犬とあなたと珈琲と。Vol.1 中山ゆき
FM83.1Mhz レディオ湘南(毎週金曜 16:00~16:29)放送中。宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』
湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。ここで“宝物”の話をすると探し物が見つかるとか?…オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の愛犬“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。
今回のお客様は、トリミングサロン/保護犬猫支援店『イヌと暮らす』のオーナー中山ゆきさん。
中山さんがトリマーを目指したきかっけは、20年近く続けている動物保護活動と、とても深い関係がありました。いったい、どんなきっかけだったのでしょう。そして、ボランティア活動を長く続けてこられた理由などを伺いました。
目次
保護活動をしたい!
トリマーの世界へ
――こんにちは。ようこそいらっしゃいました。
ゆき:こんにちは。祐子さんがカフェを開いたと聞いたので来ちゃいました。
――ゆきさん。中山ゆきさんはトリマーさんで、今はトリミングサロンのオーナーでもあります。今のお店をはじめて、どのくらい経ちましたか。
ゆき:藤沢で「イヌと暮らす」を始めたのが、2019年6月なので、もうじき3年になります。
――あと2か月で3周年。おめでとうございます。そもそもトリマーになったのはいくつ位のとき?
ゆき:24歳の時になりました。
――きっかけは?
ゆき:きっかけは、とにかく保護活動をしたかったんです。それで、保護活動をしながら食べていける職業は何かなと考えて「トリマーに!」って感じです。
――普通はそこに繋がらないと思いますが、そのアイデアはどのように浮かんだのでしょう?
ゆき:大学生の時に初めての保護犬となるワイマラナーに出会ったのがきっかけです。その時、保護センター(現:動物愛護センター)の実態を知りました。行くと、汚くて、臭くて。これじゃあ、誰も振り向いてもらえない。「身寄りのない子を救うためには清潔が必要だ。」そう思い、大学卒業後一旦は働いていたものの辞めて、専門学校にトリマーライセンスを取りに行きました。
現状を知ることで
冷静に
――最初の保護犬となるワイマラナーとの出会いとは?
ゆき:バイトしていた頃、バイト先に迷い込んできて、バイト先のおばちゃんたちが慌てて保護センターに通報しました。捕獲されて保護センターへ。当時は7日間で殺処分があったので、7日目に気が気じゃなくて電話をすると、「まだいる」と言われ、迎えに行きました。そこからうちの子に。
――名前は?
ゆき:ぶぅです。ぶぅちゃん(笑)。
――神奈川県動物愛護センターは、今は「動物を生かす施設」へと生まれ変わり、とても綺麗ですが、当時は「処分する施設」。20代で、あの状況をみたらかなりショックだったのではと思います…
ゆき:かなりショックを受けるような雰囲気、オーラがそういう感じでした。でも「保護するぞ!」って、ちょっと浮足立っていたのが、逆にその光景を見たら冷静になったというか。犬も沢山いたので、とにかく1匹ずつ保護したとして、私が死ぬまでに6匹かな7匹かなって計算して、逆に冷静になれた感じです。
――自分の進む道をしっかり見つけて、ライセンスを取得した後は?
ゆき:ブリーディングをしている、ペットショップでトリマーとして働きました。とにかくお世話とお掃除の日々でした。
動物と人間の絆の物語
が好き
ゆき:ここ『TAKARA CAFÉ 』で宝物の話をすると、探していた宝物に出会えるって噂をきいたんですけど。
――それは、本当かどうかは分からないですが、なにかを言葉にすることで、心の整理がついたり、やる気が増したりする、そういうことってあるかもしれませんよね。もしよかったら“宝物の話”聞かせてください。
ゆき:子供の頃の宝物、あらためて考えると、あまり思い浮かびませんが、とにかく子供の頃はムツゴロウ王国とか名犬ジョリーとか、犬が出てくる海外の映画を観たり、本を読んだりしていて「動物と人間との絆の物語」が大好きでした。
――その頃は、動物は飼っていなかった?
ゆき:飼っていました。犬と猫と亀。猫も亀もそこらで拾ってきた子で。犬も近所で生まれたからといただいた子でした。ただ、外に繋いでいて、病院もろくに行かず、挙句の果てに、ノラ犬がきて4匹子犬を産んで、母がもう大騒ぎ。「貰い手さんが見つからなかったら、保護センターに連れていくよ」なんて言われてもうカオスですよね。私は映画や本の中の海外の犬との生活にすごく憧れていたので、その頃の家の飼い方は何か違うなと疑問をもっていました。
――当時はまだ外飼いの犬はまだ多かったですよね。その子たちは?
ゆき:祐子さんらしい質問!(笑)。全員決まりました。
――今の子、ゼブラ君も”うり店長”と同じ保護犬ですね。いつも一緒にいて幸せそうです。
ゆき:そうですね。犬の飼い方は自分の意思でどうにでもなって、ゼブラは今職場に一緒に行ったり、リビングで普通に生活して一緒に寝たり、キャンプも一緒に行ったりしています。
人も犬も型にはめず
常に新たな情報収集を
――毎日多くの犬やその家族と接点を持ち、その中で犬の状態を見たり、悩み事を相談されたりする機会があると思います。これはとても重要な窓口になっているといつも思っています。そして、例えば、何かをアドバイスした時、言いっぱなしにするのではなく、他のプロジェクトに誘ってあげたり、必要であれば専門家に橋渡ししたり。そういう協力体制ができていることがプロだなと思いますが、その辺のポリシーはありますか。
ゆき:2つあります。1つ目は、人と犬が両方幸せであるように、人も犬も本当にそれぞれなので、型にはめずに、話をよくきいてということ。2つ目は正しい情報を得ること。科学的なことや法律的などはどんどん更新されていくので、勉強や情報収集をしています。
――保護活動への思いは、どう実現させていきましたか?
