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犬とあなたと珈琲と。Vol.79 犬の表情の進化

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南  

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

お客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。今回のテーマは『犬の表情の進化』。わんこが眉を八の字にして上目遣いでウルウル見上げてくる。なんともせつないこの表情は「子犬のような目」と呼ばれています。実はこれ、犬達が人に対してプラスに働く表情だと気付き、筋肉を発達させてまで手に入れた〝進化の証〟だとしたら驚きませんか?今回も保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関係を研究しているドッグカウンセラーの白田祐子がそれぞれの視点で考えていきます。


祐子 こんにちは。ゆきちゃん、いつもありがとうございます。
ゆき こんにちわ、祐子さん。今日もうら君と一緒に来ましたぁー。

祐子 うら君久しぶり。なんか大きくなったぁ
ゆき もう8ヶ月なので少し大人になりました。今までは、なんでもかんでも「わぁわぁ」していて、“やんちゃっこ”でしたが、やっと、こういう所でも待っていられるようになりました。成長はすごい。

祐子 はっきりと成長がわかる。早く新しい家族が見つかるといいね。
ゆき 譲渡会にもどんどん出て、頑張っているのでよろしくお願いします。

*中山ゆきさんが所属する保護団体の譲渡会の情報は「PAK(Paws Adoption かながわ)」

保護動物の
費用負担って?


ゆき 祐子さん、ちょっとモヤモヤ案件があるんですよー。少し前になるんですけど、私たちの活動を見てきたので「ぜひ2頭目は保護犬を迎えたい」って相談があったんです。ただ、そこの先住犬がちょっと怖がりなので、怖がりじゃなくて、でも、あまり活発過ぎない、3歳前後の子がいいっていう条件だったんです。

PAKには、今その条件でマッチングできる子がいないから、ちょっと待ってくださいって伝えていたんですね。ところが、この前、その方と会ったら「ペットショップに見に行った」って言うんですよ。そして「でも、高くて買えなかった」って…。これって、ちょっとモヤモヤしませんか?

祐子 あー…。「保護犬ならタダだから」という、なんだかネガティブなニュアンスを感じとっちゃったんだね。ただ、「無料」と言っても、お届けまでの交通費とか、譲渡までにかかった医療費であったり、その辺は保護団体によって随分違うとは思うけどいくらかはかかるよね。

ゆき そうですね。他に活動費とか…祐子さんの言うようにかなり違います。犬本体の費用はかからないけど「医療費の『全額』か『一部』を負担してください」って、いうところが多いと思います。その医療費も協力病院が有るか無いかで変わるし、医療ケアも個体差がある。

例えば、心臓が悪いってわかったとき、大きな手術を「してあげられる」団体、「する」団体もあれば、そこまで「できない」或いは「しない」という団体もあるんです。そして、高額な医療費がかかった場合、それをどこまで里親さんに請求するかっていうのも違うんですよ。

祐子 わかりやすい。以前、友達が繁殖引退犬を2頭ブリーダーから譲ってもらったら、2頭とも数か月で癌を発症して、1-2年で死んでしまったということがあったのね。だから、成犬の場合は特に譲渡前の健康診断は大切だよね。でも、時々、医療費は「一律20万円」とか、内訳が分からない団体もある。

ゆき ありますね。疑問に感じたときはしっかり確認してもらいたいです。ただ、多くの保護団体は、心を寄せてくれる里親さんに、なるべく費用負担が少なく済むように、努力していると思うんです。だから譲渡費用が低い場合は、協力病院のおかげだったり、団体の体力、つまり、今までいただいた「ご寄付」のおかげという事情も大きいってことです。

理解・応援の
気持ちが嬉しい


祐子 最初の話に戻ると、そういう「安く済む」っていう理由で保護犬を選ぶ人は、一定数存在するよね。その子を一生大切にしてくれるなら、保護動物を選ぶきっかけが「安いから」も「あり」だと私は思うけど。まぁ、言い方によっては心象も変わるけどね…。そういう理由をハッキリ言ってもらえると、経済的な面とか、今後の話し合いをする中でのポイントがわかるから、言ってくれた方がわかりやすいよね…

ゆき そうですね。最初から、そういう話ならモヤモヤしなかったと思うんですけど、「活動を見て」って言われると、なんていうか…

祐子 「共感してくれたんだぁ!」って嬉しくなる言葉だもんね。
ゆき はい。活動を理解してくれて「保護犬を自分たちで笑顔にしたい!」って思って言ってくれた言葉は嬉しいし、本当にありがたいです。

祐子 終わりなき活動の中での光だね…。

譲渡会で
注目されやすい子は?


祐子 うら君も譲渡会に参加して頑張っているけど、譲渡会をしていて人気のある子や貰い手の見つかりやすい子って傾向はある?

