犬同士って好き嫌いが明確?対応の違いの謎
今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組“宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』”に寄せられたお便りにお答えします。
犬って好き嫌いが
はっきりしている⁈
今回のお便り:ホールインワンさんからいただきました。
祐子さん、「クーン」がかわいい、うり店長、こんにちは。最近、良く思うんですが、ワンコって好き嫌いがはっきりしていませんか?うちの子(雑種の男の子3歳)は社交的で誰(犬)とでも仲良くできるタイプですが、中には全く興味を示さない相手もいます。目も合わせず、最初から近づこうともしません。この対応の違いはどういうことなんでしょう。何を見て選り好みをしているのでしょう。
🐾🐾🐾
ホールインワンさん、ありがとうございます。他の犬への対応の違いについての質問ですね。見ていると、他の犬への対応の違いって、本当に面白くて、「へー」とか「なんで?」って思ったりしますよね。
ニオイから個人情報を
しぐさから今の気分を知る
まず、犬は他の犬の情報をどのように得ているのか。それは「嗅覚」と「視覚」からの情報が中心です。
犬はさまざまな情報を嗅覚から得ています。ニオイから相手の性別や年齢、健康状態や気分などを察知して、「安心できる相手だな」「この子はちょっと危険だな」など、争いを避けながら生きています。
視覚情報からは、世界中の犬の共通言語、犬特有の言語といわれている「カーミングシグナル」に代表されるような「体の動き」や「表情」、「行動」を見ることで、相手が怒っているのか、緊張しているのか、不安がっているのか、穏やかなのか、ご機嫌なのか、などを判断していきます。
ニオイから相手の基本的な情報を知り、そして身体表現や行動から「今の気分」や「ご機嫌」を知り、その「相手」やその「瞬間」に関わるべきかどうかを判断しているんです。もちろんニオイだけ、視覚だけで「好きだー!」って思ったり、「ちょっと苦手」だなって、感じることもあるかもしれません。
相手のエネルギーを
感じ取る達人!
聴覚と視覚以外に大切なのが、エネルギーです。
相手の犬が出すエネルギーが、自分と「合う」のか「合わない」のかはとても大切です。たとえば、エネルギーの高い犬がきたとき、「すぐに興奮するような犬は苦手だな」とか、「なんだか今はイライラしているな」とか、「遊ぼうよ!って、ワクワクしている!だから一緒に遊びたい!」などを、察することができます。
もし「あの子は苦手だな」「今は近づかないでおこう」って判断したら、目を合わせず、その場をやり過ごし、「あなたに危害は加えませんよ、安心してください」「あなたがちょっと苦手です。どうぞ通り過ぎて行ってください」って、無関心を装います。
その辺のニオイに気を取られているのか、すぐ近くにワンコがいるのに気が付かない。愛犬のそういう姿を見たことはありませんか?それは「関わりたくない」の意思表示かもしれません。なんだか、人間よりも上手に誤魔化しているんですね。
その場をやり過ごす。
最高のコミュニケーション能力
このように、騒ぎが起きないように「自分落ち着け」、相手にも「落ち着いてね」と伝えあって、争わず穏やかに通り過ぎる。犬はとても平和的な生き物なんですね。
ただ、この「スルー力」
日常生活の中で、上手に学習することができないと、「吠え」たり「逃げ」たりという行動選択しかできなくなってしまうこともあります。本来、犬の持つ行動のバリエーションを維持できるよう、成功体験を繰り返させてあげることが大切です。
私たちには単に、あの子のことは「あまり興味ないんだな」って見えているときも、実はお互いにストレスなく、その場をやり過ごす、最高のコミュニケーション能力を発揮しているのかもしれません。
どうでしょう。ホールインワンさん。
少しは参考になったでしょうか。「穏便にすませているんだな」って、そう考えると、犬って本当にすごいですよね。これからも素敵なドッグライフをお過ごしくださいませ。
この記事はFM831レディオ湘南:radio café『犬とあなたと珈琲と。』(第1.第3土曜16:00~16:29放送)2023年4月15日放送分を修正しました。
本記事は「こちら」から視聴可能。後半部分にお便りのコーナーがあります。
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番組サイトにもぜひ遊びにきてください→『犬とあなたと珈琲と。』
◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。
文:白田祐子(しらたゆうこ)
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白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演、2022年4月から『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。