犬は何日で自分の名前を覚える?
今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組、宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』に寄せられたお便りにお答えします。
まだまだ
科学的な解明が必要?
今回も「夏休みの自由研究!こども特集」からご紹介します。『犬って何日で自分の名前を覚えるんですか?』ありがとうございます。面白い!
名前は自己認識と大きく結びついていて、犬の自己認識についてはまだまだ議論の余地のある部分。「自由研究のテーマ」として、どのような視点で調べて行くとより正確な答えに辿りつけるか。そのヒントをご紹介します。
回答者はわたし、心理士で犬とヒトの関係を研究しているドッグカウンセラーのしらたゆうこと、保護犬猫のシェルター付きトリミングサロン『イヌと暮らす』の代表取締役社長の中山ゆきさんです。
吾輩はポチである。
名前の概念と自己認識
祐子 それでは、次の質問。『犬って何日で自分の名前を覚えるんですか?』。面白い!これはワンちゃんと暮らしている子の質問って感じだよね。
ゆき これ、うちの子からですね(笑)
祐子 やっぱり(笑)!ゆきちゃんはどう思う?
ゆき 数日でしょうか。新しく保護犬が来ると大抵はその日から「新しい名前」で呼ばれるんですよね。それまで名前のない犬もいるので、始めて名前をつけてもらったりして。そして、名前を呼んでいるうちに、みーんな、いつのまにかその名前で振り返るようになるんですよ。猫も犬も。
祐子 「名前」って限定した場合、例えば名前が「ポチ」なら、「ポチ」とは自分のことであり「吾輩はポチである」と理解してはじめて「名前」という概念になるわけだけど、そもそも「吾輩はポチである」の「吾輩」の部分である犬の自己認識レベルはどうなっているのかを知る必要があります。
たとえば、犬が「他者と自己(自分)」をどこまで区別しているのか。そして、自己は「過去の時間」から形成されていくものでもあるけれど、時間によって形作られた「自己」を心理的に解釈できているのか…など。犬の自己認識については、まだまだ議論や実験が必要な段階のようです。
名前はコミュニケーションの
はじまりの合図。
祐子 なので、「名前を覚える」=「自分であると自覚する」ではなく、ポチと呼ぶとなんらかの反応をするまで何日かかるのかを検討する。要するに、ポチという言葉が「コミュニケーションの始まりの合図」になるまで、どれくらいかかるのか。そういう視点で考えるといいと思います。
ゆき 「覚える」というよりも反応するかどうか。うちでは、ただただ生活に必要な範囲、例えば「ポチご飯だよ」「ポチ散歩行くよ」「ポチはかわいいねえ」って感じで名前を呼んでいると、数日で「わたしポチです」っていう顔をして、反応するようになってくるんですよね。
祐子 犬はその言葉に「いいコト」が関連付けされていると早く覚えるので、「ご飯」「散歩」「かわいい」みたいにポジティブな言葉と一緒に言うことは最高にいい!
それで私の友達の話を思い出したんだけど、犬が来てすぐに「うんちしたの偉いねー」って褒めていたら、名前を呼んでも来ないのに、「うんち」って言ったら尻尾振って来るようになっちゃって、それで名前を「雲太(うんた)」に変えたって。その期間はたった2日。よほど「うんち」した後に、笑顔で明るく声を掛けていたんだろうなぁって思う。
ゆき なんてかわいい話。褒め上手な方だったんですね。そして「雲太君」もすごく素直な子(笑)
言葉は使い方次第で
結果は変わる
ゆき 逆に長いとどのくらいかかるのかな?
祐子 例えば怒る時にだけ「ポチ!こら!」って名前を言っていたとする。そうしたら「ポチ」って呼んでも、こっちを見ることはないと思う。怒っている相手とは目を合わせないのは、カーミングシグナルの一つだから、1年経ってもこちらを見ないかもしれない。
だから、言葉は使い方次第なんだけど、普通に暮らしていれば、早ければ2-3日、だいたい4-5日で覚えるんじゃないかなぁ。ただ、使い方次第で結果は変わってしまうとなれば、犬の能力だけの問題ではないので科学的な裏付けはなし!タイトルを変える必要があるよね。
ゆき なるほど。じゃあ、『うちのポチがある言葉をどれくらいの時間で覚えて反応するかをやってみた』なんて言うのも、面白いかもしれないですね。
祐子 そうだね。家にいる犬やお友達の犬に「お手」とか簡単な言葉を教える実験をしてみると、研究っぽいかもね。因みに私の自慢。友達の犬に10分で「お手」「おかわり」を覚えさせました!参考に!(笑)
ゆき おお、さすがすごい(笑)これは犬側も楽しい実験になりますね。面白い。
祐子 ねっ。褒めまくっていろいろ教えてみよう!
この記事はFM831レディオ湘南:radio café『犬とあなたと珈琲と。』(第1.第3土曜16:00~16:29放送)2023年8月19日放送分を加筆修正しました。
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◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。
文:白田祐子(しらたゆうこ)
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白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演、2022年4月から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。