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犬とあなたと珈琲と。Vol.17 新 安夫

聞逃し配信中
ミキサー:レディオ湘南 高橋優佳

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(毎週金曜 16:00~16:29)放送中

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。ここで“宝物”の話をすると探し物が見つかるとか?…オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の愛犬“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

今回のお客様はジェラテリア『The Market SE1』の新(あたらし)安夫さん。常時10種類のジェラートが並ぶジェラート専門店で、珈琲や窯焼きピザも大人気の”ジェラテリア”です。藤沢市の片瀬海岸にオープンしたのは14年前。27歳でイギリスに渡りF-1レースチームの専属シェフとして世界中を飛び回ったという新さんがロンドンの街角にあるような小さくて可愛いお店を開くまでのなんとも刺激的な人生!そして子供の頃から現在、そしてこれからも探し続けたい宝物はいつだって『道具』なのでした。


――こんにちは!新(あたらし)さん、ようこそいらっしゃいました。
新安夫さん(以下 新):こんにちは。新です。

――お忙しいところありがとうございます。
新:いえいえ…うりちゃんが普通に足元の店内にいる雰囲気がすごくいいですね。

素材ありきで
やっています!


――ジェラテリア『The Market SE1(ザ・マーケット・エスイーワン)』が片瀬海岸1丁目にオープンしたのは、もう10年位前でしょうか。

新:今年で14年目です。店内は4人も座ればいっぱいになっちゃう小さな店ですが、イギリスロンドンの街角にあるようなお店をイメージして作りました。ジェラートは常時10種類位あって、それ以外にもピザとか珈琲があり、街のみんながのんびりとフラっと来るようなお店になっています。

――可愛くて大好きなお店です。新さんはもともとシェフでいらっしゃいますよね。

新:そうなんです。

――どのメニューも素材が新鮮で普通であれば「アイスなんて食べたらちょっとカロリーが」と心配するところですが、むしろ「体にいいもの食べちゃった」っていう感じです。

新:そういう風に言っていただけるとありがたいですね。素材ありきでやっています。島根県に日本で最初に低温殺菌をやって世に送り出したと言われている『木次乳業』という乳業会社があって、山の草を食べているだけの牛乳を使ったり、藤沢のトマト、野菜やフルーツは全国から取り寄せてやっています。


――先日、私がお邪魔したときの『旬のおすすめ』が「フレッシュトマト」これめちゃくちゃ美味しかったです。「河内晩柑(かわちばんかん)」「信州ルバーブ」「フレッシュミント&チョコチップ」「西表島のピーチパイン」そして「THEいちご」がありました。

新:そうでしたね。

――特に驚いたのは、私が苦手な「チョコミント」。ここまで爽やかさを出せるだなんて!ってびっくりしました。

新:ミントは自家栽培しています。義理の母が肥料などをあげていつもちゃんと面倒を見て、大事に育てているんです。それをたっぷり使って牛乳と一緒にコトコト煮だして“ジェラートの元”を作っていますので、多分今まで食べたことのないようなジェラートの味に仕上がっていると思っています。

――まさしく!同席されていた方が「僕もチョコミント大嫌いなんだけど、これ食べてごらんよ」って感動していましたよね。私も感動しました。

自家栽培のミント

――信州ルバーブの「ルバーブ」は、赤いふきのような野菜と聞きました。

新:甘酸っぱくてちょっとカシスのような味です。アップルパイなんかにイギリスの方だと入れて食べるんですけど、それもジェラートにしています。

真夏は
アイスキャンディが主役?


――やっぱり、夏の時期が忙しいですか。

新:今の時期は、これ以上暑くなってくるとジェラートは下降気味なんです。その代わり、僕はもう一軒アイスキャンディ屋もやっていまして、そっちの方が忙しくなってきますね。

――アイスキャンディの方が清涼感があるから?

