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犬とあなたと珈琲と。Vol.59 元野犬と暮らすを考える

聞逃し配信中(オープニングや曲はカットされています)
ミキサー:レディオ湘南 高橋優佳

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』

FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」
オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。
店長はカフェオレ色の17歳。愛犬の“うり”。
美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

今回のお客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。いま、都内や神奈川県内の保護団体では殺処分数の多い他県からの犬たちの受け入れもしています。なかでも多いのが「野犬」。『犬と暮らしたいと思ったら保護犬を』という選択肢が少しずつ浸透している中、これからは「元野犬」の家族も増えていきます。保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関係を研究しているドッグカウンセラーの白田祐子が、それぞれの目線で「野犬」について考えていきます。

祐子 いらっしゃいませ、ゆきちゃん。いつもありがとうございます。

ゆき こんにちわ、祐子さん。今日は保護犬のワクチン注射に行ってきました。

祐子 保護犬のワクチン注射、色々な意味で大変。

ゆき そうなんですよ。でも、保護犬猫に協力的な病院があって、いつもそこで診ていただくんで、一連の医療が終わると、とりあえずホッとします。

祐子 ワシャワシャしている犬たちを、病院に連れて行くだけでも大変だものね。年に一度の大イベント的なね。お疲れ様です。

ゆき はい。いつものカフェオレでお願いします。

迷い犬を見つけたら
目撃情報を届けよう

ゆき そうそう祐子さんは、迷い犬とかに遭遇したことってあります?

祐子 何度もありますよ。私の場合、どういう訳か柴犬率が高くて、捕獲率は8割から9割位かな。一度、チワワがいたんだけど、とにかく小さくて素早いじゃない、どんどんすり抜けて逃げて行っちゃって、その後の情報も追えなかったので、ずっと気になっています。

ゆき うん。それは気になる。でも、チワワちゃん、きっとお家に帰っていますね。実際、そのケースの方が多いと思います。祐子さんのその捕獲はすごいですね。どんなふうに捕まえるんですか?

祐子 ラッキーが続いていたのかもしれない。みんな、すり寄っては来ないまでも、一目散に逃げ出すような犬じゃなかったし、大抵、うりのお散歩中なので、ボールやおやつを使って、まずは、興味をこちらに向ける。そして、他の犬が挨拶しに来たくなるような「うり効果」(笑)。

そうやって、近づいてくるのを待って、完全に距離を縮めたら、いつもお散歩バッグに入れている「輪投げ(注:投げ輪)」みたいなカタチの首輪つきのリードを、焦る気持ちを悟られないように、素早く確実にひっかける。そんな感じかな。

ゆき うりちゃん効果は最強ですね。確かに、「怖くない」と思ってもらうのが一番難しいんですよね。どうしても、「捕まえるぞ!」って気持ちで行くと、大抵、犬も本気だして逃げちゃいますものね。「近付いてくるのを待つ」。それで、捕まえたらどうするんですか?交番ですか?

祐子 そうそう。捕まえたら、交番まで連れて行くか、迷子札をしていたら飼い主さんに連絡して、そこで待つとかね。捕まえられないときも、目撃情報を警察署と向こう三軒両隣の保健所、そして、神奈川県動物愛護センターに入れておきます。最近は迷い犬のネット掲示板もチェックって感じ。

他県からの野犬保護が
増えている

祐子 迷い犬で何かあったの?

ゆき はい。そうなんですよ。2か月位前かな…お店に『犬が逃げてる』って連絡があったんです。お店のトリミングサロンは保護犬猫の支援店でもあるし、私は鎌倉の保護団体PAKで活動もしているから、その繋がりで、結構そういう連絡が入るんですね。

それでその犬、1か月とか、ずいぶん長い間逃げ回って、捕まえるまで大変だったみたいなんですよ。聞いたら「香川県の野犬出身」で、逃げたのが2回目ってことで、飼い主も「逃げちゃうんですよ」って言ったりして…。

うーん、逃げちゃうような状態の子の譲渡とか…飼い主さんのその感じを聞くと、また逃げちゃわないかって…モヤモヤしちゃって…。祐子さんはどう思いますか?

