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犬とあなたと珈琲と。Vol.75 擬人化と同調力について

赤い椅子に座る茶色の犬とカフェオレとコーヒー豆
聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』
FM83.1MHz レディオ湘南
(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

お客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。今回のテーマは犬の『同調力』。私たちが犬の行動を人間的視点で解釈してしまうのは、犬の行動が人間の感覚とマッチしているから?実際、犬は人間のストレスや感情を敏感に察し、時には苦しみや悲しみに寄り添ってくれます。でも、限度を超えた擬人化は犬の本質を見失い苦しめる結果にも。擬人化は「善」にも「悪」にもなる。今回は保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関係を研究しているドッグカウンセラーの白田祐子が「擬人化」と「同調力」について、それぞれの視点で考えていきます。

祐子 こんにちは。ゆきちゃん、いつもありがとうございます。
ゆき こんにちわ、祐子さん。今日はペペロちゃん(写真文末)と来たんです~。

祐子 トイプーちゃん。前回もトイプードルの育子ちゃんと一緒だったけど、ぺペロちゃんの方が茶色が薄めな感じ?
ゆき そうですね。育子ちゃんはレッドかな、ぺペロはアプリコットですかね…ちょっと色が薄い。ペペロは7歳の女の子で繁殖場からのレスキューです。人が大好きな甘えん坊さんなので、お膝の上で甘えさせたいっていう方にはピッタリだと思います。

祐子 どういう人と相性がいいのか、そういうのが最初から明確だと人も犬もすぐに幸せになれる。こんな方にピッタリですってコメントを添えて、『ずっとの家族募集中』のチラシをお店の掲示板に貼っておきますね。
ゆき ありがとうございます。お願いします。うりちゃんもよろしくね。じゃあ、いつものカフェオレお願いしまーす。

※ぺペロちゃんの情報は『Paws Adoption かながわ』

情報収集は
早い方がベスト

ゆき さっき、電話で深刻そうな声をしていたけど、大丈夫でしたか?

祐子 そうなのよね。バレンタインデーが終わるこの時期は、「うちの子がチョコ食べちゃった。どうしよう」っていう、連絡がちょこちょこ入る。

ゆき それは大変。心配ですね。とりあえず病院に行ってもらいたい。

祐子 今は「犬にチョコレートはNG」っていう情報があるから「あっ!大変」ってすぐに気付けるけど、20年位前なら「顔がパンパンに腫れた!」って、命にかかわるような症状が出てから病院に駆け込んで、獣医さんの聞き取りから原因がわかった。そういう話も耳にしていたかな。

ゆき 確かに。あとは玉ねぎとか鶏の骨。ただ、今は調べればすぐにわかりますね。

祐子 ねっ。今はネットで犬と暮らし始めたときや暮らし始める前から、知識を頭に入れておくこともできるから、有効に活用したいよね。

ゆき ネットは大事な情報源ですね。

祐子 情報が増えたことで、飼い主さんの知識や意識も向上していっているってダイレクトに感じるかな。

ゆき はい、本当に私もそう思います。しつけに関しても勉強熱心な人が増えているけど、やっぱり、まだまだ「悩みは尽きない」とか、逆に「読めば読むほど、混乱してしまった」とかっていうのも現実かも。

祐子 確かにね。しつけに関しては「困って」から、情報を探すのでは遅いことが多いし…。

ゆき 困る前から、心がけておくことがあるってことですかね。

祐子 「かわいい、かわいい」ってやっているうちに、犬はあっと言う間に成長しちゃうから、気が付いたら「困った!」ってね。

都合のいい解釈や
理由探しにご用心

祐子 早い段階から無力な子犬を「保護」するスタンスから、チャレンジすることを「見守る」姿勢へ変えていく、その切り替えが一番大事なんだけど、なかなか気持ちが追いつかない。

