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犬とあなたと珈琲と。Vol.77 犬から信用を失う行動とは

赤い椅子に座る茶色の犬とカフェオレとコーヒー豆
聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南 

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

お客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。今回のテーマは『犬から信用を失う行動』。犬は嘘をつく人を信用しないって本当?嘘つき判定はどのレベルから?それらを解明した実験を紹介します。私たちの何気ない行動も、犬たちから「嘘つき」とジャッチされているかもしれません。今回も保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関係を研究しているドッグカウンセラーの白田祐子がそれぞれの視点で『犬から信用を失う行動』とは。「犬に嘘と冗談は通用しない」を考えていきます。


祐子 こんにちは。ゆきちゃん、いつもありがとうございます。
ゆき こんにちわ、祐子さん。今日は福子ちゃん(写真は本文最後)と来たんですぅ。

祐子 はじめまして。福子ちゃん。かわいい!
ゆき かわいいでしょう。アイラインの濃い柴犬です。福子ちゃんは、繁殖リタイアのレスキューなので7-8歳なんですが、こちらにきて1ヶ月も経たずに、とっても素敵な出会いがあったんです。

祐子 早くもトライアル決定とか?
ゆき そうなんですー。PAK(Paws Adoption かながわ)は、保護した犬たちをまず医療ケアするんですけど、その中には「口腔ケア」も入っているので、福子ちゃんも「口腔ケア」を済ませてからトライアルに出ます。もう待ってくれている人がいるから幸せだね~。

祐子 「福」を呼ぶ福子ちゃん。幸せになってねー
ゆき 「なります」って言ってます(笑)うりちゃんもよろしくね。

犬に嘘と冗談は
通じない


ゆき そうそう祐子さん。さっそくですが、今日は前回話しかけた、あの話を聞きにやってきました。私が子供達に「犬には嘘と冗談は通じない」って伝えているって言ったら、それの面白い論文があるって。

祐子 うんうん。ゆきちゃんの名言「犬に嘘と冗談は通じない!」。ところで、ゆきちゃんはどんなときにこの言葉を伝えることになったの?

ゆき うーん、なにかあったんでしょうねぇ…。あっ、あれだ。子供たちが「おやつだよー」って、手におやつを持っているふりをして「うそ~」とか言ってあげないとか。そういう、からかって遊ぶような。そういうことをしているのを見てですね。

祐子 それ大人でもいるよね。

ゆき いますね。だって、おばあちゃんがよくやっていて、それを子供達が真似したんですよ。そういう、友達にするような「駆け引き」をやっていて「それ違うよ」って言いましたね。あと、おやつを「ホイっ」って投げるふりをするとか。

祐子 犬はフェイントをかけられるのを楽しむところがあるから、「ホイ」を1-2回やって、その後、ちゃんとあげるならいいけどね。

ゆき そうかぁ。ちょっとしたフェイントなら楽しめるんですね。でもそうやって、最後に期待に応えるならいいけど、あとから「嘘でした」とか「冗談でした」って言うのはダメですよね。一所懸命な姿を見て「可愛いっ」ていうのはわかるけど、からかって楽しいのは人だけ。顔を見れば、困った顔をしている時だってあると思うんですよね。

祐子 うん。絶対にあると思う。その「困った顔が可愛い」とか言って、わざと“からかう”のは完全に罪。その時「犬の頭の中はどうなっているのか」を知ると、「それはだめ」「罪です」っていう私たちの考えや犬の本当の気持ちをわかってくれるはず…と思うんだけど、どうかなぁ。

ゆき わかってくれると思いたいですね。

犬に嘘をつくのは
ダブルバインド?


ゆき 実際、犬の頭の中はどうなっています?

祐子 その状況でおやつを貰えるのは「約束事」だよね。でも、貰えないで「困惑」する。さらに、ここが一番重要なんだけど、こっち(犬)は困惑しているのに、なぜか楽しそうに笑われる。自分の感情と相手の反応の矛盾が複雑すぎるんだよね。

ゆき 自分の感情と相手の反応に矛盾がある。それは辛いかも…

祐子 人間なら複雑な感情になんとか筋道をつけられるけど、犬はひたすら混乱するのみ。私だって同じ目にあえば傷つく。ちょっと「ダブルバインド」に似ているかな。

ゆき 「ダブルバインド」って、はじめて聞きました!それはなんですか?

