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犬とあなたと珈琲と。Vol.86 澤口武志

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南  

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ『TAKARA CAFÉ』。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬の“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

今回のお客様は『ZAIKA AUDIO LABORATORY』の澤口武志さん。日本を代表する真空管アンプの設計・製作・販売を行うメーカー『ZAIKA』。澤口さんは設計者安斎勝太郎氏のもと、介護施設やイベント会場などで参加者が持ち寄ったレコードを中心にした「真空管で聴く音楽鑑賞会」を開催しています。レコードと真空管(アナログ+アナログ)から音が発せられた瞬間、空間は支配され、圧倒的な強さの波動が毛穴から全身へと駆け巡ります。放送でも実際に真空管から音楽をお届けしました。アーカイブは音楽がカットされていますので、ぜひ、イベントなどで本物の音をご体験ください。


―澤口さん。そろそろセッティングも終了ですか。

澤口武志さん(以下:澤口):はい。こんな感じでいかがでしょうか。

TAKARA CAFÉ」では明日のお昼に『ZAIKA AUDIO LABORATORY』の澤口さんがレコードプレーヤーと真空管アンプを持ち込んで「真空管アンプで音楽を聴く会」を開催します。今日は早めにその準備中でした。

澤口:だいたい普段は1時間くらいでセットできるので、いつもはその場でやっちゃうんですけど、今日は前乗りをさせていただいて準備をしにきました。

本物のアナログの音を
お届けします

収録時、機材を運び入れ、アナログ音をマイクで拾い電波にのせました

―さっそく、なにか聴きたいです。
澤口:何枚かお持ちさせていただきましたので…まずは、知っている曲、聞き慣れた曲の方がデジタルとアナログの違いがわかると思うので…そうだ、これは絶対におススメ!

音楽:宇多田ヒカル『Automatic』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

―うわぁ!低音がすごくて、なんだか新しい曲を聴くような感じさえしました。いつもとは全然違う感じです。すごい…うりもいつもと違うって感じの顔をしています。あっ、澤口さんはわんこ大丈夫ですよね?なにしろ澤口さんと最初にお会いしたのが、葉山の「お寺でわんにゃん縁結び」でわんこだらけの場所でしたから

澤口:もちろん大丈夫です。わんこ大好きです。あれは5月で、その後6月に「わんにゃん縁結び」の会場になっている、葉山のお寺「仙光院」さんの本堂で真空管の音に触れていただいたと思います。

―あの時に初めて聴いたんですけど、音の広がりと吸収が最高にいい場所で聴くことができました。

日本最高クラスの
真空管アンプZAIKA


―澤口武志さんは『ZAIKA AUDIO LABORATORY』の横浜支部長さんでいらっしゃって、今日お持ちいただいた、この真空管アンプのメーカーが『ZAIKA AUDIO』。『ZAIKA AUDIO』は真空管アンプの設計・製作・販売をしている会社。ということで…大丈夫ですか…

澤口:はい。そうですね。アンプエンジニアの安斎勝太郎先生という方が1948年に設立されましたのが『ZAIKA AUDIO』で、安斎の「ザイ」と勝太郎の「カ」の組み合わせで「ザイカ」というロゴになっています。よほどのマニアの方じゃないと知らない世界だとは思うんですけど、日本を代表する素晴らしい真空管アンプの設計技術者で日本では最高クラスの方だと思います。

―真空管アンプ。みんなが想像するあのガラスの菅がこれには7本立っていて、ダイヤルも7つ。本当にシンプルなデザインです。このガラス管の中が真空になっているから真空管…

澤口:そうですね。ものすごく簡単にお伝えしますと、ガラス管の中に放出された電子を制御することで音を増幅させる。たとえば、生の楽器の音とか人間の声の幅がここからここまであっても、どうしてもデジタル加工するときは容量の関係から上下をカットされてしまうんですね。でも、アナログだと音の幅や膨らみまで感じ取れます。そして、特にレコードと真空管アンプ、どちらもアナログ。この組み合わせは、ものすごく心地よくて、音がダイレクトに伝わってくると思います。

―本当にその通りですね。音を波形でみたとき、その上下が切られてしまわず、残っているということですね…だから音の奥行がすごいんですね。毛穴に入り込んでくるような感じがあります。

