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お腹を見せるのは服従の証?本当の意味

今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組“宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』”に寄せられたお便りにお答えします。

お腹を見せないのは
信頼していないから?

今回のお便り:wankichiさんからいただきました。
祐子さん、うり店長こんにちは。うちの子は雑種の3歳の女の子です。友人の犬(マルプー)はすぐにお腹を見せて「撫でてー」と甘えてきますが、うちの子はお腹を見せることはありません。その話を別の友人にしたところ「お腹を見せるのは服従しているから。飼い主を信頼して付き従うという意味」と言われました。お腹を見せないというのはその逆という意味になるのでしょうか。ちょっとショックを受けました。本当のところはどうなのでしょう。

はい。お腹を見せるのは服従なの?というご質問ですね。

確かにお腹を見せる姿勢は「服従ポーズ」と呼ばれます。

この「服従」という言葉、どのようなイメージを持ちますか?wankichiさんのお友達がいうように「付き従う」というイメージでしょうか。辞書にも「他人の意見・命令・指示に従うこと」と書かれています。

でも、犬の世界はちょっと違うんですね。

犬の服従行動は
争いを避けるため

犬の世界での「服従」は「争いを避ける」という意味で使われます。

争いになるかもしれない状況で「あなたと争う気をありませんよ」という意思を伝えるために、自分の体で最も弱いお腹を見せる。そうやって余計な争いを避けながら、自分の身を守って、進化してきたんですね。

もちろん、このポーズが通用するのは“カーミングシグナル”と呼ばれる、全ての犬の「共通言語=ボディランゲージ」が確立しているからです。

例えば、「降参」と手をあげている相手を許さなかったり、逆に降参だと見せかけて逆襲したりする。そういうことも起こり得る人間とは違い、犬は非常に実直でルールを重んじる平和主義の生き物であることがわかる行動だと思います。

2種類の服従行動

争いを避けるための服従ですが、服従行動には2種類あることがわかっています。

【能動的な服従】

これは自ら進んで積極的に行うもので「そんなに怒らないで」「落ち着いて」という意味です。

身体を低くして、耳を伏せて相手に近寄ります。その後、ゴロンとお腹を見せたり、相手の口もとを舐めたりもします。怒られた後や大好きな人への親和行動(愛情表現)、また「自分は弱いです、無抵抗です」と子犬が大人の犬に出会ったときなどにも行います。

【受動的な服従】

これは恐怖心から行う服従で「ごめんなさい」「許して」の意味です。

おなかを見せて、相手から目を背け、尻尾は足の間に巻き込まれてしまいます。恐怖心からおしっこをしてしまうこともあります。

服従ポーズをしても
行動が改善される訳ではない

「能動的な服従」と「受動的な服従」。

どちらも「争う気はない」というアピールですから「あなたの命令や指示に従います」という意味ではないのですね。

例えば、イタズラをして怒られた後に服従ポーズをとったからといって「反省しました。もうやりません」といっている訳ではありません。だから、次からイタズラをしなくなったり、言うことを聞くようになることもないのです。

犬もいろいろ
愛情表現もさまざま

お腹を見せるポーズは「親和行動」と呼ばれる愛情表現だったり、「自分は無抵抗です」という平和主義的な合図だったりもします。でも、愛情や親和を示す行動は他にもたくさんありますよね。

犬と一緒に暮らしているとボディタッチがなくても“見つめ合い”や、同じ空間にいるだけでも豊かな愛を感じられるようになります。そういう穏やかな日常とルールのある暮らしが信頼関係を高め、犬とヒトが一心同体になっていくのではないでしょうか。そう私は思っています。

Wankichiさん、どうでしょう。
少しは参考になったでしょうか。「服従ポーズ」を「する・しない」は、飼い主の指示に「従う・従わない」とか、信頼関係の「ある・なし」を判断する材料にはなりません。安心してくださいね。犬もいろいろ、うちの子が一番です!これからも素敵なドッグライフをお過ごしください。

この記事はラジオ番組:radio café『犬とあなたと珈琲と。』(毎週金曜16:00~16:29/FM83.1Mhzレディオ湘南)の2022年12月30日放送分を修正しました。

本記事は「こちら」から視聴可能。後半部分にお便りのコーナーがあります。
レディオ湘南は世界中どこからでもワンクリックで視聴可能です。
番組サイトにもぜひ遊びにきてください→『犬とあなたと珈琲と。』

◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。

文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagramは『こちらから』
ル・ブラン湘南のInstagramは『こちらから』

白田祐子(しらたゆうこ)

プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中、2022年4月(毎週金曜16:00~16:30)から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。

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