祐子 「ダブルバインド」はひとつのメッセージの中に、いくつものメッセージが存在するコミュニケーションのこと。例えば「勉強しなさい」って言われたから、勉強をはじめたのに「早く寝なさい」って言われるとか、「わからなかったら相談して」って言われたから相談したのに、「こんなこともわからないの」って言われるとか。

ゆき おー!親子間でもよくありますね。大抵の人間は「なんなんだよー」「どっちなんだよー」って、頭にきたりするやつですね。その人の言葉を信じてやったことなのに「嫌な気持ち」しか残らない。

祐子 そうそう。犬なら「おいで」って呼ばれたから行ったのに「遅い」って怒られるとか。

ゆき あー!『ドッグランで犬を呼んで、なかなか戻ってこなくても、戻って来たら褒めてあげなきゃダメです』っていう、あれですね。そういうことを繰り返していると、信用も失うってことか。絶対にやっちゃだめだ。

祐子 そういう「犬に嘘をつくとどうなるか」を検証した論文があって、この実験のベースになっているのが『指さし実験』って呼ばれる有名な実験なんだけど、それは知ってる?

ゆき 「指さし実験」知らないです。どういうのですか。
祐子 じゃあ、そこからスタート…その前に…

音楽:Sam Ock『One of a Kind (feat. Sarah Kang)』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

人が注意を向けた方を選ぶ。
指さし実験


ゆき 実験の話し、聞きたいです。

祐子 最初に基本の「指さし実験」(Miklósi,Polgárdi,Topál,&Csányi,1998)を簡単に説明すると。まず、おやつの入った容器と入っていない容器(中が見えない容器)を、それぞれ1個ずつ用意して、犬から少し離れた場所に置きます。そして合図を送って、好きな方を選ばせました。結果は?

ゆき 中が見えなくても、近づいていけばニオイでわかるはずだから、入っている方を選ぶ。

祐子 そうだよね。ニオイを手がかりに選んだ。じゃあ、次に今と同じように置いておいて、そこに実験者が現れて片方の容器を指さしてから選ばせたら?

ゆき うーん…。今、うちにいる、みみちゃんと浦君はおやつにまっしぐら。常にご自分の鼻を頼りに選ぶと思うけど…反応の良かった今日太郎のことを思い出すと、人が指さした方!

祐子 ピンポン!実験では「兎にも角にも、おやつまっしぐら」の子は被験者に選ばれないからね(笑)。さすが今日君。実験に参加したほとんどの犬たちは、指さしされた容器が途中で「あれ、こっち空っぽじゃん」って気づいても、人が指した方の容器を選んだそう。すごいよね。なかには、わずかな「顔」の向きや「目線」の動きでも、人が注意を向けた方の容器を選ぶ犬もいたんだって。

ゆき うわあ、実験とはいえ、犬が人を信じる心に感動しちゃう。

祐子 この実験の考察は3つ。
①指をさすとか、目線とか顔の向きとか、犬は私たちの動作の細かいところまで観察している
②自分に「得がない」って分かっていても、人が注意を向けた方に強く注意を向ける傾向をもっている
③人間の行動を観察して、ときにそこから自分がとるべき行動を決定する。

ゆき 飼い主さんをよーく見ているんですね。

ヒトより厳しい?
犬の嘘つき判定


ゆき でも、犬は誰の動作にも従うんでしょうかね。

祐子 それを検証した「指さし実験の」応用版(Petter, Musolino,Roberts,& Cole,2009)があって、今度はニオイの手掛かりをなくした容器を2つ用意しました。そこに実験者(仮にAさん)が現れて、事前に聞いていた「おやつの入っている方」の容器を指さした後、犬に自由に選ばせました。結果は?