ゆき 人の気持ちの切り替えが大事です。

祐子 それから、「どうしてそうなるの?」とか、人は理解できないことに対して大きな不安を感じるから、なんとか理由を探そうとする。それが正しいのか、間違っているのかは関係なくて、言い方はちょっと悪いけど「都合のいい理由」「都合のいい情報」ばかり集めてしまう。そういう人間の心理も犬のしつけに大きく影響してくるかな。

ゆき 「都合のいい理由」…ドキッとくる言葉です。ふーん…人間の心理かぁ。なかには都合のいい解釈でも、結果オーライでなんとなくうまく収まっている場合もありそうですよね。

祐子 あるある。解釈はちょっとズレているんだけど、解決方法がとても好ましくて、ピッタリ収まっているパターンだよね。そういうのは私もカウンセリングで話を聞いてもあるかな。飼い主さんのセンスがいいというか。

ゆき 飼い主さんのセンス。ありますね。考えなくても、パッと犬にストレスを与えない行動をとれる人っていますよね。うちの店長とかそうですもん。

祐子 ゆきちゃんのお店『イヌと暮らす』の店長は神店長、プロ中のプロだからね(笑)

音楽:Stevie Wonder『Sir Duke』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

擬人化は「善」にも
「悪」にもなる

ゆき 祐子さんはSNSとかで犬の動画とか観ます?私はやたら笑える動物動画を観る派です。

祐子 動物園の動画はすごく好きで、レッサーパンダとかビーバーとかをよく観るけど。犬は…考えてみるとあまり観ないかもしれない。それ「可愛い」じゃなくて「可哀想だよね」って思えるものを連続して観ちゃったから、遠ざかったのかもしれない。

ゆき どういうのですか?

祐子 例えば、犬を座らせて「これ誰やったの」ってイタズラの犯人捜しをしたら、犬が目を逸らしたり、違う犬の方を見たりして、犯人バレバレわかりやすい(笑)みたいな。実際はそれってカーミングシグナルだよね(※1)。だから私的にはちょっと笑えない。大いなる擬人化。

ゆき あー確かに、擬人化。いま気付いた。祐子さんは擬人化ってどう思います?

祐子 擬人化ねぇ…犬は犬であるから素晴らしい。擬人化していちゃ「犬の本質は見えない」っていうのが考えの根本にあるけど、擬人化は「善」にも「悪」にもなるよね。

ゆき 善にも悪にもなる…?

祐子 例えば、人と犬が精神的に深く結びつくのは、擬人化があるからこそ。っていう部分もあるよね。大切な「うちの子」って。一心同体になるというか…私もそう。でも、一方で、擬人化の限界を超えてしまうと、さっきの「都合のいい解釈」「都合のいい理由」を当てはめて、いわゆる、バイアスがかかってしまう。

ゆき バイアスは、その人の生きてきたバックグラウンドによって違うけど、本人も気付いているんじゃないですかね。

祐子 バイアスは無意識の先入観や思い込みで、固定観念とか直感に左右されるし、人間は「自分が正しいと信じたい」という、心理的な傾向があるから、なかなか気付くのは難しいんだよね。

ゆき なるほど。しかも、犬は人間の行動や表情に似ているから、疑わずに間違ったまま解釈をし続けたりもするかなぁ…

祐子 そう途中で気づかないでね。

※1:こちらを参照→『犬のボディランゲージを真似しよう』

真実。犬は辛いときに
寄り添ってくれる

祐子 勘違いに気づけない理由としては「表情」とか。犬って人に寄せて来ているところも沢山あるよね。実際、犬は人間の気分を敏感に察するから、人の行動と感覚的にピッタリ当てはまっちゃうところもあるし。それが、前回ちょっと触れた、犬の不思議な力のひとつ『同調力』なんだよね。

ゆき 「同調力!」おー、それ聞きたかったです。

祐子 ゆきちゃんは、犬の「同調力」を感じるのはどんなときですか?

ゆき うーん。私はあまりピンとこないっていうのが正直なところで、人から話は聞きますけど、自分が体感した感動話みたいのって…あるかなぁ?

