犬とあなたと珈琲と。Vol.64 小林剛介
収録:レディオ湘南
宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送
湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳。愛犬の“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。
今回のお客様は『味の古久家合同会社』代表の小林剛輔さん。藤沢市民で知らない人は「いない!」と言い切れるでしょう。ダイヤモンドビル地下の『味の古久家』を筆頭に、『寅そば』『森のCAFE’ KO-BA』『喫茶アルト』『餃子製造直売所』と、現在は4ブランド10店舗を運営しています。藤沢北部で生まれ育った小林さん。「藤沢のイメージって、昔の別荘族が作り上げたまま変わらない」と、『藤沢は湘南から独立宣言!』を提唱中。藤沢北部は明治・大正の頃までは養蚕が栄えていたそう。そこで、なんと「蚕の飼育もはじめました!」。とにかく好奇心旺盛で追求型。「だから、毎日、新発見があってワクワクする。きっと死ぬまでワクワクしていると思う」。シルクロードの復活とか蚕棚とか、犬たちとの森の暮らしとか、こちらまでワクワクが連鎖して、会話が止まらなくなるのでした。
――こんにちは、剛輔さん。ようこそお越しくださいました。
小林 こんにちは。祐子さん。いいお店ですね。あっ、うり店長。こんにちは
――さっそく剛輔さんのところに行きましたね。珍しい。わんちゃんのニオイがするのかしら。
小林 そうかもしれない!じゃあ、ブレンドお願いします
目次
株式会社古久家を
分社した理由
――剛輔さん。小林剛輔さんは、藤沢市民で知らない人はまずいないと思います。昭和22年創業の「株式会社古久家」の3代目社長を務めてから、今は一部分社化して、私も大好きな『味の古久家』さんを筆頭に、湘南あっさり豚骨ラーメン『寅そば』。それから、白雪姫と七人の小人が住んでいそうな『森のCAFE’ KO-BA』。レトロな喫茶店『喫茶アルト』。そして、お持ち帰り専門『餃子製造直売所』と、4ブランド10店舗を運営する『味の古久家合同会社』の代表でいらっしゃいます。「古久家」とつくお店は他にもありますし、「どういう組織になってるの?」って、聞かれることも多いのではないですか?
小林 はい。よく聞かれるんですよね。会社が大きくなり過ぎちゃうと、お店を運営する上で舵取りが難しくなってきますよね。顔が見えてこない。なので「会社を分けた方がよくなるんじゃないかな」ってことで。
あと、藤沢の北部を盛り上げながら、新しいことにもチャレンジしていきたい。そういう気持ちもあって分社化することにしました。「古久家」は「株式会社古久家」の4代目がしっかり継いでいます。
藤沢は湘南から独立!
宣言中
――剛輔さんのキーワードでもありますよね。「藤沢北部」。そして藤沢北部の「脱!湘南宣言」をされていますね。
小林 はい。正確には北部だけではなくて、藤沢全体です。私は長後で生まれ育って、今も長後に住んでいるんですけど、長後は藤沢北部の元中心地です。
みんな、藤沢と言うと「湘南」「江の島」をイメージすると思うんですけど、これって、石原慎太郎や裕次郎、お金持ちの別荘族の人達が作り上げたものなんじゃないかなって思っています。地元の人は全然違うでしょ。言葉も汚いし。だから、よそから貰ってきて作りあげられたブランドじゃなくて、もっと、違う発想をしたらいいんじゃないかな?って。だから、「藤沢は湘南から独立」って、勝手に宣言しているんです。
――確かに。ステレオタイプからの脱却はどうしたらいいんでしょうね。
小林 例えば、広島県って、なにかと2位が多いっていうことで『おしい県!広島県』っていうキャッチコピーで、自虐的なPRをしていたりとか。それが前、話題になったんですよ。そういう、使い方、着想があっても面白いんじゃないかなって。
CAFE’ KO-BAで開催。
田園長後の朝市
――面白いですね。湘南から独立。その一つなんでしょうか。『CAFE’ KO-BA』で偶数月の第2土曜日に開催されている『田園長後の朝市』。去年の12月から始まって、どんどん認知度もアップしていますね。
小林 はい。今やね、長後はベッドタウンなので、東京のベッドタウン「田園調布」にひっかけて、「田園長後」にしました。それに「北の宣伝にもなるかな」って思ってね。
――「田園調布」と「田園長後」気づきませんでした(笑)その『CAFÉ KO-BA』は、どこかの避暑地に訪れたかのような自然豊かな中にあるのに、駅からもとても近くて、マーケットを開くには最高の場所だと思います。飲食や雑貨の出店と保護犬の譲渡会もされていますよね。
小林 ありがとうございます。楽しんでやっています。「楽しかった」って言ってくれる出店者さん達はまた次も出店してくれますし、楽しくないと、なかなか次に繋がらないし「なんでも楽しく」がポリシーです。
――「なんでも楽しく」。いいですね。普段のお仕事でもそうですか?