ゆき 犬は人が指をさした方に影響されるんだから、当然、指をさした容器。

祐子 だよね。ニオイの手掛かりもないから、きっと、みみちゃんと浦君も指さされた方を選ぶと思う。いや、美味しいニオイがしないんだから、どっちも選ばないか…

ゆき 多分、近寄ってはみるけど…後者ですね(笑)

祐子 みみちゃんと浦君は見学してもらおう。因みに、うりも私以外の人からはおやつを出されても見向きもしないから、実験には参加できない(笑)

続きね、今度はAさんが、どっちにおやつが入っているのか、容器の中を犬に見せてから、おやつの入っていない方の容器を3回指さしました。それから蓋を閉めて、容器をシャッフルして片方を指さしました。これは?
ゆき 指をさした容器

祐子 同じことを2回繰り返しても、指さした方を選らぶ?
ゆき 選ぶ

祐子 この結果。Aさんが指をさした容器を選択した犬は激減したんだって。
ゆき えー。なんで?犬は指さしに反応するのに?

祐子 片方の容器がカラなのは犬もAさんも見ている。それなのにAさんは最初に空っぽの容器を指さしたから信用を失っちゃった。
ゆき たったそれだけで?

祐子 それだけでなんだね。犬に選ばせるときは容器をシャッフルしているから、指をさした容器にはおやつが入っているかもしれないし、ニオイの手掛かりもないんだから、指さしに影響されそうな気がするんけど、もうダメ。

ゆき もうダメかぁ。「3回嘘をつくと信用を失う」って言うけど、「たった」3回じゃないんですね。でも今日君なら、やっぱりAさんが指さした方を選ぶと思うなあ。私も祐子さんが指し示す方を選ぶ。

祐子 えー!そうか…「関係性」によって、結果は変わるかもしれないってことか…。実験ではそういうバイアスがかからないように、指をさす人は知らない人なんだよね。犬は相手が知らない人であっても、指をさされた方に注意を向けるのは変わらないんだって。それに、もし飼い主で実験してみて「飼い主は信用を失いました」って結果になったら、とんでもないことになる。

ゆき きゃー!それは避けたい。カラの容器を何度か示しただけで、Aさんは多くの犬に「あいつは信用できない」って烙印を押されちゃった。飼い主でも、それをずっと繰り返したら信用されなくなるかもしれない。

祐子 ねっ。この実験でわかったのは、犬は「経験」や「観察」した結果から、正当性や信頼性(ここでは正直で信用できる人物かどうか)を評価しているってことだよね。

さらに、この実験には続きがあって、常に報酬のある方を指さす実験者「正直な人」と、常にカラの容器を指さす「嘘つきの人」の2人を登場させて、その2人が犬の訓練をしたら、正直者には従うのに、嘘つきの指示には従わなかったそうです。

ゆき よく考えたら当たり前の話しなのに、犬にそういうことは「影響しない」って、思ってしまっている部分はあるかもしれない。

祐子 本当にそうだね。犬をみくびっちゃいけない。

一貫性のなさは
嘘に似ている


祐子 こうやって聞くと「じゃあ嘘をつくのはやめよう」とか「そういう意地悪はしないから大丈夫」って思うだろうけど、こんなあからさまじゃなくても、無意識に似たようなことをしているかもしれない。
ゆき 無意識に?

祐子 そう。例えば、犬の飛びつきへの注意を「普段着なら許すのに、余所行きのときはダメ」とか、「今日はいいのに明日ダメ」「家ではいいのにカフェではダメ」とか。こういう一貫性のない接し方。その時々で「OK」や「だめ」を繰り返していたら…

ゆき そういうことかぁ。そこの線引きは、人間ならではの「感覚」を押し付けていることになっていたんですね。当然、信頼を失って話しをきかなくなる方向ですね。

祐子 なかなか難しいけどね。犬たちの観察眼は鋭いから「うちの子、全然いうことききません」ってことがないように、私たちは犬と接するとき、もう少し注意深くなる必要があるかもしれないね。

おやつの量より
笑顔が嬉しい!


