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犬とあなたと珈琲と。Vol.23 福室 貴雅

聞逃し配信中
ミキサー:レディオ湘南 高橋優佳

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(毎週金曜 16:00~16:29)放送中

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。ここで“宝物”の話をすると探し物が見つかるとか?…オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の愛犬“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

今回のお客様は『一般社団法人ソーシャルアートラボ』代表理事の福室貴雅さん。ソーシャルアートラボは主にNFTを活用して障害者アートの販売を行う法人です。アパレルメーカーのデザイナーとして勤務後、自社ブランドを立ち上げ、東京コレクションに参加経験もある福室さん。「3年で芽が出なかったら諦めよう」そう決めていたのに、簡単に認めることはできなかった。なぜ、今“作品を作る側”から“売る側”になったのか。そこには時代の変化を敏感に感じ取るアンテナとデザイナーの視点がありました。宝物は「失敗から生まれたいま」。いつも明るい福室さんの新たな一面を垣間見た瞬間でした。


――こんにちは!福室さん、ようこそお越しくださいました。

福室貴雅さん(以下 福室):こんにちは。いつも「福ちゃん、福ちゃん」って言われていて、調子が出ないのでいつも通りでお願いしていいですかね。

――はい。わかりました。福ちゃん、いらっしゃいませ。
福室:えーと、うり店長は?お昼寝中だね…。

一般社団法人ソーシャルアートラボとは

――福ちゃんが立ち上げた一般社団法人ソーシャルアートラボはもうすぐ1年経ちますか?

福室:そうだね。去年の11月に設立したので11月でちょうど1周年。設立に関してはリーガル面が本当に大変で苦労の連続だったけど、今はやっと、少しずつ思い描くようなカタチになってきている感じかな。

――ソーシャルアートラボは「NFTを活用して、障がい者アートの販売を行う法人」という、解釈でいいですか。
福室:うん。他にもやっているけど主な事業はそうなります。

――NFTという言葉も最近はグッと耳にするようになりましたね。
福室:デジタル音痴の犬山さんも口にする位だから、結構みんなも耳にしているんだろうね。

――犬山さんって言うのは私のことですよね
福室:うん。

NFTってなに?


――ちょうど先日8月31日が締め切りだった『SHONAN NFT ART CONTEST』。もう一つの「湘南」をブロックチェーン上に造り上げていくアートコンテストが行われていて、NFTも随分身近になったと思いました。NFTはデジタルデータに希少価値をつけることができる、そういう存在なんですよね。

福室:大枠そんな感じで合っています。デジタルの世界だとコピペされてしまって「どれが本物か」や「所有者は誰なのか」など、わかりにくくなってしまっていると思うんですよ。故にフィジカル作品‥現物作品に比べて、デジタル作品は価値が低く見られがちかなって思っているんです。そこでNFTの出番。NFTって分かりやすく言うと「ネット上に登記する」ようなもの。例えば、会社を設立した際や家を建てたりするとき登記するよね?いつ会社を設立したとか、代表理事が誰だとか。それを映像に応用した感じです。

例えば、一次流通の際はもちろんだけど、その後に所有者が移る。いわゆる「転売」されたときにも作者に利益が入るという契約を盛り込んでおくと、転売時でも、作者にも売上の何%が入ってくるなど。そういうことを自動的に執行できる仕組みもあるんですよ。

――作者に利益を持たせる仕組みがある。単純にそういう風に捉えておけばいいのでしょうか。

福室:そうだね。あとは権利の保護とかもありますよ。

アートの世界を拓いた
マイクロプラスチック


――福ちゃんは、そもそもアート支援の考えが先にあったんですか。それともNFTの活用が先?

