犬とあなたと珈琲と。Vol.42 関水 恵子
宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(毎週金曜 16:00~16:29)放送中
湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。ここで“宝物”の話をすると探し物が見つかるとか?…オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳。愛犬の“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。
今回のお客様は元介助犬が出迎えてくれるカフェ『テラスティピィ』の関水恵子さん。ご主人は介助犬育成団体の理事長で恵子さんもボランティアとしてサポートしています。身体障害者補助犬法が制定されて丸20年。でも、まだまだその認知度は低く、補助犬を理由に入店拒否をされるケースは後を絶ちません。補助犬やユーザーさんのことをもっと知ってほしい想いからカフェをオープン。介助犬とユーザーさんの素敵な出会いや「人・犬・自然・健康」を軸にした情報発信をしながら、人と犬の優しい関係が広がる街を目指す「想い」を伺いました。
―こんにちは!恵子さん、ようこそお越しくださいました。
関水恵子さん(以下 関水):こんにちは。お久しぶりです。Facebookでうりちゃんを見ていますよ。段々いい顔になってきて、私の大好きなシニアの顔になってきています。嬉しいです。
―ありがとうございます。うりはもう17歳ですけど結構若々しいんですよね。恵子さんのスムースコリーのライカちゃんはどうですか?
恵子:そうですね。うちに来てから1年半、もうすっかり家族の一員となって、一緒に楽しく暮らしております。
目次
元介助犬がお迎えします
―恵子さんは2019年に介助犬を引退したワンコ達のいるカフェ「テラスティピィ」をオープンされましたよね。ご自宅の1階を改装して、カフェにしようと思ったのは、介助犬の存在と大きく関係されていますか。
恵子:そうですね。介助犬って、今まで「ありがとう。いいこね」って言われてきた子たちです。なので、今度はティピィでみんなに「いい子ね」って褒められてほしいと思いました。それから「介助犬ってこんな感じなのね」って、介助犬のことも知ってもらえたらいいなと思ってオープンしました。カフェにしたのは、やっぱりちょっと飲んだり食べたりができるとリラックスもできるし…。そういう感じで、ほそぼそとカフェもやっております。
あとは「いろいろな情報を発信する場所として」という目的もあります。主人はノルディックウォークのインストラクターをずっとやっていて、指導もしてきました。ですから「人・犬・自然・健康」。この4つの輪の交わったところのことも伝えていけたらなと思っています。車いすでお見えになってもトイレや室内をバリアフリーにしております。
様々な場所に
入店できるのが補助犬
―『人・犬・自然・健康』理想的ですね。ご主人は介助犬の育成団体『ウェルフェアポート』の2代目理事長で恵子さんはボランティアとして活動されていて、だから「介助犬を知ってもらう」ことが目的の一つでもあるんですよね。介助犬は公共施設や交通機関、病院やお店などに自由に入ることが許されています。そして、犬を理由に入店や利用を断わってはいけないという法律、「身体障害者補助犬法」というのもありますよね。この法案が成立したのが2002年10月。ですから去年は施行から20年目。新聞などでも随分取り上げられていました。でも、その内容は「未だに同伴を拒否されるケースが後を絶たない」など周囲の理解不足にフォーカスされた記事ばかりの印象でした。
恵子:もっと補助犬とユーザーさんが一緒に「ハッピーに社会参加できる」というところを伝えてもらえるといいんですけど、なかなか認知等が少ないですよね。実際に去年の12月にバニラ(写真下)という子が認定試験に合格して、その当日、藤沢のホテルに宿泊していたんですけど、近くのコンビニにお買い物に行ったら、そこにはステッカーも貼ってあったのに入店を拒否されたという、とてもショックなことがありました。
―コンビニはもっとも身近な存在ですから、それは本当にがっかりの話ですよね。