ゆき うーん、人懐こい子かな。やっぱり抱っこできたら、そこからっていうのは大きいですよね。

祐子 確かに。抱かせてくれたら「私が連れて帰って、面倒をみてあげなくちゃ」みたいな、お世話したい欲求が引き出されるもんね。ペットショップもすぐに抱かせる戦略とるよね(笑)

ゆき あるある。あと、寄ってくるとか、横に座って手をかけてくるとか…。やたらめったら仕草が可愛くて「上手にやるよねー」っていう、わんこいますね。

祐子 自分が「犬に選ばれた」って感じちゃうやつね。実際、ファーストインプレッションみたいのって、犬は鋭いんだと思うけど。

ゆき なるほど。それに比べると、とにかくはしゃいじゃって「犬を見ない」「人を見ない」「ひとり遊びに夢中!」みたいな子はなかなか注目されずらいです。

祐子 そうかー。昔なら「一番活発な子を選ぼう」って、指南書に書かれていたけど、あれは「活発な子は健康」っていう単純な理由からだったんだろうね。私なら隅っこに丸まっている“人見知り”タイプが気になるかな…「類友」か(笑)ゆきちゃんは個人的にどんなタイプの子が好き?好きというか、合ってると思う?

ゆき 昔ならその「活発な子」を選んでいましたね。山でも海でも、どこでも一緒に行ける元気いっぱいの子がいい。

祐子 わかる。アクティブだもんね。
ゆき ただ、今は“みみちゃん”くらいじゃないと無理です!

祐子 リビングにゴロっと寝転がっている、置物のような感じね。

柴犬のみみちゃん。今はもっとスマート

ゆき そうです。活発な子はもう疲れちゃって。本当に個人的な意見ですが、祐子さんも“みみちゃん”や“うりちゃん”みたいな感じじゃないと無理なんじゃないですか?

祐子 確かに(笑)自分の年齢と体力との勝負だよね。目が回るような動きの子もたまに遊ぶなら楽しいし、元気を貰えていいけど、毎日となると体力気力が足りない。これはお互いのためでもあるよね。子犬はひたすら可愛いし、可能性に満ちているけど、シニア犬の可愛さも堪らないよね。

ゆき シニア犬の可愛さ…もうこれは話したら止まらないですね…

音楽:The Loch Ness Mouse『The Cherry Blossom In Japan』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

子犬のような目で
アピールすれば注目される?


祐子 譲渡会で貰われやすい子の話で思い出したけど、「子犬のような目」って言う言葉は聞いたことある?
ゆき 「子犬のような目」…。

祐子 眉を内側に寄せて八の字にして、哀れみを含んだような…なにか物言いたげな…ついつい甘やかしたくなる…
ゆき はいはい。つい負けてしまう、あの顔ですね。あの表情って「子犬のような目」って言うんですね。

祐子 イギリスの心理学者ジュリアン・カミンスキーっていう人が論文で使ったから、そう広まったんだけど、保護施設にいる犬たちの動画を撮影していたら見つけちゃったみたいね。カミンスキーさん。保護施設ではこの表情をする犬が多いことを。

ゆき カミンスキーさん、一体どんなことを調べていたんですか?

祐子 保護施設で犬の「行動」と里親が見つかるまでの「時間」。この間になにか相関関係はないだろうかって調べていたみたい。そうしたら、この「子犬のような目」をできる個体のほうが、できない個体よりも人間の心を掴むのがうまくて、貰い手がつきやすかったんだって!

ゆき おー!

犬は目の周辺の
筋肉を進化させた


祐子 しかも、カミンスキーさん「オオカミってこの顔しないよね」って思って、調べてみたら、オオカミは眉などを動かす筋肉がほとんど発達していなかったのに対して、犬は眉をしっかり持ち上げられる筋肉を持っていた。さらに、犬の中でも筋肉が発達していなかったのが、シベリアン・ハスキーだったって。

ゆき すごい。確かに、いま思い出すとハスキーの顔って、ちょっと「無」って印象ですよね。はしゃいでいる時も甘えているときも。ハスキーはオオカミに近い犬種だから、まさかこれは「進化」したっていうことですか!

祐子 そういうことみたい。カミンスキーさんは「イヌが眉の筋肉を意図的に動かしているという証拠はない」としながらも、通常、筋肉の変化といった進化は何万年もかけて、ゆっくりと発生するものなのに、オオカミと犬の間で違うことは「すごい!」って。

犬は「自分の表情で人間へ気持ちを伝えることが可能で、人との関係にプラスの働きを持つ」。そう知ったからこそ、選択的優位(遺伝的に強化されて)いったのだろうって言っている。

ゆき 犬は自分の表情で気持ち伝える!犬のもつ素晴らしい力ですね。

アイコンタクトで
気持ちや意思を伝える


ゆき そうそう、この前来た時に「次回話そう」って言ってたやつが、まさにそうですけど、この物言いたげな「子犬のような目」で見つめてくるのも、「アイコンタクト」って言うんでしょうかね。

