犬とあなたと珈琲と。Vol.74 フルタジュン
宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送
湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳。愛犬の“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。
今回のお客様は2度目のご来店、『劇団フルタ丸』主宰、劇作家で脚本家のフルタジュンさん。フルタさんの真骨頂とも言える、新感覚劇「フルタ丸講談」が昨年からスタート。多くの観客を惹きつけ、パワー溢れる舞台をつくるまでの想いを伺いました。さらに、今、フルタさんが感じている「夢中」とは。『お金とか名声が先にきて、それを選んでいる限りは夢中じゃないですよね。それでは弱いんですよ。本当に夢中なやつは、やっぱり強い。僕もいま、改めて自分に問いかけているんです。夢中かどうかって』。もっと夢中になるために「ストッパーを外したい」と熱く、でも穏やかに語るフルタさん。「フルタ丸講談」Vo.3は7月に下北沢で公演予定。夢中人たちを観に行こう!
――こんにちは。フルタさん、ようこそお越しくださいました。お待ちしておりました。
フルタ こんにちは。フルタです。
――今日、フルタさんがご来店くださると聞いて、前回はいつだったのか調べましたら、なんと!今日と同じ2月3日だったんです。去年は金曜日、今日は土曜日ですけど。
フルタ もう1年経ったということですね。あれから。
――そうなんですよね。早いですね。
フルタ 早いですね…。
目次
黒柴ジョン君
元気です
――前回は『Blue Stone』のボーカル神田陽太さんと二人でお越しいただきました。お話がすごく楽しくて、閉店時間を過ぎてもずっとお話していたかったですが、その中でフルタさんの愛犬、黒柴のジョン君(写真上)のこと、チラッとお話したじゃないですか。「壁を見つめている」って。15歳で。実は、その後すぐに「認知症のワンちゃんって、その他にはどんな症状があるんですか?」というお便りが届いたんです。「ジュン&ジョン」。ジェイジェイが、ちょっと話題になっていました。今、どうですか?
フルタ 今はですね、壁を見つめたりもしているんですけど、やっぱり、もう足腰が弱くなってきていて、寝転がっているのが楽かなという日々ですね。ただ、食欲はあるので、我が家としては「もっと長生きしてほしい」と、思っているところですね。
なんか、人間もそうですけど、段々年を取っていくと、また子供に戻っていくみたいな。犬もなんかそういうところありますよね。
――あります、あります。犬はいつだって可愛いですよね。
フルタ丸講談の
幕開け
――どうですか、2024年は…。
フルタ まだ始まったばかり…、でも、1か月くらい経つんですけど。なんでしょうね…1月、2月あたりって、毎年、エンジンかかるのに時間がかかるイメージがあるんです。僕の中で。
それで、春くらいから一年が見通せて、やっと動けるっていう感じなので、まだ迷いながら、どう1年を過ごそうかな…と、考えながらですね。でも、そろそろ見つかってきたかなという状況です。
――前回お越しいただいたときに、最後「自分の活動であればいくらでもできるけれど、自分で創めた劇団、『劇団フルタ丸』。これをもっとなんとかしていきたいんだ」と言うようなことを、お話されていました。去年は有言実行『劇団フルタ丸』2本!
フルタ 2本!白田さんにもお越しいただいて…
――私はいま『劇団フルタ丸』を観に行くのが楽しみになっています。私の「推し」です。私の推しは、講談師と落語家と『フルタ丸』
フルタ ありがとうございます。その3つに入れていただいて。
去年は、そういう意味では、僕の中で新しい挑戦をしました。『フルタ丸』って、これまでは演劇をシンプルに作っていた劇団でしたが、「講談」といわれる伝統芸能と合わせた「フルタ丸講談」という表現を去年からはじめて、去年は2本舞台をやることができて、それはすごく大きかったですね。
すごい!を
引き出したい
――vol.1が7月の 『枡目街交差点』。vol.2 は11月と12月の月マタギで『八百長入門』。毛色の違う2作品だったなと私は思いました。どうですか。
フルタ 逆に「どうだったか」を、白田さんに聞きたいなと思って来たんですよ。
――いやいや、いやいや…(恐れ多い)
フルタ 白田さんは、講談とかもよく見られますし、噺家さんの落語とかもよく見られるんで、そういう視点も含めて、ちょっとどんな感想を持っていただけたのかなと…。
――いやいや、そんな…。そうですね…。私、本当に講談が大好きなので、講談劇をやるって聞いたときには、ちょっと「えっ」とは、正直思いました。でも、その中で「これは劇なんだから」って(割り切って)、劇を観に行く気持ちで楽しみに行ったんですね。ところが『枡目街交差点』。びっくり!「すごい!」の一言です。
フルタ その、「すごい」って言葉をお客さんから「引き出したかった」というのがあったんですよ。実は。でも、何をすごいと思っていただけるか。それが、僕が講談を見て抱いた点だったんです。
そこで、なんとか(講談を)フルタ丸の表現に落とし込んでいって、お客様から「すごい」と言ってもらえるものを目指した。それが、あのVOL.1だったんですよ。でも、なにをもって「すごい」と言わせるかは、いろんな考えはあったんです。だから、そこは聞きたかったです。どこの点を「すごい」と思っていただけたかっていう。
――まず、講釈師役の真帆さん。もう、圧倒されましたね。あの長台詞を噛まない。はっきりすべての言葉が聞こえる。パワーとメリハリ。そして、それらを取り巻く役者さんたちのキャラ立ち。もう全部がすごくて。とにかく真帆さんのパワーですよね。
フルタ パワー。はいはい。
――どんどん、どんどん引き込まれていって、もっと見たい。「えっ、もう終わっちゃうの!」って感じでしたね。
俳優と講談師をセットで
表現できないか
――講談劇。具体的にどういう風に結びついたんですか?
