オオカミと犬は同じか?
今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組“宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』”に寄せられたお便りのご相談にお答えします。
オオカミは
どこで犬になったの?
ご質問内容:オオカミ少年さんからいただきました。
祐子さん、うり店長、こんにちは。犬の先祖はオオカミと言いますが、犬とオオカミとは違った印象をもちます。そして、オオカミは今も生息していますよね。どこで狼は犬になったのでしょう。オオカミと犬は同じなのか違うのか、とても不思議に感じます。どうなのでしょう。
🐾🐾🐾
はい。犬と狼の関係についてですね。犬は人が最初に飼いならした動物で、旧石器時代の4万~2万年前にオオカミを家畜化したとされています。でも、人が出会ったときは既に犬であった説や起源についても諸説あって、実は未だに解明されていないそうです。理由は原種となる動物が全て絶滅しているから。
日本犬が最も
オオカミに近い?
犬の先祖が狼であり、犬と狼の遺伝子も99%一致することはわかっています。
さらに、2022年9月、総合研究大学院大学のチームが「東アジアで消滅したハイイロオオカミの集団が、現代の犬の起源である可能性が見えてきた」と研究結果をまとめました。簡単に言うと、犬に最も近いのはニホンオオカミだということです。
実際、二ホンの犬種である秋田犬や柴犬の方が、西洋の犬よりもオオカミに近い遺伝子を持っていることがわかっています。
オオカミを育てても
犬にはならない
犬とオオカミは遺伝子がほぼ一緒。
じゃあ「オオカミ=犬」なのか、と言われると、それは違うんですね。あくまでも狼は狼、犬は犬です。
たとえば、オオカミを生まれた時から育てても犬のようには育ちません。2003年の実験ですが、人が育てた生後3週から5週齢の犬と狼を比較すると、犬は人に近づき、人の顔を見つめ、尻尾を振ったり、鳴いたりして人とコミュニケーションをとる様子が見られたそうですが、オオカミにそれらの行動はなかったそうです。
そして、檻の中や蓋をしめたケースの中に肉を入れたとき、オオカミは自力で必死に取り出そうとするのに対して、犬は人の方を見て助けを求めたそう。オオカミは独立心旺盛ですが、犬は人を頼りにする生き物なんですね。
オオカミと犬は
行動や学習の仕方が違う
オオカミと犬の行動は違う。
だから、オオカミの行動をもとに考えられたしつけ方の一部、例えばマズルコントロール、などは、実際は犬には相応しくなかったという事がわかっていただけるのではないかと思います。研究を進める中で、過去の方法は誤りだったと認め、知識や方法を更新していくことは大切なことです。
それから、脳の大きさも同じ体重の犬とオオカミでは犬の方が20~25%狼よりも小さいそうです。
見た目も、犬は狼に比べて歯が小さくて、垂れ尾や巻尾もいて、よく吠えて、成熟してもよく遊び、マーキングをします。狼は吠えないし、成熟後は遊んだりせず、トレーニング性も低く、何事も自力で頑張って自分で判断します。
犬と狼は遺伝子的にも似ていて、同じ祖先をもつけれど「人間と共に暮らす事を選んだ犬」と「野生で暮らすと決めたオオカミ」。それぞれの環境で生き抜くために、見た目も習性も異なる動物となっていったんですね。
どうでしょう。オオカミ少年さん。
少しは参考になったでしょうか。同じ犬科の動物でも家犬と野生動物では習性が異なります。オオカミと犬を交配させてオオカミ犬を作ったり、ペットとして飼う。それはどういうことなのか。そういうことも考えてみるといいかな…って、ちょっと思いました。またお便りお待ちしております。
この記事はラジオ番組:radio café『犬とあなたと珈琲と。』(毎週金曜16:00~16:29/FM83.1Mhzレディオ湘南)の2022年11月4日放送分を修正しました。
本記事は「こちら」から視聴可能。後半部分にお便りのコーナーがあります。
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◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。
文:白田祐子(しらたゆうこ)
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白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中、2022年4月(毎週金曜16:00~16:30)から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。