新:そうですね。多分、アイスキャンディとジェラートって売れる温度帯が違うんですよ。アイスキャンディはだいたい30℃位になるとすごく忙しくなるんですけど、ジェラートは25℃位が一番いいかな。

――なるほどー。そのアイスキャンディ専門店が『イグル氷菓』さん。今は大船グランシップの伊勢丹に直営店(2022年当時)があるんですよね。

新:メインで扱っているのは腰越の『イグル氷菓』です。腰越で製造販売をしているんですけど、通販もやっているのでそっちが忙しくなっちゃうと、常に商品を置いている直営店は大船のグランシップの中にある『イグル氷菓』ですね。

――ソフトクリームも美味しいって噂を聞きました。

新:ジェラートでも使っている『山のミルク』という、島根県の木次乳業の牛乳をそのまま使ってソフトクリームも作っていますのですごい人気があります。

――絶対食べに行きます。
新:ぜひぜひ。ちょっと犬連れでは入れないかもしれませんけどね。「どこでも入れる」そういう世の中になるといいですけどね。

――本当ですよね。犬連れでは『SE1』しか行けないですね。
新:うちは犬連れの方多いですからね。

――そうですよね。みなさんお店の前で食べてらっしゃいますよね。
新:はい。

ロンドンのマーケット。
そんな一角になれば


――『イグル氷菓』の「イグル」はどういう意味なんですか。

新:「イグル」は雪で作るかまくらです。イヌイットの言葉で「イグルー」って言うんですけれども、鎌倉とかけて『イグル氷菓』となりました。

――素敵な名前。考えてみると『The Market SE1』も不思議な名前ですよね。

新:ちょっとみなさんに読みづらいって言われるんですけど…僕は1998年から2008年まで10年間イギリスに住んでいる時代があって、ロンドンにモルマーケット(Maltby Street Market)っていうオーガニックのマーケットがあるんです。SE1番から16番まであってSE1番に出店しているマーケットなんです。そのマーケットの一角に出してもいいような感じで『SE1』。

――住所なんですね。
新:郵便番号です。

――郵便番号!
新:はい。「Shonan Enoshima 1番ですか」ってよく言われるんですけど、そうじゃなくて「South East」なんです。

――文字面もかっこいいですよね。
新:「わかりずらいかな」って僕も思っているぐらいです。


新:そういえば、店名繋がりで『TAKARA CAFÉ』っていうのも、ちょっと面白い店名ですよね。

――はい。私も結構聞かれます。ここで宝物の話をしたら失くした宝物が見つかったり、新しい宝物に出会えたりする、そんな場所になるといいなと思って付けたんです。
新:うーんなるほど。

――もしよかったら、新さんも宝物の話きかせてください。
新:宝物の話。わかりました!

網・タモ
魚籠・包丁!


――新さんの宝物はなんですか。

新:自分は静岡の富士宮市の自然豊かな場所で育ったので虫を捕まえたり、魚を釣ったりしていました。そういう時に使う、網・タモ・魚籠(びく)。そんなものが宝物でしたね、小学生くらいの時は。

――何を捕まえていたんですか?
新:魚もそうですけどカブトムシとかクワガタを掴まえて売ったりもしていましたね。

――売ったり?卸したりしていたってことですか?
新:そういうことですね。カブトムシを引き取る方がいてそれでお金を稼いでいました。

――面白い(笑)。外で活動するのが好きだったんですね。

新:家では料理をしていましたね。弟が一人いるんですけども、親は仕事で外に出ていることが多かったので、「じゃあ自分でつくっちゃおうかな」って感じで、簡単な中華料理をチンジャオロースーとかホイコーローとか作っていましたね。

――自主的に作っていたのですか。

新:そうですね。自分が「作ろう」って思っただけです。おばあちゃんが三味線のお師匠さんでその影響かどうかわかりませんが、僕は音楽がすごく好きで「楽器を弾きたい」と思っていたんです。でも、全然弾けないし、自分を表現できるものって思ったら「料理だけかなぁ」みたいな。それで、どこかご飯を食べに行ったときに「この味を再現してよう」ってちっちゃい頃から思っていましたね。

料理は生きるためか
自己表現か

――料理で自分を表現するということなんですね。

新:はい、そうですね。カッコイイ言い方すると、そういう感じですけど…生きるために必要なことですよね。自分自身はアーティスティックな感じじゃないので。生きるために必要な事でしょ?食べることって。でも、そういうことは自己表現でもあるんですよね。それぞれ表現の仕方は違うけれど。

