ブログ

  1. HOME
  2. ブログ
  3. ラジオカフェ
  4. 犬とあなたと珈琲と。Vol.117 ブリーダーと繁殖場の違い
 

犬とあなたと珈琲と。Vol.117 ブリーダーと繁殖場の違い

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南 

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

11月15日のお客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。今回のテーマは「ブリーダー」と「繁殖場」の違い。先進国で犬猫を店頭販売しているのは日本だけです。そして、その命は「繁殖場」と呼ばれるところで、犠牲とともに産まれています。最近「繁殖場崩壊」という言葉を耳にしませんか?そして、そこに取り残された命を救うのが保護団体。その流れを当り前と感じていませんか。想像してみて!ペットショップの犬猫や保護犬猫たちはどこからきたのか。その想像力を多くの人たちがもっともっと膨らますことができれば、日本の歪んだペット流通もきっとかわるはず。今回も保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関わりを探究しているドッグカウンセラーの白田祐子がそれぞれの視点で考えます。


祐子 こんにちは。ゆきちゃん。いつもありがとうございます。

ゆき 祐子さん、こんにちは。今日はチロリと来ましたー。うりちゃんとうるるちゃんも、よろしくねー

祐子 よろしくわんこ!柴犬のチロリちゃん。女の子?

ゆき そうですー。5-6才くらいかなぁ。性格もとーってもいいので、どこのご家庭でも飼いやすいと思うんですけど…フィラリア陽性なんです。陰性になるまで私たち保護団体で協力しあって、普通の家庭を経験させながら、投薬治療を続けていく…。そういう段階です。もちろん症状によっては、りうちゃんのケースみたいに完治しないで…看取りという場合もあるけど、チロリは明るい希望をもって治療中です。

祐子 チロリちゃん頑張ってるね。チロリちゃんは繁殖場崩壊だっけ?

ゆき はい。この前一緒にきたサブローと同じところです。繁殖場から引き取り屋が入って、そこからレスキューですね。

祐子 それで繁殖場の話しとか、色々話したい事があるって言ってたものね。

ゆき そうなんですよー。聞いてください。っていうか、祐子さんはどう思います?って感じなんですけど…。

*中山ゆきさんが所属する保護団体の譲渡会の情報は「PAK」(Paws Adoption かながわ)

繁殖場払い下げ犬は
いい犬?の大きな誤解

祐子 さぶちゃんやチロリちゃんみたいに、繁殖場の廃業や縮小で置き去りにされたり、お世話を放棄されて餓死寸前からの引き取り…そういうのが増えているって話し。そして、最近は繁殖場がどうかなったら、すぐに「保護団体の出番だ」っていうのが、当たり前のような風潮になっていやしませんか?ちょっとモヤモヤ…って

ゆき はい…。あと、最近気になるのが「この子は繁殖場から来た子です」って言うと、「じゃあ、血統もいいし、いい犬なんだ」って言われることもあって…ん~⁉…って。でも、なんて説明するといいのか…どこから話すと理解してもらえるんだろって。入口はどうあれ、保護犬に興味を持ってもらえることはいいことだから、サッと聞き流してもいいのかもしれないけど、最近は保護犬も増えているので、それなら、もう一歩踏み込んだところまで、知ってもらいたいなって。

祐子 そうね…。もう一歩先まで知ってもらいたいって部分はあるよね。そうじゃないと、保護犬がトレンドで終わってしまいかねない…。じゃあ、まずは、最近気になるそのセリフだよね。「繁殖場から来たならいい犬なの?」って。確かに私も聞いたことがある。なので「ブリーダー」と「繁殖場」の違いから整理する必要があるね。
ゆき なるほど。すごく大事なことなんですが、ここは「知ろうと思う人」ではない限り、知ることがないところですね。

祐子 そうだね。今、目の前にいるかわいいうちの子がどこから来たのか…って、知らなくても愛は変わらないしね‥。それに、私たちもちょっと前までは「購入するならペットショップよりブリーダー」って言っていて、「繁殖場」も言い代えれば「ブリーダー」な訳で。じゃあ「繁殖引退犬なら、あなたたちおススメのブリーダーからの払い下げでしょ?」「そんな悪くないんじゃない?」って、なってしまう…のも、わからなくはない。ペット業界の闇もどんどん変化しているから、発信する方も受け取る側もどんどんアップデートしていかないと、勘違いしちゃう。