ゆき:トリマーとして働きながら、2003年地元の保護団体PAKさんで預かりボランティアとトリミングボランティアをさせていただくようになりました。
――預かりボランティアは、犬や猫の新しい家族が見つかるまでの間、一般家庭で育ててあげるボランティアさんのことですね。
ゆき:当時は実家のお部屋で1匹ずつ預かり、決まったらまた違う子を預かっていました。トリミングボランティアは、自宅のお風呂で洗い手作りのテーブルでカットしていました。シャンプーやカットをすることで、健康状態やケガはないか、また性格もなんとなくわかることもあるので、よく観察して報告していました。
――その中で特別印象に残った子はいますか?
ゆき:初めて自宅で預かりをした、中型ミックスのもじゃもじゃ犬のバンビ君。毛玉犬で泥だらけで、いつも隅っこに丸まっている子でした。歩くときも、産まれたての小鹿みたいにがくがく歩くので、それでバンビって名前でした。そこで、バリカンでつるつるにしてみたら、お股の皮膚が真っ赤にただれていました。でも、清潔にしてみると、びっくりするくらい皮膚の状態が良くなって、お散歩もスタスタうきうき、走り回ることができるようになって、本当に可愛くて、清潔の必要性を実感するできごとでした。
ボランティアを
20年続けてこられた理由
――20年近くボランティア活動を続けてこられたのは、すごいことだと思います。
ゆき:ボランティアを始めたのは20年近く前ですが、預かりを4匹譲渡した後は、わたしの結婚や出産、子育てがあり、正直活動はしてない時期もありましたが、タイミングがあえばトリミングをしていました。PAKの皆さんがとても自由なスタンスのボランティアだったお陰かなと感謝しています。
――素敵な出会いもポイントの一つですね。
ゆき:それから、妄想、構想、夢見る夢子ちゃんを重ねて15年。やっと「イヌと暮らす」で、保護犬猫支援のお店を始められました。それまで1匹ずつでも預かりをして、譲渡できた時や犬が元気になって笑い出したときの喜びがありました。仕事をしながら活動できたことも理由にあるかもしれません。トリマーになったのも“保護活動をしたいけれど、保護活動では食べていけない”。だから「トリミングでお金を稼ごう。」そういう夢と現実のバランスがあったので長く続けてこられたと思いますね。
憧れを原動力に
新たな宝物を発見
――子供の頃“動物と人間との絆の物語”が好きで、ぶぅちゃんと出会い、絆を深め、今は沢山の絆を広めていいますね。
ゆき:子供の頃に見た映画や本との出会いが憧れになり、その憧れがずっと原動力になっていたのかもしれません。それと、出会いも私の大きな宝物だったんだなと、今思えば感じますね。あとは思い立った時に受け入れてくれた、保護団体PAKの先輩方や仲間のトリマーさんたちにも、いっぱい助けられたので、そういう事がやっぱり宝物だったんだなって思いますね。
――トリマーさんは体力のいる仕事だと思いますが、最近、どうですか。
ゆき:きついです。年齢重ねるとともに(笑)。
――仕事が終わってからうちに帰ってからの楽しみは?
ゆき:普通ですけどビールと映画ですね。
――忙しくってなかなかできないとか…。
ゆき:はいそうですね、愚痴って(笑)
――もし1週間休みがあったら何がしたい?
ゆき:特にやること決めずに、朝起きてやりたいこと、犬を車にポンと乗せて海にいったり、山に行ったり。そんなことがしたいです。
――実現できることを祈っています。ところで、ご相談です。明日、天気が良ければ、うり店長をシャンプーしようと思っています。家で洗う時のコツはありますか?
ゆき:コツ・・二度は洗って下さい。疲れますが。
――2度洗いね。やっぱりそこに尽きますね。
ゆき:そうですね。
――何かよかったらリクエスト曲をおかけします。
ゆき:さっき話したぶぅちゃんとの思い出がいっぱいつまった、リサローブの『STAY』(楽曲はYouTubeへリンクされています)。
次世代に残せる
宝物を探して
――今探している宝物はなんですか。
ゆき:欲しいものですが、次世代に残るシェルターがほしいです。色々なタイプの、色々な特技をもっている仲間で作り上げ、運営して、それがずっと残っていけるような、そんな場所がほしいです。それから、私が今こうしていられるのも、先輩方や色々な方のおかげです。教わったことも、作ってもらった現状もバトンとして繋いでいきたい。だから、これからは、沢山の子供たちにその種をまけるような活動をして、次の世代に残せる宝物を探したいです。
――これからも応援させてください。今日はもう少しゆっくりしていけますか?
ゆき:ゆっくりして行きまーす(笑)
中山さんの保護犬猫支援店・トリミングサロン『イヌと暮らす』
インタビュー・文:白田祐子(しらたゆうこ)
番組サイト⇒『犬とあなたと珈琲と。』
Instagram:@doggy_uri
@ル・ブラン湘南
白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中。