工事現場の音を怖がる愛犬に困った!

今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組、宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』に寄せられたお便りにお答えします。
家の中まで聞こえる
工事音に震える
今回のお便り:ナマケモノタロウさん
我が家の生後8か月のマルシュナは(マルチーズ×シュナウザー)工事現場を通るとき、フリーズしてしまいます。最近、近所でマンションの新築工事がはじまり、その前を通るときは抱きかかえますが、家の中でも工事音が聞こえるときが多く、震えて様子がおかしくなります。工事音を克服することはできますか。何か方法があれば教えてください。
🐾🐾🐾🐾
ナマケモノタロウさんありがとうございます。工事現場の音を克服する方法はあるか…という質問ですね。犬は私たちよりずっと聴力が優れているので、私たちが感じている以上にけたたましく響いているコト間違いなし。ストレスにならないようケアしてあげたいですよね。
音に対する怖がり方は尻尾を丸めて震えたり、オロオロして走り回ったり、吠えたり、鼻をピーピー鳴らしたりなど、さまざまあります。このような時は、「ダメ」って叱ったり、「お座り」って指示を出したり、逆に無関心を装うなどは、どれもいい対応とは言えません。では、どうすればいいか。家の中では「メンタル」と「環境」、二つの側面からケアすることが必要です。
怯えているときは
寄り添い。安心感を

メンタルケア:たとえば音がしたときに「あっ!」って言うのはNG。これは怖がるきっかけを作ってしまうからですね。雷や花火などを怖がる犬に対しても同様ですね。人間が反応しないことがまずは大事です。
そして、これはいつも言っていますが、「怖いねー、怖いねー」など、同情心を含む声かけは、どうしても不安感が犬に伝播してしまうので、犬の恐怖心をより煽ってしまう可能性があります。ですので、いつも通り穏やかに「大丈夫だよ」って声を掛けて、体を優しく撫でてあげてください。「大丈夫ー!大丈夫だよぉ~!」って、大げさな声掛けやスキンシップは逆効果となるので、静かにそばにいてあげるのがベストです。
穴に潜ったような
環境は安心
環境:犬はもともと地面に穴を掘り、薄暗くて狭く、少しひんやりする場所を寝床や安全基地として暮らしていました。ですので、普段からケージやクレートに慣れているのであれば、周りを毛布などで覆うってあげると安心感が増すことがわかっています。また、音のする方からケージを離して、ラジオや穏やかな音楽の曲を少しだけ音量を上げて流し、恐怖の対象の音を薄めてあげます。
私はうり店長の妹分の“りうちゃん”が、雷の音にひどく怯えたとき、窓のない和室のふすまを閉め切ってから、昔、昭和の子供たちがマットレスで秘密基地を作ったように、敷き布団を三角に立て、その中にりうちゃんを入れてあげました。そして、私は隣に座るだけ。それだけで、ガタガタ震えていたのに、だんだんと落ち着いていき、なんと、その後は、雷が鳴っても平気でいらえるようになりました。
落ち着いていられた。
成功体験が重要

どのような方法であれ、恐怖の対象であったものに対して、犬自身が「落ち着いていられた」という経験をすることが大事です。その経験が自信となり、苦手なものも、自然に克服できるようになっていくのですね。
ただ、今回のお便りのような「近所ではじまった工事音」などのように、その状況の方がレアであり、どうしても成功体験をさせてあげられない、どうしてもその音には慣れませんという場合は、無理をせず親戚の家に避難させてもらったり、カフェで過ごすなどの選択も必要だと思います。
工事現場をどうやって
通り抜けるか
工事現場付近を通るときに「抱きあげる」というのは、犬を守るためにもそれでいいと思います。とはいえ、工事の規模によっては、サササーと通り過ぎたい…という時もあるでしょう。
私の一番のおススメ方法は、お友達のワンコがいるときに、一緒に通ってもらうこと。
他の犬がいて、その子たちが落ち着いているのを見れば「なんだ、大丈夫なんだ」って、知るきっかけになります。犬の手本になるのは犬が一番です。そして、犬は模倣する動物ですから、「自分も通ってみよう」って、チャレンジする機会にもなります。
特に私は「いえーい!」って言いながら、走り抜ける「駆け抜け戦法」を用いることが多いので、これをお友達と一緒にやるとさらにパワーアップです。躊躇わず、勢いに乗って駆け抜けましょう!
この方法で行きは怖がったのに、帰りはスイスイというワンコたちの姿を、私は何度も見ていますよ。外での工事音に慣れれば、お家の中でも気にならなくなってくるはずです。
どうでしょう。
ナマケモノタロウさん、少しは参考になったでしょうか。ナマケモノタロウさんのワンちゃんはまだ生後8か月ですよね。色々な音に慣れていくのも社会化の一つです。上手に社会化されれば、ストレスにさらされる機会も減り、人も犬もよりハッピーに暮らすことができますので、ぜひチャレンジしてください。またお便りお待ちしております。
この記事はFM831レディオ湘南:radio café『犬とあなたと珈琲と。』(第1.第3土曜16:00~16:29放送)2025年2月1日放送分を加筆修正しました。
本記事は「こちら」から視聴可能(後半20分以降です)
レディオ湘南は世界中どこからでもワンクリックで視聴可能です。
番組サイトにもぜひ遊びにきてね→『犬とあなたと珈琲と。』
◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。
文:白田祐子(しらたゆうこ)

白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラ「ル・ブラン湘南」代表・ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは沖永良部島出身、雑種の女の子で名前は“うるる”(うり店長は2023年お空組)。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の社会心理学と犬の心の成長が専門。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
保護犬猫の譲渡会開催や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合う。講師、犬専門雑誌の監修や執筆を行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演、2022年4月から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。神奈川県三浦郡葉山町にて『お寺でわんにゃん縁結び』を主催