祐子 へー、今は香川県の犬も神奈川県にきているんだね。

ゆき 最近、多いみたいですよ。東京の団体に限らず、複数の団体が香川の野犬の里親を募集しているって聞きます。多摩川の河川敷に逃げているってニュースになったこともありましたね。

祐子 へー、そうなんだ。
そうか…ちょっと前までの犬の殺処分数のワーストは香川・愛媛・長崎・徳島だったんだけど、2021年度は、香川県が9年ぶりにワースト1を脱却したって聞いています。それは2019年に動物愛護センターを開所した効果だそうです。

ゆき へー知りませんでした。ワーストは野犬王国の山口県かと思っていたから、「なんで香川の犬たちが増えたの?」って思っていました。そもそも、山口県は捕獲すら難しいんですかね。

祐子 あーなるほど。でもね、四国4県の3県がワースト4まで入っていたのに、高知県は殺処分数が少なくて、その理由は「人目につきにくい、里山などに散らばって棲んでいるから、捕まえられない」って、県の職員がインタビューに答えていましたね。

ゆき おー!実際そうなんですね。

祐子 それで香川県では今、とにかく犬たちを施設から引き出せる状態にあるから、他の地域でも協力している…そういうことなのかな…。

ゆき 全国で「助け合いの気持ち」が広がるっていうのはすごいことですね。でも、またその犬を逃がしちゃっては本末転倒ですよね。

祐子 確かに。

犬を飼う
覚悟はありますか

祐子 ゆきちゃんの所属する『PAK』では、人に飼われてこなかった犬の扱いはどんな感じ?必ず一般家庭で過ごさせてからだよね?

ゆき はい。預かりさんが家庭で餌付けします(笑)。そうやって「人と暮らす」ということを知ってもらいます。

祐子 そこからスタートですよね。「ずっとの家族」が見つかるまで、家庭犬として過ごせるように、ボランティアさんが慣らしながら、面倒をみてあげる。ゆきちゃんの自宅にも「ずっとの家族」に託す前のワンコやニャンコが常にいるでしょ。時間・体力・愛情、その他もろもろ。本当に預かりさんって、すごいなって思っています…。

ゆき ありがとうございます。ただ、大変なこともあるんですけど、それ以上にその子が変化していく過程を間近で見ることができるので、「喜び」とか「面白さ」とかを一番もらえる「特等席」だって思っています。犬たちに勉強もさせてもらっていて、これからも勉強あるのみです。

祐子 成長過程を見られる特等席!これはまた「名言」だね(笑)。保護動物を譲渡するには、条件が色々あると思うんだけど、逆に「私でも飼えますか?」って質問されることってありますか。

ゆき ありますね。

祐子 そういう時はなんて答えているんですか。

ゆき PAKの代表が必ず言うのは「覚悟があれば誰でも飼えます」です。「家族で話し合って、犬のコトを勉強して、そして時間とお金を費やせるなら」って。

祐子:まさしく!

飼わない選択も愛

祐子 でもね、それを聞いて「うーん」となる人もいるんじゃない?

ゆき うん、いますね。もし、仕事とか子供のコトで手が回らないようであれば、「今じゃなくて、もう少し待ってみませんか」って、提案したり、手のかからない成犬を勧めたりします。

「絶対に子犬じゃないと嫌」っていう人もいますけど、そのようなマッチングはアメリカでは「当たり前のこと」と、聞いたこともありますね。

祐子 日本人の子犬に対するこだわりの強さは世界有数だって聞きますもんね。もし、自分が犬と暮らせるか、迷いがあるようなら「飼わない選択も愛」って、自信を持って言える人が増えると素敵だよね。

ゆき うんうん。私もそう思います。「命の授業」で中学生が最後の感想で、お母さんが「今は飼わない」って言ったことを、「意地悪じゃなかったんだ」って気付いてくれた生徒もいました。