小林 そうですね。なるべく上下関係を作らないように、店長に任せて自由にやってもらうようにしています。昔、私が店長として働いていた時は、№2に自由にやってもらっていて、その方が気楽だし、私、失敗しますから(笑)。
3代目になったときは、周りに迷惑をかけないように、引き揚げられちゃいました(笑)。
――そんなことはないと思います!
――そう、『CAFÉ KO-BA』。「コーバ」はアルファベットで書きますが、外国語ですか?
小林 いえいえ、あの建物はもともと古久家の製麺工場があった場所なんです。工場(こうば)が移転した跡地なので「コーバ」と呼んでいます。
――面白い。工場の跡地だからこそ、あれだけ広い敷地があるんですね。本当に森みたいです。
小林 本当に森の中です。このお店は?『TAKARA CAFÉ』。
――『TAKARA CAFÉ 』はここで宝物の話をしたら、失くした宝物が見つかったり、新しい宝物に出会えたりする。そういう場所になるといいなと思って付けた名前なんです。
小林 へー、宝物ね。宝物って、みんなワクワク探し求めるけど、結局、身近にあるものなんだろうなぁ…
――わぁ、素敵!もしよかったら、剛輔さんも宝物の話、聞かせてください。
子供の頃から追求や、
辿るのが大好き
――剛輔さんの宝物はなんですか。
小林 うーん…「好奇心」かな。
――好奇心。子供の頃から好奇心が強かった?
小林 そうですね…子供の頃は一人で工場の下の空き地とかでね、草とか虫とか掴まえて食べたりしていました。カマキリとか「食べられるのかな?」って。カマキリは火を通すと、ちょっと香ばしくて美味しいんです。
――今は昆虫食がブームでもありますが…カマキリ…。
小林 5歳上の兄がいまして、兄から聞いた話で私は覚えていないんですけど、私が3歳の頃にもらったプレゼントはフライパンなんです。そのフライパンでなにやら、怪しげなニオイをたてながら、色々なものを焼いたりしていたそうです。そうやって、食べられるものと、食べられないものを探っていたんでしょうね。
――自ら!(笑)。3歳で調理とか、それを家族が見守るというのも特別な印象を持ちますが、そういう、調べたりすることが好きだったんですか?
小林 はい。追及したり、辿(たど)ったりするのが本当に好きでした。
子供の頃って泥団子作ったりするじゃないですか、あれも「どの砂を混ぜたら硬くなるか」とか、一人でコツコツやっていましたね。あと、うちの裏に川が流れていたんですけど、その川を辿って、どこに繋がっているんだろうなって、歩いたりしていました。
――1人で冒険していたんですか?