福室:自分はエンジニアでないので、デジタルの世界で「0」からビジネスを創り出すことはできないと思っていたんだけど、なにか自分でもできる、使える仕組みができた時には、「ソーシャルビジネスで起業したい」と、ずっと思っていたんです。そうしたらNFTやブロックチェーンという仕組みができた。そういう感じだね。

――それがどこでアートそして障がい者に結びついたのでしょう。

福室:そもそもは、2019年に父が他界して高齢の母が独りになってしまったので、生まれ故郷の藤沢に戻って来たんです。高校を出てからずっと東京だったのでなんか“都落ち”した感じで当時は嫌だったんだよね。でも、恐らくこれからは「湘南で生きて、死んでいくのかな」って思っていて、それなら何か「社会貢献的な活動ができないか」と考える日々が続いていたんです。そんな矢先、SNSを通じてある社長に出会ったんです。『カエルデザイン』という、砂浜で回収したマイクロプラスチックを障がい者がアクセサリーにアップサイクルするブランドの社長さんなんです。そのアクセが凄く可愛いくてね!犬山さんにも写真みたことあったよね?

それで「湘南でマイクロプラスチックを回収して、送らせてもらったらアップサイクルしてくれますか?」と聞いてみたら快諾してくれたので、自分で人を集めてビーチクリーンをするようになったんです。今は犬山さんも同じ団体でビーチクリーンしているけど、もともと自分でやっていたんです。

そんなことをしていたら、自分も「マイクロプラスチックを使って何かできないかな」って…そこで思いついちゃったのが『スーラの点描画』なんだけど。わかる?

――はい。フランスの点描法を発明した画家。作品名は覚えていませんが、湖のほとりで憩う人達の作品で、見たら「あーっ」って分かるあれかな

福室:そうそう、まさにそれ。美術の教科書に絶対載っているあれね。あれをマイクロプラスチックで模写したらなんか凄いことになるなって思ったのよ。

――プラゴミが海でもまれて、小さい球になったマイクロプラスチックを徹底的に拾って、コツコツと貼っていく。

福室:そうそうそう!最初は自分でやろうと思ったんだけど、そんな根気もないし無理だなって。それで、もしかしたら、物の並べ方に強いこだわりを持つ人が多いと言われている自閉症の方とかに制作をしてもらえたら…そして、完成した作品を販売してお金にできたら、障がい当事者の経済的自立支援なんかができるんじゃないかって。ここで、アートと障がい者が繋がった感じだね。だからNFTは後からついてきましたって感じ。


福室:ところでこの店、なんで『TAKARA CAFÉ』って言うの?宝製菓の「お菓子食べ放題」だったりとか?

――それ案外いいかもしれないですね(笑)TAKARA CAFÉはここで宝物の話をしたら、失くした宝物が見つかったり、新しい宝物に出会えたりする。そんな場所になるといいなと思って付けた名前なんです。

福室:ん-、宝物ね。あえて考えたことなかったけど、俺の宝物はいっぱいあるような…ないような…。

――もしよかったら福ちゃんも宝物の話きかせてください。

パリコレデザイナーに。
夢破れて


――福室さんの宝物はなんですか。
福室:「失敗から生まれた今」かな。

――失敗というのは…
福室:若いころ夢があって…それが破れて、仕事も人間関係も一遍したんですよ。

――夢が破れた…

福室:若い頃はレディースアパレルデザイナーになりたくて、パリでファッションショーをすることが夢だった。そういうと少し現実味がないかもしれないけれどね。大学の3年間は昼間は授業を受けて、夜は文化服装学院に通う二足の草鞋でした。バイトもしながらだったからすごく忙しかったんだけど、なんとか両方卒業してレディースアパレルの企業に就職したのね。今は“ジェンダーフリー”とかあるけれど、当時はレディースアパレルって男が少ないから、女社会に入って結構苦労もあったよ。

でも、好きだから続けて、2005年に起業して自分のブランドを作りました。デザインから製造、展示会で見てもらって買ってもらう。直営店は持てないから、小売店に卸していたんだけど、実は東京コレクションには2回程出たことがあるんですよ。

――びっくりの経歴。

福室:ブランドを立ち上げたときには「3年で芽が出なければ辞めよう」って思っていて、まぁ、結果的に芽は出なかった。でも、なかなか簡単には諦めることができなくて、実際、OEMの注文はあったから、執着心というか、ずるずると10年間くらいはやっていた。でも…やっとね「自分には才能がないんだ」って認めることができて。認めたくはなったけど、しょうがないよね。

洋服は
既成概念への叫び!