偶然出会った
忘れられない音


ーそもそも、澤口さんと真空管アンプの出会いはいつ頃だったんですか

澤口:15年位前に遡ります。たまたま、一眼レフを趣味でやっていて、その帰りに休憩しようと、『あずみ野』さんっていう、沼津にある喫茶店に入ったのがきっかけです。お店に入ると音楽が身体に「うわ」っと飛び込んできました。それで「この音はなんだろうな」って感じで、マスターにお願いして色々なレコードを何枚も何枚もかけていただきました。これが『ZAIKA』の音にはじめて触れた瞬間でした。

―その時にマスターから真空管アンプのことを聞いたんですか

澤口:いえいえ、実はその時はなにも説明などを受けずにそのまま帰りました。そして1-2か月過ぎた後に「あの音、なんだか忘れられないな」っていう思いで、一眼レフで撮った写真を見直してみたところ、そこに映っていたのが『ZAIKA』というロゴ。「これはなんだろうな?」ってネットで検索しましたら、設計者が安斎勝太郎先生ということで、そのときは住所や電話番号も載っていたんです。それで、たまらず電話してしまいました。

安斎勝太郎先生
おおいに語る


―すごい!きっと電話では専門的なお話もされたんでしょうけど、澤口さんは技術系の方なので、先生とも話が通じたのでしょうね…。

澤口:はい、私もそう思います。その時、色々お話しする中で安斎先生も「あんた技術屋だね」なんて言葉を仰られて、「おたくどこにお住まいなの」「遊びにおいでよ」って、すぐに言っていただけました。それで先生のご自宅兼研究室に伺うことになり、お付き合いがはじまったということです。

 その後ですね、なんと、安斎先生の大切なアンプを譲り受けることができました。はじめは自分の狭い自宅で聴いていたんですが「いや。これは、自分だけで楽しんで聴くのはもったいないな」と感じて、「ぜひ、みなさんにこの音を聴いていただいて、一緒に感動していただきたいな」って思ったんです。

―それで先生と二人で『ZAIKA AUDIO LABORATORY』と名付けてチームを組んだんですね
澤口:そうです、そうです。

日本の通信や音響を
最先端で支えてきた技術者

人生を変えた「あずみ野」で安斎先生と

―安斎勝太郎先生。今、検索してみましたが、あまりヒットしないですね。どのような方でいらっしゃるんですか?

澤口:はい。たとえば、第1回の東京オリンピックで使われた音響設備は実はZAIKAの真空管が使われていました。その時のPAチームのメンバーとして活躍されたり、あとは、みなさんがご存じの南極観測船「宗谷」の通信システムの設計に携わっておりまして、ドイツの技術者の方を呼び、技術を取り入れ、学んで、広めていかれたということで、日本の通信や音響を支えてこられた方です。

―すごい、もっと有名になってもいいくらいなのに、今はおいくつでいらっしゃるんですか?

澤口:現在98歳を過ぎていらっしゃいます。まだご健在で、今も元気に活躍されております。

―それは、安斎先生がお元気なうちに功績をまとめて残しておきたいですね

澤口:はい、私の人生が変わったとも言える、大切な出会いでございますから、本当にそう思います。


澤口:えーでは、珈琲を頂きながら、1曲いかがでしょう

―いいですね、ちょっとレコードを見てみようかな…Norah Jonesがありますね!『TAKARA CAFÉ』でも、結構流れていますが、聴き比べもかねて…Norah Jonesと言えば…

音楽:Norah Jones『Don’t Know Why』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

一枚のレコードから
流れる音と溢れ出る想い

熱海の喫茶店にて

―心地よくてなんだか眠たくなってきちゃいましたが…先程、お話のあった外での活動、視聴会を開催されるときは、参加者のみなさんにレコードを持ってきてもらうのが澤口さんスタイルなんですよね

澤口:そうなんですよ。参加いただく方にレコードやCD、特に思い出のあるレコードやCD。こちらをお持ちいただいて、それを私の真空管の機材でおかけさせていただく。そうして、リクエストいただいた方々に一言「思い出」の話をしていただくというのが、私の「会」です。

―いいですね。これまで印象に残ったお話はありますか
澤口:たとえば、熱海の喫茶店で開催したときにですね、リクエストされた方は、昔、OL時代に毎月1枚、給料が出たらレコードを買っていたとお話しされていました。「頑張って働いて買ったレコード」だと言って、だから思い出が沢山あって、その時の記憶が蘇ったのだと思います。涙されておりました。

