友人の愛犬。不妊手術をせずモヤモヤ…
今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組、宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』に寄せられたお便りにお答えします。
理由は子供が欲しい、
自然が一番と言います
今回のお便り:ツバメスキーさんからいただきました。
祐子さん聞いてください。犬友達のわんちゃん(3歳のコーギー)は不妊手術をしていません。そのわんちゃんが発情期のときは、周りの男の子は興奮するので、わんこと飼い主さんが、はぁはぁ言いながら追いかけてきて、なんだか気の毒です。「どうして不妊手術しないの?」と聞くと「いつか子供がほしいから」「自然が一番」と言います。これってモヤモヤ案件じゃないですか?うちは保護犬ですが、不妊手術をしてから譲渡されました。保護犬は不妊や去勢をするのがスタンダードですよね。祐子さんなら、なんて声をかけますか。
🐾🐾🐾
ツバメスキーさんありがとうございます。犬の不妊去勢。実はこれに関連するご相談はとても多いです。病気の予防や社会性の観点から、子犬のときに不妊去勢手術を施すことは定着してきましたが、ここ最近また「しない派」が増えてきていると聞いています。保護犬・保護猫の場合は「これ以上不幸な命を増やさないため」という大きな理由がありますし、環境省や各自治体など、国や行政機関も犬猫を飼ったら不妊去勢手術をしましょうと謳っています。
犬たちは今、
自然な状態だろか?
ツバメスキーさんのお友達の理由「いつか子供を欲しい」というのは、ちょっと現実的ではないですよね。あと数年すれば年齢的にもその理由を口にすることはなくなると思います。
じゃあ、「自然が一番」というのはどうか。「しない派」の理由も「人間のエゴだから」というものが多いそうです。そのような意見がでることには理解できます。ただ、もう少し違う観点からも検討してもらいたい、と私は思うのです。
たとえば、今、私たちと暮らしている犬たち、この状態はそもそも「自然な状態」なのでしょうか。ほとんどの犬の姿かたちは人間が改良したものです。子孫を残す「種の保存」でさえ、帝王切開をしなければ命を落とす犬種もいますし、一般家庭で暮らしていれば、繁殖の機会はありません。
人と暮らす生活スタイルも「自然」と言えるかどうか。人間が手を加え、人間が管理をしているのですから、病気や発情期におけるストレスを回避する不妊去勢手術を施すのは、人間の責任と言えるのではないでしょうか。
病気の予防や
穏やかな生活のため
「自然が一番」というのはカラダのことを指している場合が多いですよね。病気じゃないのに体を切るのは不自然だ、臓器をとるのは人間の都合だという意味だと思います。実際、手術には痛みを伴う場合もありますから、可哀想なことだと思います。
でも、不妊去勢をしていないとオスは前立腺、メスは子宮の病気の罹患率は非常に高いことがわかっていて、ある獣医は「罹患しない方が少ない」とさえ言います。ですから、発病率の高い「病気の予防」と「人間のエゴ」という考えを天秤にかけたとき、どちらが犬のためになるか。そこが一番大切なポイントだと思うのです。
また、ツバメスキーさんも書いていますが、ヒート中(発情中)のメス犬のオス犬に対する興味関心度や、ヒート中のメス犬のニオイを嗅いだことによるオス犬の興奮と執着は驚くほど高い場合があります。夏場の暑い時期や心臓に負担をかけたくない病気を持つ犬は、心拍数があがり呼吸が速くなる状態を避けるべきですし、食欲が落ちて気分にムラがでるなど、飼い主が心配になることもあります。
万が一のときや
動物の福祉も考えよう
災害時などには発情中のメス犬がいると周囲の犬のストレスになるので、避難所では受け入れを拒否することもあります。さらに、災害時にはぐれてしまったり、知らない犬と接触する機会もあります。そんな時、未手術の犬はどうなるでしょう…。
動物の福祉という観点から説いたとき、手術の重要性を「知らなかった」と答える人は多いです。どのようなことでも「私はこう考える」はとても大切なことですが、動物相手の場合、私たちの側の考えだけではなく、「動物を主体」に考えてみることも必要。私はそうお伝えしたいです。
どうでしょう。ツバメスキーさん、少しは参考になったでしょうか。じめじめとした日が続きますが、お友達とのお散歩を楽しんでくださいね。また、お便りおまちしています。
この記事はFM831レディオ湘南:radio café『犬とあなたと珈琲と。』(第1.第3土曜16:00~16:29放送)2024年6月15日放送分を加筆修正しました。
本記事は「こちら」から視聴可能(後半20分以降です)
レディオ湘南は世界中どこからでもワンクリックで視聴可能です。
番組サイトにもぜひ遊びにきてください→『犬とあなたと珈琲と。』
◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。
文:白田祐子(しらたゆうこ)
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白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラ「ル・ブラン湘南」代表・ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。パートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
保護犬猫の譲渡会開催や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演、2022年4月から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。