それで高校卒業時に「なにやろうかな」って考えて、「あーやっぱり料理やろうかな」って思って料理の専門学校に入りました。その後、今は星付になった懐石料理屋さんで働いていましたが「やっぱり自分にはセンスがないな」「自己表現の仕方が違うな」って思って、何が自分の得意分野か考えたらカウンターでお客様と相対して会話するのが得意だと。それで、てんぷらの専門店でお客様と一対一、カウンターでてんぷらを揚げるてんぷら屋さんを始めていましたね。

そのお店が六本木にあったんですよ。六本木ですから外国人のお客さんが多くって、そうこうしているうちに「やっぱり海外に行こうかなぁ」って思ってイギリスに渡ったのが27歳のときでした。

F-1レースの
料理人へ


――イギリスですぐに働き口が見つかるものなのでしょうか。

新:僕はとりあえずイギリス中の、ロンドン中なのかな、日本食レストランに全部電話したんですよ。それで何となく見つけてフレンチジャパニーズをやっているところで働きました。その後ホテルとかでも働いて、現地の方に色々教えながら料理をしていたんですけど、結局教えることに疲れてきましたね。そんな時にネットサーフィンをしていて『F-1レースの料理人』という仕事があるんだってことがわかって、ちょっと面白そうだと思ってオフォーしたら、簡単に言えば「簡単に採用されちゃった」みたいな。

――え?簡単に?

新:そうなんです。ちょうどその時、HONDAのレーシングチームに日本人の佐藤琢磨君って子がいまして「じゃあ、琢磨君の料理作ってみないか」って話になりました。500人位を招待するパーティがあってフードトラックを用意してもらっていたので、その料理をうまく成功できたら合格というカタチで個人契約をとりました。

――ひゃー。そうしてF-1レースに帯同して行くんですね。

新:はい。年間18レース位あります。1チームはゲストやメカニックなどを合わせて100人位。その人達の料理を3人位のシェフで作って、それが月に2回から3回ですね。レース自体は1週間のうちにだいたい3日から4日位。朝飯、昼飯、晩飯作るので結構ハードな仕事です。

僕は当時「ヨークシャテリアみたい」って言われていて(笑)、やっぱり日本人で背が小さいし「きゃんきゃん」吠えながらスタッフと闘いながらやっていましたから。でも、ありがたいことにね、変わってるシェフだったんで、2005年か2006年にレッドブルっていうチームが主催している『シェフ・オブ・ザ・イヤー』に選ばれたことがあって、そうすると一目置かれた感じになりましたね。

――もうヨークシャテリアって言われなくなりましたか?

新:そうですね…。まぁ、人間らしいコミュニケーションもちゃんととれるようになりましたので。なんとか(笑)。日本人って声が小さいんですよね、多分ね。言いたいことを伝えるには、まず大きな声を出さなきゃ。

湘南だから
アイスだよね!


――お仕事はF-1のシェフ…

新:F-1のシェフはメインでやっていたんですけど、アイスのスクープとかそういう道具が好きだったので、イギリス中を車で走りながらアンティークを買って、日本のアンティーク屋さんに卸したり、細かいものを買って売ったりもしていましたね。

――それは珍しい…帰国されるきっかけは?

新:世界中を周わっているなか、ヨーロッパのレースはもちろんですが、だんだんアジアのレースが増えていきました。それで「アジアのレースって、日本を拠点としても行きやすいなぁ」って思ったので、日本に帰ってきました。

――そこからどうしてジェラテリアを?

新:リーマンショックがありましたよね。そのリーマンショックの年に「HONDA」がやめると言いだしました。「どうしよう」って思っていたら「2年後にまたやるから」って言われたので、「じゃあその2年間、自分で何かしよう」と思って、町を歩いていたら今のお店(空き店舗)があったんです。「海の近く…湘南…あっ!アイスだ!」って軽い考えで始めました。

――でも長く続けてきて、カウンター越しにお客様と話をする理想のお店ができたのでは。

新:そうですね。お店の空間が私にピッタリサイズで合っているんですよね。お客さんとのコミュニケーションがすごく作りやすいお店になっているので私も幸せです。

やっぱり
道具が好き

新さん愛用の鱗取り(現物)

――子供の頃、網や魚籠などの道具が宝物で、先ほどもジェラートのスクープのお話しもありました。今大切にされている道具はありますか。

新:お気に入りの道具はフランスの『マトファー』という会社から出ている、アルミで出来ている“鱗取り”ですね。ちょうど2000年頃にパリで買ったんです。多分、これはもう作られてないかもしれないので宝物ですね。

――今“鱗取り”の出番はありますか?