ゆき そうそう…。過渡期はそういうものなのかもですね。ペット業界の闇の変化かぁ。アップデートしたお話しをしていきたいです。

ペットショップの犬は
繁殖場出身


祐子 「ブリーダー」と「繁殖場」。その差は犬の一生を大きく左右するし、その違いを理解することは、私たち消費者が犬を迎えるうえでも、とっても重要なこと。だから、まず知ってほしことは、ペットショップに並んでいる犬たちは、多くの場合「繁殖場」という場所から来ているってこと。繁殖場っていうのは、犬を繁殖させて市場に卸したり販売したりする施設。そういうビジネスを「ブリーダー」って呼ぶなら、「善良なブリーダー」と「悪徳(劣悪)なブリーダー」が存在していて、後者の「悪徳ブリーダー」「劣悪ブリーダー」が「繁殖場」って呼ばれる。そうやって区別しているよね。

そして、「繁殖場」は、大量生産する利益優先主義なので、動物の福祉、犬の健康や幸せは後回し。と、いうか、生まれた子犬も母犬もいわば「使い捨て」のところが多い。ペットショップ、とくに大手のチェーン展開しているペットショップは、その「繁殖場」から来た犬を並べている。これが、今の日本のペット流通の現実。そもそも「繁殖場」と「ブリーダー」は、目指す目的や動物の扱い方が根本的に違う訳だけど、ゆきちゃんはブリーダーに勤めていたこともあるじゃない…

ゆき はい。「善良なブリーダー」の方ですね。特定の犬種、オーナーが惚れ込んだ犬種の健康を守りながら、時間と手間と愛情をかけて、いい血筋、その犬らしい血筋を残すことを目的とする犬の専門家ですね。わたしがいた善良なブリーダーは、一頭、一頭に名前をつけて呼んでいたし、うちの子として心身ともにしっかり見てあげていましたね。2週間に一回はシャンプーして「あーここに禿があるなぁ」とか、普段と違うところもちゃーんと見て手間をかけていました。

繁殖させるときも、海外から何百万もかけて取り寄せることもあって、惚れ込んだ犬種のことを勉強して理解して、そうやって血統を守りながら、さらに向上させていく。且つ、最後まで責任をもって面倒をみます。当然、年老いたり、病気をしたりとか、そういうことも購入者にちゃんと伝えます。こんな病気になりやすくて、寿命は平均してみているとこれくらいになります…とかまで。

祐子 うん。遺伝的な疾患を避けるためにも、犬の健康管理を徹底して、母犬に無理な繁殖をさせないし、その子の幸せな一生を考えて繁殖を行う「命の出発点」を大切にしているっていう印象かな。でも繁殖屋は親犬が疾患を抱えていて、それが遺伝するってわかっていても、子犬を産ませてるよね。

ゆき そうですよね。利益優先主義。あと、施設にはランもあってしっかり運動もさせています。繁殖場から来た犬たちは、なかには元気で健康な子もいるけど、ケージから出たこともない子も多くて、まだ若いのにヨボヨボしてたりしますよね。

祐子 狭いケージの中で立つこともできなくて、骨が曲がってしまっていたりね。あとは?

ゆき とにかく、一度も手入れされていないので不潔だったり、爪もぐるっと一回転しそうなくらい伸びていたり、毛が抜けて禿げて皮膚病になっていたり、歯も一本もなかったり…

祐子 歯のない子が多いよね。あれは栄養失調なの?子犬を沢山産まされ続けてるから?

ゆき 栄養はありそうですね。血筋や遺伝的なこともあるかとは思いますが、フードも粗悪だし、それをふやかしてあげるから固いものも噛まないし。

祐子 ふやかしてあげるのはなんで?カサマシ?