祐子 すごく犬と関わりあっているのに。例えば、映画を見て泣いたり、具合が悪いときに、フっと寄り添ってくれたとか。

ゆき うんうん。それはあります。妊娠中のとき、どんな場所にいても急激な眠気に突然襲われるっていう時期があって、本当に辛くて、仕事から帰って、そのまま玄関で寝ちゃうこともあったんです。そしたら、そのとき一緒に暮らしていたワイマラナーのぶぅちゃんが私の横で寝ていましたね。玄関で。

あまりベタベタした関係じゃなかったけど、寝るときはいつも一緒に寝ていたから「今日はここで寝るですね」って思ったのかなって。私はそんな軽い感じで受け取っていました。だから、先に起きて「ここじゃ、寝ないよ!」って、ぶぅに突っ込むだけでした。祐子 そうか、受け取り手側の感受性で話も変わってくるのか(笑)

飼い主と犬の
ストレスは同調する

祐子 犬が人間の心や体の痛みにとてもよく気が付くっていうことは、科学的にもわかっていて、なにがその能力を高めているのかって紐解くと、一つには「嗅覚」があるのね。ある実験では、飼い主のストレスがかかったときに着ていたシャツと、かかっていないときのシャツのニオイを嗅がせると、どの犬もストレスがかかっているときのシャツばかりニオイを嗅いで、中にはそのシャツの上で寝た犬もいたんだって。寄り添うように。

ゆき すごい!その話し!ストレスかかっている人ピンチ。そうかぁ、ぶぅちゃんも私が具合悪いのを感じ取って、寄り添ってくれていたのかぁ。子供たちにもいつも寄り添ってくれていたから、当たり前のこと過ぎて気が付かなかった。逆に子供たちも犬の真似をして育った感じがあるし。

祐子 へー、どんな感じ?

ゆき 私が「静かにしていてほしいな」って思って、ぶぅにお座りや伏せをさせたら、子供たちも、ぶぅの横に座って一緒に静かにしてくれていたり。あと、ケリーブルーテリアの今日君は超ハイパーな犬で、厳しく注意をしても言うことのきかない手に負えない子だったんだけど、私が息子二人に注意して、子供達がシュンとなれば今日君も冷静になったし、子供達がふて寝すれば一緒に今日君も寝ていたり。今日君は息子たち二人を見て学んでくれていたと思います。

祐子 それこそ、今日君は息子君たちに同調していたんだね。とてもいい関係だったね。

飼い主以外の
悲しみも感じる?

祐子 犬と暮らしている人にしてみると「それ当たり前じゃん」ってことが、最近、やっと研究で明らかになってきているという、タイムラグはあるよね。

私も20年以上前の話だけど、当時一緒に暮らしていたシェルティと動物病院に行ったとき、インコを連れてきていた女の人が隣に座っていて、診察室から出てきたらその方、泣いていたのね。こういうとき、どうすればいいんだろうって迷っていたら、シェルティがぴょんとベンチに飛び乗って来て彼女の頬を舐めてあげたの。肩にあごを乗せたり、ぎゅっと体を密着させたりしていて、彼女も「ありがとう」って言っていてね、「わぁ、優しいなぁ」って。今なら「このシチュエーションを犬にもわかるのかな」って考えちゃうけど、その時は難しくは考えなかった。

ゆき へー飼い主じゃなくても、感じるんですね。

祐子 そう。飼い主以外の悲しみにも寄り添える。そういう実験論文が出たのは、ほんの数年前。科学的に考えるとやっぱり不思議な力なんだよね。

ゆき ちゃんと実験で検証もされているんですね。そして、数年前っていうのもびっくりですね。

祐子 なかなか犬は研究対象にならなかったからね。

共感や同情心は
犬のストレスに

祐子 こういう「ちょっといい話」だけ聞くと「やっぱり犬って最高」で終わっちゃうんだけど、さっきのシャツの実験では、ストレスのシャツのニオイを嗅いだ時って、犬自身も心拍数が上がって、ストレスがかかっていたことが分かっているし、犬と飼い主、両方のストレス性ホルモンを数か月に渡って測定した実験では、飼い主のストレスが上がると、犬も上がる相関がずっとみられたんだって。

