心理士が解説*犬に好かれる人の特徴3つ #3
前回に引き続き【犬に好かれる人の特徴3つ】を“犬から苦手に思われる人”と照らし合わせながらお話します。
毎回1つ、3回に分けてお伝えしていますので「今日はこれができたかな?」と日々意識しながら、愛犬とのコミュニケーションにご活用いただけたら嬉しいです。
特徴3:待つことができる人
犬はマナーを重んじる生き物
犬が近づいてくるのを待って匂いを嗅いでもらっている人は犬から好かれる傾向にあります。犬同士の挨拶は匂いを嗅ぎ合う自己紹介から始まるので、これはとても犬の視点に立った行動なのですね。
子犬でもない限り前触れもなく相手の体に触ることは “犬同士ではマナー違反”。
犬は社会的な動物ですので私たちが思う以上にルールやマナーを重んじます。それは人に対しても同様。自分勝手に体を触ろうとする人を犬は信用してくれません。大人しく触らせていても実はストレスを感じていることもあるので気をつけたいですね。
わたしも犬と信頼関係を築くときには、決して自分から近づいたり名前を呼んだりはしないように心掛けています。それが犬流のマナーであり犬への尊重の証でもあります。あまりの可愛さにすぐに触りたくなっても我慢です。ゆっくり時間をかけて私のことを知ってもらうと「この人は安心だから好き」と認められ、こちらの話に耳を傾けてもらえるのです。
犬の顔を正面から見つめない
犬は正面から目を見られると緊張します。初めて会う犬同士は必ず顔の横や体の横から近づいていきます。それまでは静かだったのに、うっかり正面から近づき過ぎると突然吠えられたりもします。また知らない犬同士が目と目を合わせるのは喧嘩のはじまりとも言われています。
わたし達は相手に気持ちを伝えるためにアイコンタクトをとります。それが礼儀とされる場合もありますよね。また好意を示すために目を見つめることもします。でも犬同士ではそれはとても無礼な態度なのです。
人と犬に信頼関係が生まれてからの見つめ合いは“幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されるといわれています。オキシトシンホルモンはストレスの緩和や恐怖心の減少、親密感や学習意欲の向上などにも効果があるといわれていますので、互いに安心できる存在だと認めてからは、アイコンタクトはとても重要なコミュニケーションツールになっていきます。
ヒトと犬の挨拶の仕方は違う
自分の存在と好意に気付いてもらいたいとき、犬の視線に合わせてしゃがみ、顔を覗き込むヒトは多いものです。それは赤ちゃんや子供への接し方に通じるからでしょう。でも、家族や安心できる顔見知り、人間が大好きな性格の犬ではない限り、どんなに優しい眼差しで見つめても犬にとってそれは緊張やストレスの源でありマナー違反なのです。
犬が苦手な人が頑張って挨拶をしても、その方法が間違っていれば残念な結果に終わります。また、犬が好きなヒトの愛情や “はやる気持ち” がときに“犬から見ると苦手な人“となってしまうこともあると意識することも大切ですよね。
犬に好かれる人はマナーを理解している人です。犬同士が挨拶や交流をしているときに、相手の犬を撫でようと手を出したり、しつこく声かけしたりなどの介入はせず犬同士の終了の合図を待つこともできます。
犬はいつでも考える時間を与えてくれる人が大好きなのです。
おわりに
人の性格は多面的ですから、犬に好かれる人が日常的にこれまで伝えた3つの特徴(穏やかに話す・落ち着いた振る舞い・待つことができる)を持ちあわせて行動しているのかというと、実際はそんなことはないかもしれません。スポーツ観戦や友人との飲み会では興奮をしたり大声を出したりもしますね。
肝心なのは犬の前では“犬の気持ちを汲み取った言動がとれている”という点にあるのではないでしょうか。
ですから「犬を安心させる存在になりたい」と意識して正しく犬を理解すれば、犬に好かれる人のような振る舞いが自然にできるようになるのではないかと思います。
私も日々精進、愛犬のほうが私よりも格段に心が広く、動じないマインドを持っているので見習うことも多く発見の毎日です。3つの特徴はごく一部の情報ですが、犬への接し方を見直すチャンスになり、自分自身を見直すきっかけにしていただければ嬉しいです。
◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。
文:白田祐子(しらたゆうこ)
この記事は初出2017年3月9日『心理士が解説!犬に好かれる特徴3つ』(「犬のココカラ」掲載)を加筆・修正しました。
関連記事→【犬に好かれる人の特徴3つ#1】
【犬に好かれる人の特徴3つ#2】
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@ル・ブラン湘南
白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:公益社団法人日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ、ル・ブラン湘南代表。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した犬のしつけ相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合っている。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。2014年より神奈川県動物愛護推進員、湘南ビジョン大学講師、2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演中。