作ればいい

ゆき 塩対応とその代わりの使い分けですよね。その代わりはみんながやりたいし得意なやつですねー。私も柴犬おじさんのケンタ君をこねくり回す時間を作ってます(笑)

祐子 私もうるるをお腹に乗せてこねくり回してる(笑)

抱っこ=視覚優先。
負のループ


祐子 「抱っこ散歩」が多くなってしまう理由には、他の犬に吠えちゃうとか、社会化やしつけが上手くいかなくて、やむなく抱っこするようになってしまったっていうケースも多いと思うのね。でも、目の前の問題を抱っこで回避しちゃうと、結局それはエンドレス。

 特に犬の情報収集の半分は「嗅覚」によるもので、相手の犬のニオイから年齢や性別、性格やその時の気分や体調を確認して、「じゃあ、いま自分はどういう行動をとるべきか」を判断していくわけだけど、抱っこされていると「視覚」だけに頼るしかないので、そうなると正しい判断ができない。判断ができないから、不安や緊張から吠えてしまう。このループだよね。そういう、行動の背景にあるものに目を向けず、性格だからって決めつけたり、簡単にカテゴライズしてしまうのは…犬に失礼じゃないかなって、私はいつも思っています。

ゆき  うわぁ、なるほど。響きました。今の話すごく大事。「人間に作られている」。私もそうしてしまったこともあるし、カテゴライズして安心してたったいうか…わかったような気になってしまっていたこともあります

祐子 これはこうなんだって、カテゴライズすると人間は安心するんだよね。カテゴライズ好きでしょ。「〇〇型」みたいなのとかね。吠えるから抱っこ、抱っこするから吠える…みたいな負のループはなかなか止まらない。

ゆき 一度はまったループ…止められなくなりますね…

祐子 問題が深く重くなってから「これは困った」って、真剣に悩みはじめる人もいると思う。でも、そこからでも「専門家に相談してみようかな」って思えたなら、きっとその困ったから抜け出せるはずです。ぜひ相談してもらいたい。さて、ここまでが「抱っこ散歩」の注意点2つめ「社会性への影響」を分離不安を例に考えてみました…。

ゆき はい。この話は決して特別な話しではなくて、「うちの子もそうもしれない」って、当てはまる人も多いんじゃないでしょうか。とても自分事として考えられる沁みる話でした。

抱っこばかりでも問題なし。
犬の進化系?


祐子 残り一つ「抱っこ散歩」の注意点は「副反応」。「本能」や「社会性」への影響と被る部分もあるんだけど、「こんなところにも影響が」っていうやつ。なんだけど…、その話の前に、愛玩グループの犬と暮らしている人にしてみると、ここまでの話を共感できる部分と出来ない部分もあると思うのね。

ゆき 「今は多様性の時代です」とか「それで特別問題ありません」とか…。ちょっと「二極化」してきているような気もしますね。犬を飼う「新常識」というか…ちょっと前で言えばパリスヒルトンがチワワを小脇に抱えてアクセサリーの一部のように犬を持って、それがアイコンになって、実際それに憧れる人もいる…みたいな…。

祐子 確かに「二極化」はあるかもしれない。パリスヒルトンの犬がどうかは分からないけど、「抱っこオンリー」「散歩は行ってません」であっても、なんのトラブルもストレスもなくて、幸せホルモンバリバリです…みたいな犬もいるかもしれないね。

ゆき ね。犬も進化し多様化している。と、考えられなくもないですかね…

祐子 犬が遺伝的に持ち合わせている犬同士の言語「カーミングシグナル」を上手く使えない犬種も実際にいるし、もしかすると、この先、嗅覚も視覚もそれほど優れていなくて、どうかしちゃうと犬同士と交流せず人といるだけで最高にハッピーっていう犬が生まれてくる可能性もあるかな…

ゆき なるほど…人間だって、ここ数年のコロナや携帯電話の影響とかで良くも悪くも、体力の低下や視覚優先の人間に進化?しているほどだし

祐子 それは退化?でも…進化なのかな…。さっきの犬の「いつか将来…」「いや、もしかして既に…」の進化妄想は外側から見ただけじゃ真の判断はできないから、血液からストレス値やホルモン値を測って科学的に分析をしてもらいたい

ゆき たしかに、犬の進化の真の判断は科学的知見から知りたいですね。私たちの「オタク領域」に突入が心配ですけど(笑)

祐子 オタク宣言しちゃうよね。この先、見た目のデザインだけじゃなくて、色々な特徴をもった犬が誕生するかもしれないよね。でも、忘れちゃいけないのは、それらのどれもが「人間が改良して作り出したもの」であるってこと。

ゆき たしかに、私たちはそれを見てみぬ振りせず、考えて話していきたいですね。

音楽: Adele ft Justin Bieber『All of My Heart』(楽曲はYouTubeにリンクしています)

TPOに合わせた抱っこ散歩や
カートは現代にマッチ


祐子 今日は常連客で保護犬猫のシェルター付きトリミングサロン「イヌと暮らす」のオーナーのゆきちゃんと前回に引き続き「抱っこ散歩」のいい点・注意点について話しています。

ゆき じゃあ最後、3つ目の注意点「抱っこの副反応」ですね。これは一番気になっていたやつです…。

祐子 だよね。でも、今日もここで残念ながら時間切れ…。抱っこ散歩…本当はそんなに悪いモノばかりではなくて、人も犬もTPOによっては安全で快適。抱っこできないサイズなら今はカートも主流になってきたしね。

ゆき はい。この前、ペット関連の見本市に行ったとき、ほとんどの犬がカートで、歩いている犬はあまりいなかったですね。…。あーいうところでは、いいのか。

祐子 便利だよね。犬を歩かせたり遊んだりする目的地があって、でもそこまで行くには人が多すぎるとか、距離があるとか。そういう場合はカートに乗せてササッと進んだ方がいい。あと、長い時間を一緒に過ごしたり、色んな場所に一緒にいくための道具としてとか。そうやって、ちゃんと使い分けができるなら、互いのストレスを減らすためにもどんどん活用すべし。

ゆき うん。私もそう思います。最初は違和感ありましたが…こういう人結構いるかな…でも、社会やライフスタイルが変わっているのだから、これも進化の一つですかね

祐子 さすが、うまいまとめ(笑)さて、時間は大丈夫ですか?では、今日も犬談義のお礼に私からもう一杯どうぞ…

ゆき ありがとうございまーす。いただきます。

祐子 リマ君はジャンプ力がすごいんだけど、すごい大人しいね。お行儀がいい。

ゆき よくできました!


番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』

放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagram
ル・ブラン湘南のInstagram


白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬のカウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”(2023年天界へ)。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の社会心理学が専門。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持される。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合う。講師、専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。神奈川県三浦郡葉山町にて『お寺でわんにゃん縁結び』を主催

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