犬とあなたと珈琲と。Vol.9 奥山 敏美
FM83.1Mhz レディオ湘南(毎週金曜 16:00~16:29)放送中。宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』
湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。ここで“宝物”の話をすると探し物が見つかるとか?…オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の愛犬“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。
今回のお客様は有隣堂ミュージックサロンの講師で演奏家の奥山敏美さん。奥山さんの子供の頃の宝物は「改造プラモデル」。ディスプレイ用のプラモデルにシャシーをつけ、モーターやギアも取り付けて動かしていたとか。楽器も「音が鳴るから好き!」「音の出る仕組みがしりたい」「構造から見ていく」というのですから面白いです。そして上達するために大切なことは「嫌いにならないこと」「できなくなったらそこから逃げればいい」。そんなアドバイスをいただきました。
目次
就活の失敗から
音楽講師一筋!
――奥山さんは(いつもは奥山先生と呼んでいますが)音楽一筋、有隣堂の藤沢ミュージックサロンの人気講師として大評判です。有隣堂の前はヤマハにいらっしゃった?
奥山敏美さん(以下 奥山):そうですね。ヤマハで四十何年だか…その位やっていました。
――学校を卒業後すぐにヤマハに就職されたんですか?
奥山:最初はヤマハに社員として入りたかったんです。でも、「お前は来なくていいよ(不採用)」と言われちゃって、どうしようか考えていたんです。そんな時、僕の性格をよく知る母親が「だったら先生になっちゃえば」みたいな話で、僕も気楽にすぐに先生になれるのかなって思って。それで「講師になりたいんですけど」って音楽教室に行ったんです。そうしたら「ちゃんと試験を受けろ」と教えられました。
当時、エレクローンの人気が出始めていた頃で、自分はピアノを少しやっていたから「エレクトーンならやれるかな」って思って、父親に頭を下げて買ってもらったんです。ところが、そこそこ弾けるだろうって思っていたのに全くできなくて…。「エレクトーンって足を使うんだ!」って、その時初めて分かったくらいで。でも、なんとか半年位でライセンスを取ってヤマハに潜り込んだわけです。そんなスタートですね。
エレクトーンから
今はオールマイティー奏者
――ヤマハを退職された後は、有隣堂さんと個人契約をされて。
奥山:そうですね。最初は横浜の辺りに教室をあてがわれて、そこでエレクトーンやピアノを教えていました。ヤマハの講師として有隣堂さんにお世話になって40数年経つのかな。60歳位のときにヤマハを辞めましたが、そのまま有隣堂さんに個人契約をさせていただき、今はウクレレの先生がメインになっています。
――弦楽器でも打楽器でもそこにあればパッと演奏する。そういうオールマイティさはどうやって勉強をされたんですか?
奥山:新米講師に色んなことを教えてくれたんですよ。色々なことを経験させてもらったので本当に感謝しています。
――色々な楽器を扱える中で、一番好きな楽器や得意な楽器って
奥山:やっぱり出だしが鍵盤だったので、一番安心できるのは鍵盤です。それ以外は、僕らの世代はだいたいベンチャーズから始まっているんですよ。だからエレキギターも好きな楽器の一つではありますね。
――これまで出会った楽器でこれはうまく弾けなかった、扱えなかったというものもあるんですか?
奥山:あります。まずは「クラリネット」。これはね、もう重くて指が痛くて無理って感じでしたね。あとトランペットとか。一応色々なものを触らせえてはもらえたんですよ。でも「これはダメだな」っていうのは、だいたい吹く楽器はダメでしたね。
奥山:宝caféっていうのはどういった理由でネーミングしたんですか?