ゆき 水を飲ませなくていいように、フードと一緒に水分をとらせるっていうのもありますね。

祐子 そうか。手間暇かけたくないからね。

ゆき スペースを確保するのに、ケージを3段重ねにして、足元は網のまま。排泄物は網を通って下に落ちて行くから、そこだけ片づければいいってくらいのところもありますね。

祐子 うわぁ…下の子は下にも溜まるし、上からも降ってくる。糞尿まみれの中で病気になっても治療を受けられない…

ゆき そう。乳腺症の子も多いですね。あと、今日一緒に来ているチロリちゃんだって、お薬一つ飲んでいれば、フィラリアは予防できるのに…。とにかく「なんでこんなになるまで…」って

祐子 「こんなになるまで…」か…


音楽:Surfaces, Elton John『Learn To Fly』(楽曲はYouTubeにリンクしています)

保護活動は完全ボランティア。
だから限界がある


祐子 劣悪な繁殖場は、結局、経営が行き詰まると夜逃げをしたりして、いわゆる「崩壊」だよね。このとき「ブリーダー崩壊」って表現するけど、本当なら「悪徳ブリーダー崩壊」「繁殖場崩壊」って、ちゃんと表現すべきだね。で、崩壊して、残されるのは…犬たち。売れなかった子犬、繁殖に使われていた母犬や年老いた犬たちで、そんなとき、誰がその犬たちを救うのか。それが「保護団体」になるわけだけど…

ゆき そこで登場するのが保護団体…って。いいんですけど。それを、世間では「当たり前」って、思われちゃっていないかなって…。保護団体も野犬が中心とか、今は個人宅からのレスキューも多いし、色んなタイプの団体があるんですけど、居場所のない犬はみんな保護団体って…

祐子 「当たり前ではない」活動だよね。多くの人が多分誤解しているんじゃないかなって思うのは、保護団体は行政から依頼されて動いているわけでも、国から資金が出ているわけでもなくて、すべてボランティアと寄付で成り立っているってこと。それが仕事なんじゃなくて、みんな自分たちの仕事や生活がある普通の市民だってこと。もちろん、資金が潤沢なメガ団体もあって、そこでは従業員として、給料が支払われたりもしてるけど、ほとんどの団体は全員無償のボランティア。

それで、現場に駆けつけて、何十頭という犬を保護して病院へ連れて行って、心と体を立て直す。ケガや病気を治して、人との暮らしを教え、新しい家族を探す。誰かの言葉じゃないけど、点で見たらダメよね。流れるように線の活動なんだよね。ゆきちゃんもとにかく飛び回ってる。

ゆき そうですねー。点じゃなくて流れで…。目の前で倒れていたり、困っている動物をレスキューするという行動は、人として当たり前よーっていう気持ちで動いている方が多いですね。

祐子 知ってしまった犬たちの命は見捨てられないからね。とはいえ、まぁね「犬が好きだから勝手にやってるんでしょ」って言われてしまうと…なんとも辛いよね…。

TV番組で有名に。
でも実際は繁殖場崩壊


祐子 そういう崩壊するような繁殖場をマスコミが取り上げてちやほやしたこともあるし。それで崩壊したら知らんぷりとか…。

ゆき ありましたね。あそこはいかにもTVが飛びつきそうな、豆しばの大繁殖場だった。でも、大きな施設だったから、従業員がSOSを出してくれましたね。だいたいオーナーが仕事やめるってなったときは、お金がない、破産をする。あるいは、病気になって突然やめる。とかなんですけど、最近は中の人が告発したり、SOSを出してくれるケースが増えてきましたね。それから、こういう繁殖場では、やめるってなったとき、オーナーが「まだ使える子は他の繁殖屋に売る」「金になるから」と、なるらしいんですけど、従業員の動物看護師さんが「こんなボロボロの子をもう働かせられない。助けなきゃ」ってなって、たくさんの保護団体が協力してレスキューすることができたんですね。

祐子 保護団体の横のつながりも素晴らしいね。どういう理由かはわからないけど、そこから来た子で足の先がなかった子もいたよね。病気があったりね。かわいい豆しばのブリーダーって毎週のようにTVで騒がれていたのに、実態はこうかって感じがした。広い庭のようなところでワイワイ走り回れていたから、少しはいいところもあったのかな?でも、300頭以上の犬を無責任に放りだした訳だしね。