―一枚のレコードから流れるのは、音楽だけじゃなくて、その人の思い出や人生の色々。大切だった宝箱の蓋が久しぶりに開いたんじゃないでしょうか

澤口:そうですね。そういえば、こちらのお店の名前も『TAKARA CAFÉ』さんですよね。視聴会をするには、とても最適なお店だと思うんですけど、どうして『TAKARA CAFÉ』ってつけられたんでしょう

―『TAKARA CAFÉ』は、ここで宝物の話をすると、失くした宝物が見つかったり、新しい宝物に出会えたりする。そんな場所になるといいなと思って付けた名前なんです。

澤口:なるほど!それはとっても素晴らしいですね。

―ありがとうございます。もしよかったら、澤口さんも宝物の話聞かせてください。

もっと人と繋がりたい。
真空管を通した活動へ

様々な場所で視聴会を開催

―澤口さんの宝物はなんですか
澤口:それはですね、やはり安斎先生と真空管との出会いということになると思います。

―出会う前と出会った後ではどんな変化が生まれましたか?

澤口:こうして、今もそうですけど、人と人とのつながり。こちらが増えたと思っています。私は機械工学系の高専を卒業してから、技術者としてサラリーマンを長年やってきましたけど、20年位前に「このまま60を迎えたら、外の方との繋がりもなく終わってしまって、誰からも相手にされなくなるんじゃないかな」そして、それはとっても孤独ですし「そうはなりたくない」。なんて思いはじめたんです。24時間365日、いつ呼び出されるかわからない。土日の休みもない。まだまだ、そういう時代でしたから。

―このままじゃ、人生寂しいじゃないか…もっと人と繋がりを持ちたい…でも時間はない…

澤口:はい。そうですね。そう考え始めた頃に技術から営業サポートへの配置替えがありました。居場所が変わったことで時間もとれるようになって、技術屋だと、いつやれるかわからなかったことを、今なら真空管を通してできるかもしれない。地域貢献やコミュニティ作りをこの機材をつかってできるかもしれない。「少しずつ動いてみよう」という思いになるきっかけになりました。

高齢者施設での音楽会。
思いがけない効果も

わかたけの杜にて

―外との繋がりをどんどん生み出して、今はその出会いの一つに高齢者施設もありますよね

澤口:横浜の「わかたけの杜」という施設に毎月通わさせていただいております。利用者さん自体はですね、施設に入るときに、レコードやCDってなかなか持ってこれないものですが、周りの方、ご家族やお知り合いの方に「あのレコード」「あのCD持ってきて」って言って、周りのみなさんが動いてくださる。

―確かに、あとあそこに、あのレコードがあったはずだって記憶をたどる訓練にもなるかもしれないですね!アナログアンプひとつで物語はどんどん広がっていきますね。

澤口:はい。こういう例もあるってことですね。みなさんが笑顔になってくれると本当に幸せなので、これからもずっと続けていきたいと思います。

ーでは、ここで一息…。
澤口:はい、では、JAZZでもいかがでしょうかね。一つ一つの楽器の響きがとてもダイレクト感じ取れる。そう感じた曲ですね。

―いいですね、なんだか懐かしい。『Take Five』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

ちっぽけな活動だけど
音楽を通じた幸せづくりを

お世話になっている「中古レコードのタチバナ」のみなさんと

―今、探している宝物はなんですか

澤口:音楽を通じた幸せづくりです。これまで知り合った方々、そして高齢の方々。それから、周りとコミュニケーションをとるのが難しい方々。そのような方々も音楽を通じて人と繋がれる。とてもちっぽけな私の活動かもしれませんけど、人を繋ぐということをこれからもしていきたいです。

―唯一無二の活動だと思います…。音の確認もできたので今日はあとはのんびりと。お礼にもう一杯いかがでしょうか。

澤口:そうさせていただきます。遠慮なく、ありがとうございます。

こちらで
音楽を聴く会を開催します


イベントの詳細は「お寺でわんにゃん縁結び」公式ホームページへ

澤口武志さんのFacebook⇒「こちら
番組サイト⇒『犬とあなたと珈琲と。』

インタビュー・構成・文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagram
ル・ブラン湘南のInstagram

白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラ「ル・ブラン湘南」代表・ドッグカウンセラー。

1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。パートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

保護犬猫の譲渡会開催や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演、2022年4月から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。

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