恵子そうですね。やっぱり知らないってことは、こういうことなんだなって痛感させられましたね。
補助犬はユーザーの
目・耳・手足である
―補助犬というのは、盲導犬・介助犬・聴導犬の総称で、先ほどの「身体障害者補助犬法」に則って訓練、そして認定された犬たちのことですよね。去年10月の数字ですが、補助犬として活動しているのは、盲導犬が848頭、手足などが不自由な人を手助けする介助犬が53頭、それから聴覚障害者に音を知らせる聴導犬が58頭と、国内に959頭しかいないんですね。日常的に補助犬に出会う機会があまりないというのも事実かもしれないですよね。
恵子:そう思います。そういった課題を解決するために、私は『ウェルフェアポート』のボランティアとその愛犬たちと一緒に介護施設などでプチデモンストレーションを行ったり、犬と触れ合ったりなどの活動をしてきました。
―デモンストレーションはいいですね。千葉県では大手スーパーの企画で専門店街を補助犬と一緒に練り歩く体験型イベントをしたと言う話も聞きました。補助犬という犬側だけではなくて、ユーザー側からのアプローチも大切ですよね。
恵子:そうですね。補助犬と暮らしている方の話を聞くことはなかなか少ないですよね。私も実際に補助犬と暮らすユーザーさんと接する中で、ユーザーさんがいかに「犬がいてくれることが心の支えになっている」ということを痛感しました。ですから、ユーザーさんの話などもぜひ聞きたいし、そういった情報も発信していけたらなと思っています。
―私もぜひ聞いてみたいです。そして、補助犬はユーザーの目であり、耳であり、手足である。そういう認識が浸透していくといいですね。
―『テラスティピィ』はどういう想いが込められた名前なんですか?
恵子:主人と一緒に考えたんですけれども、ネイティブアメリカンでは「ティピィ」っていうのは「家」って言う意味があるようです。我が家のように…ちょっと親戚の家にきたみたいな感じで、気楽にのんびりできるようなスペースだったらいいなと思ってつけました。
―こういうカフェを作りたい!という目的にピッタリの名前ですね。
恵子:そうですね。この店は『TAKARA CAFÈ』ですよね。宝製菓さんは藤沢のイベントにもよく出店されていて大好きなんですけど、この宝製菓さんのお菓子のタカラ?
―宝製菓さんのクッキーはでてきますけど(笑)そうではなくて…
恵子:宝物か!
―そうなんです。「宝物」のタカラです。『TAKARA CAFÈ』は失くした宝物が見つかったり、新しい宝物に出会えたりする。そういう場所になるといいなと思って名付けたんです。
恵子:あー素敵です。
―もしよかったら恵子さんも宝物の話きかせてください。
自然体でいられること。
それが宝物
―恵子さんの宝物はなんですか。
恵子:私の宝物って言ったら、モノというよりも、やっぱり家族、仲間、そして犬がいて、そこに繋がる人々がいて、その中で自分がどれだけ自然体でいられるか。その”自然体でいられる自分”。それは私にとって宝物です。
―『テラスティピィ』は家族や仲間と繋がれる場所でもありますよね。
恵子:そうですね。ティピィではライカ(写真下の左)の他に我が家の愛犬のラブラドールのティピィ(同右)がいます。お店の名前のティピィと同じで、これは看板犬になるように一生懸命しているんですけど、なかなかラブラドールはやんちゃです。あとはもう17歳になる、トイプードル(同中央)がいますけど車椅子で一緒に生活しています。猫も1匹いて(写真上)、これも保護した猫で、最初は「うちで犬慣れしましょう」って預かったんだけど、とっても可愛いので「じゃあもう、うちの子になっちゃえば」っていう感じで我が家の子になりました。
―そうでしたね。以前、お伺いした時も猫ちゃんはワンコ達と一緒にいましたもんね。
恵子:そうですね。
犬の介護も
楽しく幸せな時間
―ライカちゃんも介助犬の引退犬なんですよね。補助犬には3つの家族があるって言われますよね。まず、候補となる子犬を1歳まで育てる飼育ボランティアさん、その後訓練所で約1年学んだあと、認定試験に合格すればユーザーさんと暮らして、だいたい10歳頃を目途に引退して、余生を過ごす家族がいる。引退犬と暮らすために気を付けていることはありますか?