祐子 そうだ!「指さす人が飼い主だった場合」っていうのを思い出しました(PratoPrevide,Marshall-Pescini,&Valsecchi,2008)

ゆき おーありましたか。どんなのですか。

祐子 片方には1個、もう片方には8個のおやつを載せたお皿を用意しました。これは人も犬も見えている状態。そして、少し離れた場所から犬を呼んで好きな皿を選ばせます。どっちを選ぶ?
ゆき 8個の皿

祐子 ピンポン。それだけですごい気もするけどね。次に飼い主が1個の皿を持ち上げて、犬に向かって大きく喜ぶ動作を見せた後に選ばせると?
ゆき 1個の方を選んでほしい!

祐子 そう!ほとんどの犬が1個の方を選んだそう。犬は私たちの笑顔をポジティブな情報と捉えて、あるいは笑顔に影響を受けて、たとえ自分には不利益だと分かっていても、笑顔を見せた方を選ぶ。「犬は笑顔が大好き」っていうことがわかった実験。これは嘘をついていないしね。1粒はもらえる。犬はおやつを量よりも笑顔でもらえるほうが嬉しい!

ゆき 泣けますね。肝に銘じます。

音楽:James Ingram『One Hundred Ways』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

身振り手ぶりを
もっと使いこなそう


ゆき いやぁ、面白いですね「指さし実験」。そこから色々なことが検証されていく。

祐子 普段の暮らしの中でも意識してみるといいよね。ごはんを食べさせるときに「どうぞ」ってごはん皿を指し示してあげると、食べてくれやすくなるし、隣に来てほしいとき「おいで」って呼ぶだけじゃなくて、ポンポンって来てほしい場所を叩くと走ってくるとか。後ろをついてきてほしいときは、自分のお尻を叩きながら歩くとついてくるとか、あるよね。

ゆき そういえば、ワイマラナーのぶぅは晩年耳が聞こえなかったんだけど、私の指の動きで反応してくれましたね。指でこうやると、そっちを見たり。そうやって私の話をよく聞いてくれた。だから、耳が聞こえなくなっても、すごく頼りになったし、私も頼ってもらえてよかった。

祐子 わぁ、すごい!しっかりとゆきちゃんに注目をして、アイコンタクトもとれているってことだね。なかなか意思の疎通がとれない子は、アイコンタクトをとれない傾向が強いからなぁ。

ゆき アイコンタクト。そう思います。ぶぅはとっても重くて力が強かったから、抱っこやハンドリングに頼るより、とにかく自分で動いてもらわないと大変だったので必死でした。

アイコンタクトをとる練習のために、おやつをあげるときに「顔の前におやつを持ってくるといい」とか聞いたことあるけど、あれってどうですか?あと、パックウォークに参加したとき、参加者の人が歩いているときに「うちのこアイコンタクトを取ってこないんですよね」って言ったら、「犬同士はそんなにジロジロ顔を見ながら歩かないから」ってトレーナーさんに言われていて、「アイコンタクト」っていう括りも、考えると難しい。

祐子 確かにね。アイコンタクト。じっと見つめるとか、サッと合図を送る「目配せをする」とか、色々な種類があるよね。それについて話しはじめると、閉店時間になっちゃうのでまた今度。
ゆき えっ!また今度(笑)

祐子 それと「犬は意地悪な人が嫌い」っていう実験も紹介したいから、それもまた次回。
ゆき 意地悪な人が嫌い?意地悪がバレてるってこと?その話しも楽しみです。

祐子 時間はまだ大丈夫ですか。福ちゃんは?
ゆき 福ちゃんはチロチロ見ながら、わたしを待っていてくれています。信じてくれているんですねー。

祐子 目を合わせて「それでいいよ」って笑顔でうなずいてあげる。これで犬は安心、人はホクホク。アイコンタクトはいいよねー。さて、今日も楽しい犬談義のお礼にもう1杯いかがでしょうか。
ゆき はーい。いつも、ありがとうございまーす。

今日のわんこは柴犬の福子ちゃん

番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』 
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』 
放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagram 
ル・ブラン湘南のInstagram 


白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。

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