ゆき ずっと、ストレスの影響を受けるって辛いですね。そんなんじゃ、飼い主が胃潰瘍になったら犬も胃潰瘍になっちゃう。そこまでじゃなかったとしても、飼い主が「怖い、怖い」「怖いね」って言うと、犬も怖がるのは、わかりやすい代表例ですかね。

祐子 人が穏やかで堂々としていなくちゃ、犬も安心していられないよね。とはいえ、生きていれば動揺することって当然あって、私も東日本大震災の時に余震が来るたびに「はっ!」となっていたら、ちょっと揺れただけで、うりが怖がって玄関に走っていくようになっちゃったのね。

その時は防災準備も整えて「ここは安心だから」って自分自身に言い聞かせて、平常心を保つようにしたら、ケロッとなおった。その時「怖い怖い」「怖いね」って言ったらダメだったっていうことだよね。

あとね、散歩で私が苦手な人に会うと、うりは絶対に人に吠えないのに、猛烈にその人に吠えるようになっちゃったのね。「心を読まれたな」って感じ。それで、その人への苦手意識を克服したら、うりもピタッと収まるという。だから、もし犬に吠えられたら、実はその飼い主さんに嫌われている可能性ある説。

ゆき なんか怖~い(笑)

擬人化の悪なる部分を
抜け出そう!

ゆき 「同調力」。人と同じ感情になってしまう。そういう姿を見ていると擬人化してしまうのも仕方ないのかな。それに「都合のいい理由」を当てはめるのも、人間の性分となると…でも、やっぱり擬人化の悪の部分は避けたいですね。

祐子 そうだよね。人間の尺度を犬に当てはめると、無意識に非現実的なことを求めたり、過度な期待をしてしまう可能性がある。期待や予想と違えば「なんでそうなるの」って怒ったり、無理強いさせてしまうことにもなりかねないから、抜け出さなくちゃいけない。

ゆき はい。期待や予想が間違っているケースですね。それは抜け出さなきゃ。

音楽:Jason Mraz『 I’m Yours』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

ゆき うーん、擬人化の壁。どうすればいいんでしょうねー。

祐子 行き過ぎた擬人化を回避するには、無意識に働くバイアスがあることを意識して、「いま、ちょっと都合よかったかな」って、自分もそうなることを認めること。そして、本当はどうなのかなって疑問をもって、客観的な意見や科学的な根拠も受け入れていくこと。意識して、認めて、疑問を持って、知識を増やす。

どんなことでもそうだけど、いつもとは違う局面に遭遇したとき、少しでも落ち着いて、正しい判断をとれるようになるには、正しい知識を身に着けること。それに尽きるんじゃないかな。

ゆき はい。

祐子 それにしても「犬はなんでもお見通し」。そういう風に考えると、犬にいい加減な対応や嘘なんてつけないね。

ゆき 本当にそうなんですよ。私は子供たちに「犬に嘘と冗談は通じないよ」ってずっと言ってきました。

祐子 おー!「犬に嘘と冗談は通じない」。名言いただきました(笑)。そう、その話!それを明らかにした、面白い実験があってね、犬の「公平さ」って人が思う以上にすごいって話なんだけど…その話はまた今度だね。

ゆき えー!また今度!(笑)また今度、その話楽しみにしています。

祐子 時間はまだ大丈夫ですか。ぺペロちゃんは?
ゆき よく寝ていましたね。ちょっと、おトイレだけさせてこようかな…
祐子 そうして、そうして。その間に楽しい犬談義のお礼にもう1杯入れておきますね。
ゆき はーい。いつも、ありがとうございまーす。ちょっと行ってきまーす。

トイプーのぺペロちゃん(右)と育子ちゃん(左)

番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』

放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagram
ル・ブラン湘南のInstagram

白田祐子(しらたゆうこ)

プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー、他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。

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