――そもそもアパレルを目指したきっかけは?洋服が好きだった?

福室:もちろん洋服も好きだったけれど、高校の頃ってなんかひねくれるじゃない。斜に構えたり、なんかモヤモヤしたりとかさ。でも、社会とか既成概念に対して、叫ぶ手段がわからなくて。人によっては音楽をやったり、小説書いたり、映画作ったりとかあると思うんだけど、そういうのは好きだけど、ちょっと自分には出来そうな気がしなかったんだよね。

――もやもやのはけ口の表現活動として…
福室:まさにその通りで、その時に山本耀司さんや川久保玲さんに出会って、なにか洋服が響いたというかね、腑に落ち感じだったんだよね。

――「黒の衝撃」ですね。アバンギャルドでこれはすごい!と。
福室:そうそう。それで二人とも慶応大学に行っていたから、「僕も大学に行こう」って思って。慶応には行けなかったけどね。そして、耀司さんが文化服装学院出身だから「俺も行こう」って、そう思ったんだよね。

――まずは、似た経歴を辿ろうとしたんですね。
福室:尊敬していた二人のデザイナーがそうだったので、文化に入れば「自分もそうなれるんじゃないか」「俺にもできるんじゃないか」って、そんな気がしたんだよね。その頃は。

――どんな服を作っていたの?
福室:バリバリのアバンギャルドな服かと思いきや、結構「かわいいめ」の洋服を作っていました。

――アパレルと決着をつけてからは、今まではどこで潜伏を
福室:色々やったよ。飲食も多かったけどホテルマンとか。

――福ちゃんはサービス精神旺盛だし、料理も毎日していますよね。
福室:料理は楽しいし嫌じゃないんだよね。自分が作ったものを「美味しい」って言ってくれたら嬉しいし、お酒好きだから、酒飲むには旨いツマミも欲しいしさ。昔は「男子厨房に入らず」とか言われていたけれど、親父が料理することもあって美味かったし、親父の親戚は料理人とか大工とかモノづくりの家系で、多分、俺はそういう血を引いているのかもしれないね。何か作るのって結構好きだから。

夢を託し
今の自分が好き!


――今は自分で作品を生み出すのではなく、アーティストをサポートしていく側になったんですね。

福室:そうだね。自分ができなかったから「投影させている」「夢を託している」そういう部分もあるのかもしれないね。

――自分の投影であるからこそ、真剣に本気で作者を応援できるんだと私は思います。作品が売れたら売上はどのようなシステムになっているんですか。

福室:基本74%は作家さんに還元しています。イベントなどで費用が嵩むときは50%まで下げることもありますが、作家さんからは登録料とか出展料みたいなものは、一切いただいていないので納得はしてもらっているかなと思います。

――じゃあ、全然稼げないし「作者のために」という感じ
福室:カツカツだね。本当にカツカツ。でもね、一点でも多く売って喜んでもらえると嬉しいから頑張っています。

――カツカツだけど「失敗から今」が生まれて…それが宝物ということは今の生活や自分に満足している。

福室:うん。結構大満足。「いつか名を馳せよう」とか「何かをしないと」「歴史に名を残したい」とかさ、そういうのがなくなったから、諦めがついたというか、気が楽になったね。趣味もあんまりないし、今は仕事をしてお酒飲めればいいって感じだね。

――今の自分が好き?
福室:うん。好き好き、大好き。地元に帰って来てからは何もかもが「一からスタート」だったんだよね。仕事も人間関係も。だからね、本当お世話になって、いい人ばかりだし。そういうことが自分を作ってくれていると思うし、そういう人間関係も宝物だよね。

メタバースもリアルも
頑張ります


――最近、また新しいことを始めたとか

福室:そうそう!最近メタバースって言葉も良く耳にしません?VRゴーグルつけてやるやつ。VRゴーグルつけてメタバースの中入ると本当凄いのよ。だから、メタバース内にバーチャルギャラリーを作ってアート作品の展示なども始めてみました!