新:“fish&chips”をやったり、天然の魚、今だと富士宮のニジマスを仕入れて鱗取りで鱗を取ってピザに乗っけたりしていますので意外と使っていますよ。

――そうでした。ピザもいいですねー…。さて、ここで一息、何かお好きな曲をおかけしましょうか。

新:さんざんイギリスの話をしてきたので「イギリス好き」の僕としては、このカフェの雰囲気に合っている曲を。そうですね『Strawberry Fields Forever』知ってます?

――もちろん!ビートルズ
新:もちろん、ビートルズです。じゃあその『Strawberry Fields Forever』をお願いいたします。(楽曲はYouTubeにリンクされています)。

生きるため以外の
道具を扱いたい

――今探している宝物はありますか。

新:もうこの年になって、宝物はなにかなって思うと「自分にはない能力」ですかね。例えば、楽器が弾けたり、絵も描きたい。ないものねだりで、アーティストにはすごく憧れていまして、生きるための道具以外の道具を操れるようになりたいですね。

――かっこいいー。今日はお話しを聞かせていただいたお礼にもう一杯いかがでしょうか。

新:ありがとうございます。声を聞けただけでも嬉しかったんですけど、もう一杯珈琲をご馳走になれるなんて本当嬉しいです。

――ごゆっくりお過ごしくださいませ。
新:ありがとうございます。

『The Market SE1』のホームページは「こちら」

新安夫さんの番外編!

僕の英会話術

新:英語が喋れなかったので、とにかく“物真似”をしていました。お酒を飲みに行ったら、隣にいる人の言葉をそのまま真似してオーダーしてみたりして乗り切っていましたね。それから言葉の語尾に「isn’t it」を付けていることに気付いたんです。今となっては「isn’t it」ってわかったんですけど「イネ」って聞こえていたので、例えば「そのヨークシャテリア可愛いね」みたいなときは、「Yorkshire terrier is beautiful.イネ!」って。

「イネ」は「すごい」「だよねー」みたいな感じ。だからフレンドリーでラフに砕けた感じになるので友達を作る第一歩。あとはもちろん「please」とかpoliteな言葉を使うことも大事。それから、イギリス人って大きな言葉で喋るから、大きな声で自信を持って話すと伝わるようになります。

でも、ずっとそうやって喋っていたら「ヨークシャテリア」って言われちゃったけどね(笑)。 僕はボキャブラリーが少ないから、説得力のある話し方はできないんだけど、英語も自己主張をするための道具みたいなものだよね。

F-1の料理人は結構ハード

新:F-1って年間通して20レース位だから、だいたい2週間働いて1週間休みって感じですが、レース中は朝5時~夜12時近くまで働くので結構ハードでしたね。ブラジルとかバーレーンとか世界各国を周っていたけど、そのための準備も全部自分でやるんです。

例えば、イギリスのケータイリング会社に「今日はこのお肉とこの魚を冷凍にして飛行機に乗っけて」と指示したり、キッチンで使うガスコンロなどもオーダーして全て飛行機に乗せてもらうので、レース自体は3-4日だけど準備なども含めたら1回の帯同で1週間はかかりますよね。でも、慣れてしまうと平気なものですよ。なんでも一歩進んでやりましょう!

地元の設計士さんとの出会い

――『The Market SE1』は居心地のいい可愛いお店ですよね。

新:地元の『木津潤平設計建築事務所』の木津さんに空間デザインしてもらったんです。お店は小さいけどいいでしょ。本当に僕にピッタリサイズだよね。

番組サイト⇒『犬とあなたと珈琲と。』

インタビューと文:白田祐子(しらたゆうこ)

Instagram:@doggy_uri
      @ル・ブラン湘南

白田祐子(しらたゆうこ)

プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中。

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