小林 はい。いつもね、ほとんど一人です。18歳位になるとパソコンが普及してきたので、ますます調べることが好きになりました。
――へー、さらに内へ内へといったんですか。
小林 はい。
音楽:Lenny Kravitz『 It Ain‘t Over Til It’s Over』(楽曲はYouTubeにリンクしています)
冷蔵庫に
繭玉あります
――そう、調べものの話。最近は何を調べましたか?
小林 最近は「蚕の飼い方」なんかを調べていました。
――蚕?
小林 はい。昔は長後の町って明治・大正の頃、あと昭和の初め位かな「養蚕(ようさん)」って、蚕で糸を取る工場が栄えていたんですよ。あちこちに桑の木が一帯に広がっていたりとか。
私が生まれたときには、もうないですけど、製糸工場とかも大きなのがあったそうで、長後の天満宮の辺りに、確か「持田製糸場」って言ったかな、その第2工場というのがあって。藤沢市内の工場を全部合わせると、富岡製糸場よりも大きな規模だったそうです。
八王子から藤沢まで続いている「滝山街道」。ここで生糸を運んで、藤沢市役所の辺りも製糸場の跡地だったそうですよ。
――知らなかったです。じゃあ、滝山街道ってシルクロードだったんですね!横浜はシルクのスカーフとか有名ですが「長後スカーフ」とかも作れそうだし、面白いですね。蚕いいですね!
小林 そうですね。昔はね、近所の農家さんに中二階があって、「蚕棚」って言われているところですけど、そこで子供の頃は蚕を見たりして遊んでいました。それで、今、私も蚕を飼っていて、1000匹位いました。
――えっ?1000匹!1000匹は想像もつかないんですけど。今、どういう状態なんですか?
小林 はい。今ね、冷凍庫の中にいます。
――冷凍庫?冷凍庫…お家の冷凍庫ですか?
小林 はい。そうです。冷凍食品と一緒に入っています。
――それはどうしてですか?成長をとめるってことなんですか?
小林 そのまま置いておくと、羽化しちゃって、中から蛾が出て来ちゃうんで。
――あーなるほど…。そうか、成長を止めないとダメなんですね。蚕は自然界には存在しないと聞いています。もともとは、どこかから仕入れてきたんですか?
小林 はい。最初はネットで買いました。3年位前に60匹位かな‥‥仕入れて、それを飼って、卵が産まれて…の繰り返しですね。
蚕の卵って、半分はすぐに幼虫になるんですけど、残り半分位は冬を越えて次の春にならなきゃ、ふ化しないんです。だから、卵も半分は冷蔵庫に入れて冬の状態にしております。
はたおり機が欲しい!
ワクワクが止まらない
――繭と卵(笑)そうかぁ…(笑)
小林 今ね、糸を取りだして巻く「糸巻車」。「座繰り器(ざくりき)」って言うんですけどね、それを持っているので、ワークショップで繭から糸をひいたりしたいなって思っています。だから、次は「機織り(はたおり)機が欲しいな」って。
――面白い!『CAFÉ KO-BA』に製糸場と織物工房を併設させて、滝山街道シルクロード計画!復活!なんかワクワクしてきました!
小林 でしょ。私も50を超えても、知らないことがたくさんあってね、毎日が新発見のワクワクです。でも、まぁ…きっと、死ぬまでワクワクしていると思います(笑)
――羨ましい(笑)。シルクロードまでいかなくてもいいので、養蚕と絹織物は復活してほしいです。そのためには桑畑が必要ですよね。
小林 はい。『KO-BA』の庭にも桑の木ありますよ。
――へー!今度、桑の木探してみたいと思います。そう、『CAFÉ KO-BA』には広いドッグランもありますよね。ずっと犬が好きなんですか?
