犬同士の遊び。ちょっと心配です…
今回も心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこがパーソナリティを務めるラジオ番組、宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』に寄せられたお便りにお答えします。
ワンプロがエスカレート
しないか心配
今回のお便り:サスケのママさんからいただきました。
祐子さん、うり店長、こんにちは。我が家のさすけ(1歳の雑種の男の子)はワンプロが大好きです。犬同士、ドッグランで思い切り遊ばせてあげていますが、内心は遊びがエスカレートしないかハラハラしています。人間だってあんなにハードな遊びをしていたら喧嘩に発展することもあると思うんです。私は心配し過ぎなんでしょうか?祐子さんはどう思いますか。
🐾🐾🐾
サスケのママさん、ありがとうございます。ワンプロ(ワンコのプロレスごっこ)する姿を見てドキドキ。
遊び行動は予測不能。
だからハラハラ
「犬」と「遊び」は切ってもきれない関係。
うりがまだ若くて「ワンプロ」が大好きだった頃、あまり馴染みのないワンコとハード系の遊びをしているのを見ると、私もドキドキしたものです。
犬の遊びについて話すと長くなっちゃうのですが、たとえば「遊び行動」って予測不能なんです。激しく取っ組み合いをしているかと思ったら、猛ダッシュしたり、転がったり、咬みついたり、とにかく動きが目まぐるしい。
他の犬と「出会ったとき」や、「争いごと」のはじまりや「狩り」のときのように、行動に順序がないんですね。犬は多くの場合、行動には流れがあるので、ある程度の動きは予想可能。でも、『遊び行動』は、それぞれの犬の動き(オリジナルの行動)が混ざり合うので、変則的で決まりがない。だから、予測不能。
犬の行動観察の研究が専門の私も「はじめまして」のワンコさんとは、その予測不能な動きに「大丈夫かなぁ」「あっ、ひっくり返った」とかドキドキしました。サスケのママさんだけではないですよ。
ただ、そういうハラハラドキドキの不安感が犬たちに伝わってしまうと、その場の空気に緊張感を与え、犬たちにもいい影響を与えませんので、落ち着いて振舞うようにしていました。
遊びの前に意思確認。
意気投合が大切
それにしても、不思議ですよね。
犬たちは大きさや体つき、運動能力に明らかな違いがあっても、仲良く遊ぶことができます。そこが犬の素晴らしい能力ですが、どうしてこんなことができるのでしょう。
たとえば、ポイントの一つにあるのは、最初に「遊びたい」という気持ちをしっかり伝えること。犬は最初に遊びたい気持ちを伝えるためにたくさんの動作、動きをしますよね。特に有名なのは「プレイバウ」と呼ばれる、お辞儀のポーズです。
これは、世界中の犬の共通言語「カーミングシグナル」の一つですので、自分や相手を落ち着かせる合図でもあります。相手の犬も「いいね、遊ぼう!」となると遊び始めます。気分が高まり意気投合することが大切なのですね。
常にフェアな状態で
楽しく遊び続ける
二つ目のポイントは、楽しい雰囲気を保ちながら、遊び続ける気遣いをしていること。
たとえば、力の強い犬やカラダの大きな犬は、自分の動きや強さを抑制したり、追いかける役から、追いかけられる役に代わるなど、自ら自分自身にハンディキャップをつけて、勝ち負けなどはない「フェアな状態」を保つようにしている様子がわかります。どうなると遊びは終了してしまうかを知っているんですね。
やっぱり「平和を愛する犬」はすごい。 このような「遊び」は、遊んでいる者同士の緊張や不安を和らげ、その場を和やかにする精神安定剤的な効果があり、攻撃的な接触を防いでくれると考えられています。このような話を聞くと、ちょっと安心しませんか?
飼い主同士で声をかけあい
サポートしよう
ただ、楽しい遊び時間、犬たちから目を絶対に離さないことは、飼い主の義務です。自分の犬の普段のエネルギーやどこまで許容できるかというのは家族が一番わかっているはず。エスカレートした犬を止めるのは飼い主さんの役目。
しつこいマウンティングなど、ルール違反がないかしっかり観察することも大切です。
どうでしょう、サスケのママさん、少しは参考になったでしょうか。
あまり人間が干渉してしまうと、犬も人もストレスにもなるし、その場の空気を壊してしまう可能性もあります。飼い主さん同士が声をかけあい、これからも楽しく遊べるようにサポートしてあげてくださいね。また、お便りお待ちしています。
この記事はFM831レディオ湘南:radio café『犬とあなたと珈琲と。』(第1.第3土曜16:00~16:29放送)2024年6月1日放送分を加筆修正しました。
本記事は「こちら」から視聴可能(後半20分以降です)
レディオ湘南は世界中どこからでもワンクリックで視聴可能です。
番組サイトにもぜひ遊びにきてください→『犬とあなたと珈琲と。』
◎『With a Dog』は犬の認知行動療法と飼い主のコーチングという“心理学を軸”としたドッグトレーニングを行う立場から、ヒトと犬の心と行動の関係についてお伝えしています。
文:白田祐子(しらたゆうこ)
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白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラ「ル・ブラン湘南」代表・ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。パートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の心の成長の研究を行い独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演、2022年4月から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。