祐子 うーん…アイコンタクトは「意思の疎通」や「感情の共有」を行う、コミュニケーションの一つと定義されているから、だとするとどうだろう。「子犬のような目」自体は、アイコンタクトとは言わないのかなぁ。

ゆき 意思の疎通、感情の共有…ボーダーコリーとかが、「ジーッ」と見てくるあれは個人的に苦手なんです。訴えかけてくるというか…。プレッシャー感じてしまって落ち着かなくなる。だから、ちょっと気付かないふりしちゃうんですけど。

祐子 「暇です!」「なんか楽しいことないかなぁ」みたいな圧力ね。特にボーダーコリーは牧羊犬だから回りの動きをすごく見がちだよね。列から外れるものがいたら正すのが仕事です!みたいな真剣さで。

ゆき はい。視線で圧力(笑)。あれはどうですか、ビビりのわんこがお母さんの顔ばかりみるやつ。
祐子 あれは不安げな顔でみるから、コミュニケーションじゃないって思うな。

ゆき じゃあ、怖がってる犬が遠巻きに見てくる
祐子 顔色を伺う感じだから、それも違うかな。安全かどうか確かめたいっていうのもあるんだろうし。

ゆき なるほど。そうかぁ、ジッと見てくるだけじゃ「アイコンタクト」とは言わないですね。それって勘違いしている飼い主さんっているかもしれない。目線とか耳の動きとかも関係してきますよね。

音楽:Emi Meyer『On The Road』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

白目が見えるのも
犬ならではの特徴

ゆき 祐子さん、この前話した、散歩中のアイコンタクトはどうですか。「犬同士はそんなに相手をジロジロ見ない」ってトレーナーさんが言ったっていう話し。

祐子 犬同士は相手に顔を向けなくても、目の端で案外相手を見てるけどね。オオカミも、例えば、群れで狩りをする時とかアイコンタクトで「あっちに回れ」とか、合図しあっていることが分かっている。

ゆき うわぁすごい。オオカミのアイコンタクト!意思疎通・情報共有みたいな感じ。それこそがアイコンタクトなんですね。

祐子 ねっ。しかも、オオカミは白目が完全に隠れているのに、犬は白目が出るでしょ。それは、人間に目線で気持ちを伝えたいから。白目が見えた方が目の動きが分かりやすいから、犬は白目が見るように進化したんじゃないかって。

ゆき それもすごい!犬とオオカミの違い!


祐子 犬は「犬」同士と「人」相手のコミュニケーションの方法を使い分けていて、人にはアイコンタクトが有効だってわかっているから、散歩中にアイコンタクトを取ってくる犬は多いと思う。「こっちでいいよね」「これでいい?」って聞いてきたり、「楽しいね」って喜びを共有したり。目で会話する感じ。

だから「うちの犬は散歩中、アイコンタクトを取ってこない」って、相談した飼い主さんは、もしかすると「もっと気持ちを通わせながら歩きたい」とか、そういうことを言いたかったのかもしれないよね。本人に聞かないとわからないけど。

ゆき なるほどー。アイコンタクトの意味あいが少しずつわかってきました。

祐子 犬と歩いていて、ふと犬を見たらこっちを見上げてきて目が合う。その瞬間って、本当にハッピーな気分になるし、そういう人と犬の姿を目にしたときも「あーいいなぁ」って思うなぁ。あと、通り過ぎる犬と目が合ったときも「ねー」ってなにか秘密を共有したような気分になるし、アイコンタクトっていいよね。
ゆき はい。すごくわかりますー。

注目してあげると
犬の表情は豊かになる


ゆき 私も「楽しいね」って話したり、「あっち行く?」って話したり、まさに「共有」のアイコンタクをとります。楽しいですよね。でも、それって犬をよく見てあげないと気付かないかもしれない。スマホ見ながらじゃ、絶対に気づかないし、安心している時はどんな表情なのか、どんな目線なのかって。そういう違いに気付けるくらい見てあげたら、一層、信頼関係が築けますね。

祐子 本当だね。
ゆき みんなハッピーな犬との生活!まずはアイコンタクトから!

祐子 いい標語だ。今日も楽しい犬談義でした。まだ時間は大丈夫?
ゆき
大丈夫です!

祐子 では、お礼にもう1杯いかがでしょうか。
ゆき
はーい。いつも、ありがとうございまーす。うら君の可愛い顔をゆっくり見ていたら、なんかモヤモヤも消えていきましたー。

祐子 よかったぁ。『チョコクリームサンド』も、もう一つ食べるでしょ?
ゆき いただきます!

うら君「ずっとの家族募集中」

番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』  
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』 

放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

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白田祐子(しらたゆうこ)

プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。

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