小林 そうですね。犬も猫も子供の頃からずっといました。ドッグランはもともと自分のところの犬のために作ったんです。
行き場を失くした
柴犬ハルとの出会い
――剛輔さんのところには、今、保護団体から譲渡されたワンコがいるんですよね。
小林 はい。えーとね、甲斐犬の入った雑種で男の子。4-5歳かな。名前はねオリオンって言います。元ね、多頭飼育崩壊のワンコで、譲渡会では…ずっと怯えて「キュンキュン」言っていたような子なんですね。まぁ、顔を見たらなんとも情けない顔をしていて。
先住犬にイタグレ(イタリアン・グレーハウンド)がいるんですけど、それも情けない顔をしています。そういう子ばっかり(笑)好きです。
――えー、いつか会ってみたいです。『田園長後の朝市』では譲渡会も開催していて、保護動物にも、もともと興味があったんですか。
小林 いえ。もともとは関心なかったんです。でも、今の子の前に柴犬を預かったところから、なんだかこんな感じになってきました。
――柴犬を預かった。どういう出会いだったんですか。
小林 はい。ハルっていう子だったんですけども、Facebookの知り合いが『誰かこの犬をとりあえず預かってください。明日になったら保健所に連れて行かれちゃうんです』って、言う風にあげていたんですね。
そこにはね、『10歳の豆柴、大人しい女の子』って書いてあったので、それなら「とりあえずの間、預かってあげよう」と思って。豆柴っていうから、イタグレ用のクレートを持って引取りに行ったんですよ。
そうしたら、普通に大きな柴で全然入るサイズじゃないし、しかも、男の子。大人しくなんかないしね。ケージからだそうとしたら噛まれました。
――わぁ…。でも、それで「やめた!」ってならないで、連れて帰ったんですね。
小林 もちろんです。なんだかんだ噛まれながらね。自宅に住める場所があるのでそこに繋いで、毎日朝夕2時間ずつ散歩に連れて行って。
――大変じゃなかったですか?
小林 大変でした。あの、魚屋さんがよく着ている、膝位まであるゴムの前掛け。あれ着けて、手にはビニールのごつい手袋着けて、長靴履いて。朝早くにね、誰もいないところを散歩していました。
そうしていたら、段々落ち着いてきて、最後は突然死んじゃったんですけども、よく日の当たるテラスで気持ちよさそうに寝ていました。
――そうか…ハルちゃん。幸せでしたね。ゆっくりと心を開いてもらう。剛輔さんにも、ちょっと通じますか?そういうところ。
小林 そうですね。ずっと人前で蓋をしていたんですけどね、36歳位の頃にその蓋が取れと思います。そこから外にでるようになって、人付き合いもできるようになりました。
――剛輔さんが…蓋が取れるまで。そうでしたか…では、何か、蓋が取れるような曲でもおかけしましょうか。元気のいいやつ。
小林 じゃあ、元気の無いときに力をくれた曲をお願いしようかな。Doobie Brothersの『Listen to the Music』(楽曲はYouTubeにリンクしています)
最期に言われたい。
あいつ幸せそうだったよな
――今探している宝物はなんですか。
小林 そうですね…。「あいつは幸せそうな人生だったよな」と言われるような死に様かな。楽しく死ねるように、毎日、たんたんと積み上げていく。それがいいと思っています。人生の最期に手に入れたい宝物ですね。
――剛輔さんの話はいつも哲学的で名言に溢れています。そうだ『田園長後の朝市』、9月は特別に開催するんでしたっけ。
小林 そうなんです。商店街のイベントあるので、それに合わせて、9/30(土)9時から1時半まで開催します。祐子さんもぜひ遊びにきてください。
――はい。ぜひ!今日はお話しを聞かせていただいたお礼にもう一杯いかがでしょうか。
小林 ありがとうございます。遠慮なくいただきます。
――ごゆっくりお過ごしくださいませ。
小林 はい
味の古久家合同会社のHP⇒『こちら』
番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』
インタビューと文:白田祐子(しらたゆうこ)
うり店長のInstagram
ル・ブラン湘南のInstagram
白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。
大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。
愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー、他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。