――はい。ここで宝物の話をしたら、失くした宝物が見つかったり、新しい宝物に出会えたりする、そんな場所になるといいなと思ってつけたんです。
奥山:なるほど。なかなか面白い理由ですね。
――もしよかったら、宝物の話聞かせてください。
プラモデルも楽器も
構造が大事
奥山:宝物ね…。小さい頃の宝物と言ったら、僕は一人っ子なので結構ひとりで遊ぶことが多かったんです。それで親にあてがわれたのが「プラモデル」でしたね。プラモデルは結構ハマりました。どちらかというと“動くプラモデル”が好きだったので、ディスプレイみたいにきれいに作るのは、根気がなかったせいもあるんだけど、そういうのはあんまり好きじゃなかったですね。だから、ディスプレイ用のプラモデルに後からモーターをくっ付けたり、シャシーを自分で作ったりして、ひとりで当時流行っていたジープみたいなものを作ったりして遊んでいました。それが小さい頃の宝物です。
――プラモデルも“動くこと”が大事なんですね。楽器や演奏にも繋がっている気がします。
奥山:確かにそれはありますね。僕はどちらかというと楽器は“構造”から入る方なんです。ですので「この楽器はどこをどうすれば鳴るのか」っていうところから入っていくんです。最初にギターとか鍵盤とか、いわゆる「機械楽器」に触ったからかな。
――面白いですね。「機械楽器」という言葉も初めて聞きました。音楽や楽器に対してぐっと深く入っていくきっかけは?
奥山:言われてみると、そんな深い動機はなかった気がするんだけど、やっぱり“音が出る物が好き”だったのかな。どうして音が出るのかってところにすごく興味がありましたね。
――学生時代はピアノ以外も?
奥山:学生の頃は合唱部にいたこともあって、アコーディオンもちょっと触ったりしていましたね。あとは伴奏で…当時はフォークソングが流行っていたのでギターを弾くやつは五万といたので、僕はベースを弾いたりしていました。
犬との暮らしと
YouTube
――私はうり店長の前の犬が虹の橋に旅立ったあと、数か月の引きこもり生活があったんですが、奥山さんもワンコと暮らしていましたよね。
奥山:うちも2匹いたんだよね。柴犬ともう1匹は雑種。最初に来たのが柴犬で名前は“はなこちゃん”。はなこを飼って、彼女を散歩に連れ出したときに、たまたま近所で捨て犬を見つけちゃたのね。で、家に帰って保健所に連絡するわけじゃないですか。でもなんかね、やっぱり情が移っちゃって役所が来る前にとにかくキャンセルしようと思って職場についてすぐ家に電話して「うちで飼うからやめてくれ」と言って。それからは2匹飼いになりましたね。
――“はなちゃん”と“こたちゃん”
奥山:そうそう、こたろう君です。あの二人、僕にとっては二人なんですけど、彼らには本当にいろんな意味で支えられました。はなちゃんが16歳位、こたが14か15歳位で逝っているんですが、その間、家族の中にもいろんなことがあるじゃないですか。その時に「彼らがいたので救われた」っていうこともいっぱいありましたよ。
――はなちゃんの晩年には私も会う事ができて…。
奥山:そうだね、あの時ね。
――可愛いかったです。
――YouTubeの「よくわかるウクレレ講座」も、とっても人気で。特に『クレイジーG』の動画は再生回数30万回です。
奥山:うん。びっくりしました。
――今ちょうどお客様もいなくて、ウクレレお手元にあるようですので『クレイジーG』のさわりだけでも…。
奥山:『クレイジーG』って色んな弾き方があって、10人居たら10通りの弾き方があるので、これが正しいかは別ですよ。実演は音源をどうぞ♪
上手くなるには
嫌いにならないこと
――楽器が趣味で「もっと上手くなりたい!」と思っている方にアドバイスをください。
奥山:とにかく「続けることが大事」。ある程度やると、どうしてもできない部分や何回やっても上手くいかないってことって必ずあるんですよ。誰でもね。そこで「自分にはやっぱり向いていないのかな」って結論に至る人って多いんだけど、そうすると、そこでもう楽器との出会いは完全に終わっちゃう訳ですよ。嫌いになったらそこでおしまいだから。そうならないために、できることを少し膨らませるようにして、できないことからは逃げちゃえばいいんですよ。そうやってとにかく続けることが大事。