ゆき 私はレスキューに行かれなかったんですけど、レスキューをしに行ったメンバーから聞いたら、その広い庭を逃げ回ってしまって、人には慣れていなかったですね。捕まえるのが大変だったらしいです。それから、テレビには出ていなかったけれど、大きめのサイズの子もいたし、びーっくりするくらい、小さ過ぎの子もいたり。裏に回れば、健康で元気な子ばかりじゃないんですよ。確かに、この時のレスキューは、見た目はかわいい豆しば達だったので、注目してもらって、新しい家族にって手を挙げてくれる方は多かったですけど、裏の顔もある繁殖場が崩壊して、そこからレスキューしている保護団体を「いい犬ばかり集めてる」とか、「じゃあいい犬だよね」っていうのは…

祐子 辛いね…。まぁね勉強不足っていうのかなぁ…マスコミはその辺は伝えない部分だしね…。日本も「保護犬」っていう言葉が、これだけ知れ渡るようになってきたんだから、ペットショップの犬同様、このレスキュー犬はどういうところから来たのか…って、想像してもらえるようになるといいね…。

ゆき そうですね。劣悪な繁殖場、悪徳ブリーダーがどうして存在しているのか。ペットショップとの関係は?とかね…繁殖環境の良いブリーダーを見極める目を持つこともとっても大事ですよね。

音楽:Run, Baby, Run』Sheryl Crow(楽曲はYouTubeにリンクしています)

ペット産業を健全にするのは
犬猫を愛する気持ち


祐子 今日は常連客で保護犬猫のシェルター付きトリミングサロン『イヌと暮らす』のオーナーのゆきちゃんと「ブリーダー」と「繁殖場」の違いについて話しています。繁殖環境の良いブリーダーの見極め方。これは次回、話したいけど、ここまでの話はどうなのかな…。結構、あまり自分には関係のないって感じる飼い主さんの方が多いのかなぁ。ほら、日本は「犬はあまり好きじゃないけど、うちの犬は好き」っていう人も多いし、不都合な真実よりも、楽しい虚構の方を好む傾向が加速してきている感じがするんだけど…。

ゆき うーん…そうですね。でも、ペットショップに並んでいる子犬たちは、ほぼ犬市場で競り落とした「繁殖場」出身の犬たちで、その親犬たちの現状まで想像力を膨らませて、知ってもらいたいですね。

祐子 そして、前にも話したいけど、そういう動物の福祉が満たされていない環境で育っている犬はセロトニン量が少なくて、子犬に神経の過敏性とかが遺伝する。犬を家族として迎える時に、そういう性格形成への影響もあることを知っているといないとでは、幸せなドッグライフの分かれ道にもなる。私たち一人ひとりが「知ること」「考えること」「伝えること」。そのたった一つが犬たちの未来を変える力になるはず。どう?少しはモヤモヤしたこと伝えられましたか?

ゆき はい、だいぶ(笑)。賢い消費者、選択者になることは「健全なペット産業」を作る土台になること。それが「愛」でできてること。愛犬愛猫家の方々には、簡単なことだと思うんですよね。だから、みんなが気づいたら、なんだか、あっという間に良くなりそう!って希望がもてました。今日の話が、どこかで、誰かの心に残ってくれたら…それだけで、救われる命がありますよね。

祐子 ある!私はそう信じています。さて、時間はまだ大丈夫?今日も犬談義のお礼に私からもう1杯どうぞ。チロリちゃんは?

ゆき ほーんとにいい子です。とっても静かに穏やかに周りを見て過ごしてますよ。こういう子は落ち着いたお家やはじめて飼う方も良さそうですね。

祐子 ところでなんでチロリちゃんなの?
ゆき 名犬チロリです
祐子 名犬チロリ?セラピー犬初のチロリちゃん!
ゆき はい。なんか有名なチロリちゃん。いただきましたお名前(笑)


番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』  
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』 

放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagram  
ル・ブラン湘南のInstagram 


白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬のカウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは沖永良部島出身で雑種の女の子。名前はうるる(うりはお空組2005-2023)。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の社会心理学が専門。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に共感される。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合う。講師、専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。神奈川県三浦郡葉山町にて『お寺でわんにゃん縁結び』を主催

関連記事

カテゴリー

  • ラジオカフェ
  • 犬の心理
  • 講演・イベントレポート
  • お悩み相談
  • 犬と暮らす
  • 日々のあれこれ
  • うりパイセンの独り言
  • 湘南しっぽラジオ
  • お知らせ
//サムネイルを取得 //ここから構造化データの記述