フルタ 1年前も白田さんにお話しさせていただいたんですけど、僕、もともと、神田伯山さんがすごく好きで、神田伯山さんのやっている講談の『グレーゾーン』って、オリジナル講談があるんですよね。それをユーチューブで観てから、結構深く入っていったような。
――『グレーゾーン』から入ったんですね。
フルタ 『グレーゾーン』から入ったんですよ。創作の講談で「こんなに面白いものができるんだ」っていうところで「講談書いてみたい」って。作家として、まずはそこからだったんですよ。
それで、僕が講談を書くんだったら、普通に講談を書いて役者にやってもらうだけじゃ、ちょっと面白くないかもって思って、演劇と合わせて、つまり俳優も登場して、講談師もいるというセットの表現でなにかできないかな。と、いうところからですね。
――面白いですね、講談劇。「講談劇」という言葉があるかどうか、わからないですけど。
フルタ ないかもですね。そういう風に明確に言っている人はいないかもですね。
――ですよね。「講談劇」といえば『フルタ丸』。「講談劇」という言葉が面白いですし、新しいジャンルとして定着しそうですよね。
フルタ したいですよね。
――第3作目も構想はありますか。
フルタ 構想はありますね。
――降りてきているんですね。
フルタ 降りてきています。実は、第三作目をにらんで、第一弾と第二弾をやったところがあって。もうちょっと温めて、春くらいになったら、劇団から情報をだそうかなと、思っておりまして…。
――楽しみにしてます。
――バレンタインとかは…
フルタ 今は主に娘からどんなものがもらえるかが、もっか毎年の楽しみですね。
――かわいい。じゃあ、ホワイトデーにお返しもされるとか。
フルタ 返せたり、返せなかったりなんですが。でも、大体、ねんじゅう娘に何かあげているので、ホワイトデーだからってわけでもなく。
――ホワイトデーの倍返しじゃなくて、日頃から。
フルタ 倍返し(笑)日頃から何かしらあげていますので。はい。
音楽: Donny Hathaway『Love, Love, Love 』(楽曲はYouTubeにリンクしています)
書いているときの
ライブ感を楽しむ
――普段から、アイデアってどこから浮かんでくるんですか。
フルタ アイデアはいつ降ってくるか全くわからないので、ずっと、スマートフォンのメモ機能に思いついた瞬間に書いています。
本当に「ぼーっ」っと、街を歩いていても、「わぁ!」とかもありますし。自分でそのトリガーの仕組みがわかっていれば、もっと作為的に思いつけるんですけど。そうじゃないところが憎いところなんですよね。
――いつくるかわからない。
フルタ わからない。
――アイデアが浮かんでから、プロットをしっかり組むタイプですか?人物を先に…キャラを描く…?
フルタ 両方同時進行なんですけれど、ガッチガチにプロットを作ってから作らないようにしています。でも、ちゃんと組むんですけどね。ゆるーく組んで。通過していくポイントだけを考えて、必ずここは通過したいんだけど、そこをどう通過させるかは、その場の僕の気持ちとかに任せようと思って。
最終的に辿り着きたいところに辿り着くんですけど、どういうルートでそこに辿り着くかはライブ感。書いているときのライブで行きたいというのがあります。
――作品を書くのと演出。演出はご自身の劇団以外でもされていますが、どう違いますか?素人の質問で申し訳ないんですが。
フルタ 劇団で脚本も演出も兼ねるときは、もう演出する絵も浮かびながら書けるので、やっぱり楽というか、楽でもあり大変なんです。一方で、書くだけで、あとはそれを渡して演出してもらう現場もあるんですけど、それは気が楽なんですよ。これをどうカタチにするかは、演出家の方にある意味むちゃぶりも含めて、渡しちゃうんで。
でも、自分で書いて自分で演出しないといけないとなると「これ、どうカタチにするんだ?」っていうのが常に頭の中にあるので、そういう大変さはあるんですよ。ただ、楽しいし、なんとでも最後は演出で動かせるので、気持ち的にはちょっと楽なんですけど。
――あーなるほど。現場で観て、変更しようと。
フルタ そう。変えられる部分もあるので、そういう違いがありますね。
笑いの理屈を確かめたくて
『M-1』に出場
――『劇団フルタ丸』は学生時代に組んで、放送作家のお仕事も学生時代からと仰っていました。そもそも、どうやって放送作家になったんですか?