――自分が弾ける曲を選らんだり、好きな曲を選んでその練習を重ねていくことが…
奥山:そうそう。前に習った曲をもう一回弾くのって、なんか自分が後退しちゃうような気持になるかもしれないけれど、そうじゃないんだ。前にできなかったことが、もしかしたら今はできるかもしれないし、前よりもいい音出せるかもしれないじゃないですか。もし最初に『きらきら星』やっていて、きらきら星にもう一回戻ったら『キンキラキンの綺羅星』になっているかもしれないでしょ。
音楽でイキイキ。
楽しい時間を届けたい
――個人活動の他にも地域活動にも力をいれていますね。
奥山:ヤマハでは子供さん相手だったんですけど、今は本当にシニアの方がほとんどで私自身よりも年上の方が多いんです。自分の両親はもう亡くしていますので、今更やっと両親の有難みがわかってきたんですね。そうするとお年寄りたちへの感謝の気持ちが自然に生まれてきて、何か役に立ちたいなって。イキイキと楽しい時間を過ごしてもらいたいなって、そういう気持ちが大きいですね。
――それで施設を廻ったり、ミニコンサートを開いたりしているのですね。
奥山:そうですね。このコロナ禍でずっと施設周りはできてないんです。だから非常に寂しくってね。色んな施設の方々のお顔もすぐに浮かぶくらい何度も行っていますので、そういう方たちとお会いできないのはちょっと寂しいですね。僕自身が寂しい気持ちよりも、あの方たちは大丈夫かな?という気持ちの方が強いですね。
――近々、何か開催する予定はありますか?
奥山:はい。片瀬の方に出張レッスンに行っていたんですけど、カントリーとかハワイアンとかを練習なさっているのを見ていて「曲も集まったので、せっかくだからコンサートでもやりませんか」って、お声がけをしたらすごく喜んでくださったんです。でも「自分達だけじゃ、お客さん呼ぶのは…」ってなって、僕もアコースティックのバンドやっていますので「じゃあ一緒にやりましょう」と。5月29日、鎌倉のきらら生涯学習センターホールで無料のコンサートやります。ぜひいらしてください。
――実は私もお友達に誘われていましたので、ぜひ伺わせていただきたいと思います。
奥山:ぜひ待っていますよ。
――では、ここで何かお好きな曲をおかけしましょうか。
奥山:やっぱり自分が若い頃に聞いて「ハッ!」となった。イントロを聞いただけで胸がざわついた、プロコル・ハルムの『青い影』をお願いします(楽曲はYouTubeへリンクされています)。
プラマイゼロの
人生が大事
――今、探している宝物はありますか。
奥山:心の不健康かな。そういうと、ちょっと変に聞こえるかもしれないけど。僕に残っている人生はせいぜいあと20年位しかないんだけど、やっぱり体の健康は大事だよね。でも、人間って不完全なものだから、プラスとマイナスの両方があって±0でちょうど中央を綱渡りのように歩いていくのが、人生なんじゃないかなってそう思うのね。そうすると体の健康を“プラス”だと考えると、独りよがりで人にはいえないようなこと、“マイナス”の部分もどっかで感じていないとバランス悪くなっちゃう。だから、頭の中はエゴイズムの固まりでいいんじゃないかなって。そういうバランスをとるのが大事なんじゃないかなって今は思っています。
――心の不健康、ちょっとした名言かもしれません。
奥山:不健康ってことばが適切かどうかわからないけどね。バランスだね。
――今日はお話しを聞かせていたただいたお礼にもう1杯いかがでしょうか。
奥山:お願いします。またブラックでください。
――ごゆっくりお過ごしくださいませ。
奥山:ありがとう。
番組サイト⇒『犬とあなたと珈琲と。』
インタビューと文:白田祐子(しらたゆうこ)
Instagram:@doggy_uri
@ル・ブラン湘南
白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中。