恵子:引退してきた子ってやっぱり本当に人が大好きです。ユーザーさんにずっと寄り添ってきたので、いつもそばに寄り添ってくれます。ですから「ありがとう」「いい子ね」って、言葉掛けを沢山してあげるようにしています。健康とその辺の声かけは意識してやっています。
―なるほど…。確かに指示されることも多かったでしょうし、声かけは大切なんですね。
恵子:そうですね。
―引退犬はシニアが多いですよね。
恵子:はい、そうですね。シニアになってやっぱり年を重ねていくと、あちこち不具合が出てきますよね。その時になるべくその子が心地良く生活できるよう、その子に合った介護の仕方を常に試行錯誤しながら仲間たちと一緒にやっております。なんか、それってすごく楽しい時間で「こうやったら嬉しそう」とか「あっ!ラクそう」とか。そういうところって、とても幸せな時間ですね。今まで介助犬を引退してきた子を3頭、お空に見送りましたけど、愛犬と密接な関係をつくって最期は穏やかに見送ってあげる。
常に穏やかに見送れる時ばかりではないんですけど、最期に見送ってあげる、これは犬から受けとる最大のギフトだと思っています。
―最期を見送ることができるのは最大のギフト…。色々な別れ方や死生観があると思いますが、別れは苦しみだけではなくて、その先があると私も思っています。
プードル2頭が
北海道で活躍!
―これから新たにチャレンジしていく犬たちも沢山いますよね。これまで印象的な出会いなどあったらぜひ聞きたいです。
恵子:一番印象的だったのは、スタンダードプードルのジルバともう一頭ラブラドールを連れて、北海道のユーザー希望の方と会ったときのことです。どうしても通常は訓練士の方を気にしてしまうんですけど、ジルバは最初から車椅子の横にピタっと付いて歩いていて、それを見た時は感動しました。その方は車椅子ダンスをされている方で、ダンスに中でもジルバがとっても得意な方だったので、なんだか「ご縁だなぁ」とつくづく思いましたね。
―ジルバが得意な方の所にジルバちゃんが行った。それは運命を感じますよね。
恵子:そうなんです。本当にそうでしたね。
―ジルバも誰のために何をすべきかを感じ取れたんですね。
恵子:他にもう1頭いたのでその比較がすごくできたものですから、訓練士の先生と本当、目を見合わせて「えっ!」って言う感じでした。
―最近はまた、先ほどもチラッとお話しがありましたが認定試験を合格したワンちゃんがいるんですよね。
恵子:そうなんです。12月の11日に認定試験合格して『ウェルフェアポート湘南』で育成された2頭目のスタンダードプードル。真っ白な子でとってもかわいい子です。その子も北海道に行きましたから、北海道で2頭プードルというのも、とても縁を感じますね。
―本当ですね。ジルバちゃんに続いて、スタンプ―2号のバニラちゃん。補助犬デビューおめでとうございます。バニラちゃんもユーザーさんも、そして周りの人もみんな笑顔になるといいですね。
恵子:ありがとうございます。本当にそれを望んでいます。
―では、ここで何かここでハッピーになる曲をおかけしましょうか。
恵子:そんなに音楽は得意ではないんですけれども、高校時代の思い出の曲でもある、シルヴィーヴァルタン『アイドルを探せ』という曲を聴きたいです(楽曲はYouTubeにリンクされています)。
日本一、人と犬が
幸せになれる街へ!
―今探している宝物はなんですか。
恵子:日本一、人と犬が幸せに暮らせる街、藤沢。人と犬の優しい関係が広がる街、そんな藤沢になれたらって憧れます。素敵ですよね!
―はい。藤沢に来てくださった方たちにもガッカリしてほしくないですよね。ぜひ私もそんな街づくり活動のお手伝いができればと思います。今日はお話しを聞かせていただいたお礼にもう一杯いかがでしょうか。
恵子:ありがとうございます。じゃあ、遠慮なくいただきます。
テラスティピィのホームページは『こちら』
番組サイト⇒『犬とあなたと珈琲と。』
インタビューと文:白田祐子(しらたゆうこ)
うり店長のInstagramは『こちら』
ル・ブラン湘南のInstagramは『こちら』
白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。