祐子 犬を迎えるために「覚悟を持つ」ことは、ペットショップから買おうが、保護団体から譲ってもらおうが同じはずなのに、ペットショップでは「覚悟はありますか」とか聞かないじゃない。

ゆき そうですね(笑)ペットショップでも言ってもらえたらいいのになぁ…って。

祐子 かっこいいよね。一言「覚悟はあるか」

音楽:Incognito 『Don’t You Worry ‘Bout A Thing』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

もっと野犬に
注目していきたい

ゆき 今、保護団体として大切なのは「“野犬”について知ってもらうこと」だと思うんですよね。今、少しずつ「保護動物を選択する」ということが浸透してきて、移り変わりの時期ですよね。だからこそ、もっと「野犬」に目を向けなくちゃいけないって思うんです。

祐子 確かに。野犬に目を向ける。「野良犬」と「野犬」は特性に違いがあるものね。ゆきちゃんは「野良犬」と「野犬」の違いをどう説明していますか?

ゆき 「野良犬」は人を知っていて、「野犬」は人を知らないですかね。

祐子 野犬は、何代にも渡って野生で繁殖しているので、特性も野生動物に近いよね。狩りをしたり、周辺への「危機管理能力」っていうのかな、そういうのも野生に特化している。だから、物理的な環境においても、心理的にも、人間と距離を保つから捕まえるのは難しい。

それに対して「野良犬」は、生活するのも繁殖するのも人間の近くだよね。人の社会に慣れているから、ゴミを漁ったりしながら都市部でも生活できるし、近づいてもくるから、捕まえる事も、わりと簡単だよね。

うりも家に来た時は生後5-6か月だったんだと思うけど、その特性をみて、「あー野犬の子だな」って思いましたね。

ゆき 野犬が野生動物に近いって納得です。私はまだ、十数頭の野犬の仔犬しかみていませんが、それでも野犬のすごさを感じます。例えば、普通、トレーニングして教える「トイレ」や「ハウス」、それから「母親について歩く」っていうようなことを、最初から知っているんですよね。

しっかり鼻を使って、耳を使って、目を使う。月齢で違うこともあるんでしょうけど、生きていくうえで必要なことが、シンプルに整っていて、見ているだけで飽きないし、面白なぁって思います。祐子さんの最高のパートナーになっている、うりちゃんはどんな感じでしたか。

うり店長の若い頃。自然の中が大好き。

祐子 まさしく、ゆきちゃんが言った通りのままだよね。野生では安全対策のために「トイレ」と「寝床」はしっかり分けて生活しているよね。だから、トイレは完全外派が多いよね。

それから、付き従いもそうかな。お出掛け先で、私が立ち上がって歩き出すと、声かけしなくてもちゃんとついてくる。でも「待ってて」というと、静かに待っていられる。野生では命を守るために、母犬がしっかり教えていることなので、刷り込まれていますよね

ゆき 面白い!ワクワクしちゃう、こういう話(笑)

祐子 嗅覚など五感を使うのも犬の特性だから、そう、五感を使えると、情報量が増えて物事を正しく判断できるよね。うりを見ていても、慎重なんだけど正確な行動をしていると感じます。

あと、これも大切なんだけど、野犬は人には離れていなくても、犬には慣れていることが多いから、犬同士の言語、「カーミングシグナル」を自然に使って、犬とコミュニケーションを取るのは最初から上手でした。全体的に「犬らしい犬」っていうのかな。

ゆき なるほどね…。不思議とペットショップのワンちゃんが「犬らしくないなぁ」って思っていたのは、犬の特性でもある「五感」や「カーミングシグナル」を上手に使う、そういう部分の欠如とかあるのかもしれませんね。犬は犬らしく生きてほしいです。

祐子 うん。「犬らしい犬」好きですね。私も。

首輪とリード。家がある。
そこから教える!

祐子 でも、どう?野犬は大変なことも多いよね。

ゆき それはもう、「これが危機管理能力か!」って言う、野犬の警戒心ピリピリの子の壁って、すごく厚くないですか?これが芽生えてしまうと、とっても厄介で「難しいなぁ」と思います。うりちゃんもそうでした?