フルタ 僕は「放送作家セミナー」っていうのがあったんですよ。大学に通いながらWスクールみたいな感じで。
――専門学校?
フルタ 専門学校より、もっとカルチャースクールに近いけど、現場の人が教えてに来てくれるというのに行っていました。大学1年生の秋から半年間通って、そこで、先生が何人かいるんですけど、僕をピックアップしてくださったんです。「お前手伝え」って2年生の初めから、もう現場に出してもらって。
――そうなんですね。それが、さまぁ~ずさんのラジオだったんですね。
フルタ さまぁ~ずさんのラジオ番組だったんですよ。
――わぁ、すごいですね。現場に行ったら人脈みたいのもできますし。
フルタ はいできますし。「これが現場か」っていう。そこの、さまぁ~ずさんのセカンドマネージャーが、僕に神田陽太さんを紹介してくださったんです。実は。
――神田さんとは、すごく古いんですものね(笑)
フルタ はい。すーごい、古いんです。
――今、そういう職業に憧れている人も多いと思いますけど、なにかスクールの先生されていました?
フルタ 僕が先生やっていたのは『松竹芸能』っていう事務所があって、そこで演技を教えていました。演技を教えるってめちゃくちゃ難しくて、基礎的なことは、もう別のコマでみなさん習っているんですよね。発声とか多分…。
それで、そこには芸人さん志望の子とすでに所属している芸人さん。その両方がくるような授業だったんですよ。常に、そういう人たちに笑いに使える「演技の構造」というか、どう台本を読んで、どういう笑いをここで生み出すかっていう、ポイントを解説しながらやっていた気がします。
――難しい…
フルタ 難しい(笑)ただ、僕の中での理屈はあったので、その理屈があっているかを確かめるために『M-1』にも出ましたし。
――えっ!そうなんですか!
フルタ 偉そうなことを言っておいて、僕の言っている理屈が…自分で納得はできているんですけど、本当にあっているのかを確認したかったので。なので、素人のカメラマンの人と僕もお笑いは素人ですよね。素人と素人で出て、2回戦まで行きました。
――それは何年前の話ですか
フルタ ミルクボーイさんが優勝した年なので、2019年
――最近じゃないですか!
フルタ 最近です。だから納得したんです。間違っていない。理屈としては間違っていないと。
本当に夢中なやつは
やっぱり強い
――面白いですね。タレントになりたとか、放送作家になりたいとか。そういう若者になにかメッセージみたいなものありますか。
フルタ これね、まさに最近ずっと考えていたことで、僕自身も常に問いかけて「やっぱそうだな!」って思うんですけど『いかに「夢中」になれるか』ってことに尽きるなって思って。
「お金のため」とか「名声のため」が先にきていて、それを選んでいる限り、やっぱり夢中じゃないですよね。そうするとやっぱり弱いんですよ。本当に夢中なやつは、やっぱり強いんですよね。お金も名声もなかったとしても、とことん夢中になるってことだなって。
僕も改めて…もう43歳になる年ですけど、いま自分に問いかけているんですよ。「夢中かどうか」って。すごくシンプルなアドバイスなんですけど「夢中」であること。っていう。
――そうですね。それはどんなことにも通じることですね。
フルタ そうですね。どんなことでもそうなんですけどね。
――はぁ、すごい。さぁ、ここで思い出の曲かなにか、おかけしましょうか。
フルタ はい。今日、どんなお話ができるのか、ちょっとわかっていなかったんですけど、最後にこういう「夢中」になる話をするんじゃないかって思っていて、かけたい曲があったんです。Faye Wong(フェイオン)さんの『夢中人』(楽曲はYouTubeにリンクしています)
もっと夢中に。
ストッパーを外せ!
――さてさて、フルタさん。私の「推し」のフルタさん。2024年、どうしましょうか。
フルタ もう一回、僕の夢中を見つめ直し、とにかく夢中になってみようと。それに尽きます。もう20年間、夢中になっているのは劇団のことなので、劇団をもっと夢中になれるんじゃないかなって。そのストッパーを外したいなって思います。
――7月予定でしたっけ。次の公演。
フルタ そうでございます。
――もう期待爆上がりですので楽しみに待っています。今日、お時間はまだ大丈夫ですか。
フルタ ありがとうございます。大丈夫です。
――とっても楽しいお話聞かせていただいたお礼に、もう1杯いかがでしょうか。ごゆっくりお過ごしくださいませ。
フルタ いただきます。
『劇団フルタ丸』のHP⇒「こちら」
フルタジュンさんのHP⇒「こちら」
番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』
インタビュー・構成・文:白田祐子(しらたゆうこ)
うり店長のInstagram
ル・ブラン湘南のInstagram
白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー、他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。