――どうやると観られるんですか?
福室:犬山さんVRゴーグル持ってないでしょ?

――もちろん持っていません(笑)
福室:持っていなくても、パソコンやスマホがあれば観られます。

――何か入れるところを教えてもらえると私も観られる…
福室:そうそう。

――リアルはどうですか。
福室:ちょうどいま、北千住マルイで『インクルージョンフェス』をやっています。4階にリアルの作品を展示しているのでぜひ見に来てほしいですね。11日までやっています。

――9月11日まで北千住マルイの『インクルージョンフェス』ですね。覚えておきます。では、ここで一息、何かお好きな曲をおかけしましょうか。

福室:『TAKARA CAFÉ』でお話しをさせてもらって、自分のルーツというか、昔を振り返るいい機会になったので、若い頃観た映画で印象に残っている『ニューシネマパラダイス』から『愛のテーマ』をお願いします(楽曲はYouTubeにリンクされています)。

アート作品の
原石をみつけたい


――今探している宝物はなんですか。

福室:嫁さんかな…といいたいところだけど、アート作品の原石みたいなのを見つけたいよね。そのためにも、俺の錆びついちゃった感性を磨き直さないと…と思っています。

――お嫁さんも原石も両方見つけていきましょう!今日はお話しを聞かせていただいたお礼にもう一杯いかがでしょうか。

福室:ありがとうございます。それじゃあね、お言葉に甘えて「ビールの濃い目の大盛で!」

福室さんの番外編


――障がい者のアートだけではなく、ファッションショーのお手伝いもしていますよね。
福室:そうなんです。当法人の理事をしている宮澤という高校の先輩がいるんですが、彼女が逗子で障がい当事者が古着を利用して自らデザインを考え、縫製をして、更にファッションショーをする『みんでファッションショー』というイベントを開催しているんです。

――それは楽しそう。
福室:視覚障害や聴覚障害、車椅子ユーザーや知的障害、片麻痺、脳性麻痺など、個性あふれる面々が参加しているから独特でね、面白いよ。


――宮澤さんはウェディングもされていましたね。
福室:そうそう。車椅子でも華やかに着られて動きが自由な“車椅子ウェディング”をメインに、障害がある方の結婚式のプロデュースや施工もしているんだよね。今後は『HOPE WEDDINGS〜結婚式をすべての人へ〜』という名称で結婚式をプロデュースしていく予定です。


――障害のあるなし関わらず、結婚式の選択は自由ですものね。
福室:そうだよね。会場内の段差や着替えなどのバリアを解消して、自分らしい結婚式ができるといいよね。アパレルは辞めちゃったけど、私を曲がりなりにも育ててくれた業界ですし、アパレル業界に何かしら恩返しできないかなって前から思っていたので手伝わせてもらっているんです。

――これから『みんなでファッションショー』の開催予定はありますか。
福室:11月に予定しています。本番は11月25日に逗子文化プラザのさざなみホールで17時頃より開催。詳しくはFacebookで確認してください。

一般社団法人ソーシャルアートラボのホームページは『こちら』
みんなでファッションショーの詳細は『こちら』
番組サイト⇒『犬とあなたと珈琲と。』

インタビューと文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagramは『こちら』
ル・ブラン湘南のInstagramは『こちら』

白田祐子(しらたゆうこ)

プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中。

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