祐子 そう。野犬あるあるだけど、「首輪をして散歩する」という、当たり前のことから難しいよね。室内で私を警戒する様子はなかったけど、外に出れば「チャンスさえあれば逃走しよう!」って、試みていたし、垣根や車の下に潜って身を隠すから大変でした。

でも、それは仕方なくて、社会化が遅くなればその分時間はかかる訳でね。「この世界でずっと生きて行くんだよ」「覚悟はあるか」って、逆にね(笑)。人間世界の色々を見せていく。そして、外と中、フィールドと寝床があって、「寝床もいいよね」って感じてもらうことかな。

うりは桜の枝とか、ヤシの木とか松ぼっくりしか食べなかったし、水溜まりの水を飲んだのを見た時は、悲鳴をあげたね。

ゆき はいはい(笑)やりますよね。

祐子 やるよねー(笑)。コマンドとかは特別教えていなくて、ただ一つだけ「穏やかでいること」。それを目標に私が「強くて落ち着いた母犬」になれるように、精神統一、泰然自若、努力するのみでした。

ゆき 祐子さん、またサラッとすごく大事なこと言ってる。成犬の野犬は仔犬よりも当然すごく大変で、一緒に朝晩一時間、とにかく歩く。そして家に帰る。お家に帰ったら、充分なお水とごはんがあって、安心して眠る場所がある。

この表現が合っているかどうかはわかりませんが、まず「帰りたくなるお家と家族」。それを刷り込んでいく。最初のうりちゃんみたいに、首輪とリードで一緒に歩くっていうだけで、笑っちゃうくらい大変ですもんね。

祐子 本当にそう。そこから(笑)。ゆきちゃんも素晴らしい!

ゆき はい(笑)

音楽:Al Green『Let’s Stay Together』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

山に還してあげたい…
そう思うこともある

祐子 保護した野犬の中には「やっぱりこれはダメだなー」って思った子もいませんか。

ゆき うーん…いますね…。人間と暮らすことに適応するのが難しくなっている、年齢や性格の子に、なんとか慣れてもらおうと努力しても、「この子にはストレスでしかないんだな」って感じたときは、むしろ「山に還してあげたい」とすら、思ってしまいますね。

人間よりも寿命が短くて、時間感覚も違うって考えると、貴重な時間を自由に生きてもらいたいというか…。

祐子 うん。確かに…。野良猫を「地域猫」にしていくみたいに、犬も捕獲して、繁殖防止のために不妊去勢手術をして、居た場所に戻す…。TNRだよね、トラップ・ニューター・リリース。

犬は遺伝的に「人が好き」が、組み込まれているとも言われますが、ほぼ、野生動物に還りつつある、生粋の野犬として成長した犬たちを見ると、深く考えさせられることあります。

ゆき はい。そうなんです。「地域犬」とまではいかなくても、山二つ分とかの広―い保護区が各地にあって、ワクチン・避妊去勢・見守り・管理する人がいる。そういうのはどうですかね?

祐子 いいねー。世界では「野良犬」をそうやって管理している国もあるけど、動物自然保護区があれば「野犬」でもそれが叶うよね。繁殖制限さえできれば、人も犬もストレスなく穏やかにして、いつか野犬はいなくなる。

ゆき それすごいですね。その面白い色んな国の話も聞きたしい、保護区の話も聞きたいです。

祐子 うん、いつかは保護団体もなくなるんだよ。
ゆき うんうん。そういうことか。

祐子 今日はまだ大丈夫ですか、時間。
ゆき はい、もう少しゆっくりしていきます。

祐子 じゃあ、ワンコ談義のお礼にもう1杯どうぞ。
ゆき ありがとうございます。

祐子 ごゆっくりお過ごしくださいませ。
ゆき はい。いただきます。

番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』

保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』

放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagramは『こちら』
ル・ブラン湘南のInstagramは『こちら』

白田祐子(しらたゆうこ)

プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。

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