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犬とあなたと珈琲と。Vol.111 犬の安全地帯になる!

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南 

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

8月16日のお客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。これまで『抱っこ散歩』について話をしてきましたが、その、『抱っこ散歩』を卒業しようと愛犬を地面に降ろしても、すぐに「抱っこ!」って戻ってきちゃう…あの行動。やっぱり抱っこをしないと不安なのかな?いえいえ、大丈夫!安心してください。それは心の成長に欠かせないステップなのです。あなたが安全地帯になってあげれば、愛犬は前へ踏み出すことがでます。その理由と対策を、保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関わりを探究しているドッグカウンセラーの白田祐子がそれぞれの視点で考え、伝授いたします。


祐子 こんにちは。ゆきちゃん。いつもありがとうございます

ゆき 祐子さん、こんにちは。うりちゃんもこんにちはー。あれ!今日はうるるちゃんも一緒なんだねー。看板犬デビュー、すごい!今日はソーダ君と来ましたー。はじめまして、よろしくね(ソーダ君の写真は本文最後)。

祐子 うるるは、まだまだ修行中なので混んできたら退散してもらおうかな(笑)ソーダ君。夏っぽい名前だね。小さな小さなトイ・プードルちゃん。どこから来たの?

ゆき 繁殖場のレスキューですね。お膝がガクガク外れちゃうから、あんまり動かないんですけど、人が好きなのでいろんな方に「可愛い、可愛い」って言ってもらえたら…って思って、連れ回してます(笑)

祐子 あんまり歩けなくても、外出は好きなんだねー。お家に人を呼んだり、カフェに出かけたり…わんことそういう暮らし方をしたいって人にはピッタリだね。

ゆき そうですね!「ずっとの家族」絶賛募集中です!

*中山ゆきさんが所属する保護団体の譲渡会の情報は「PAK」(Paws Adoption かながわ)

抱っこから降ろしても
戻ってきちゃう…


祐子 今日は16日?お盆真っただ中だけど、ゆきちゃんのお店は繁忙期か…

ゆき そうなんです。うちのお店『イヌと暮らす』はホテルもやってるので、お泊りワンコもいて、日々気をつけることが違ったりするから、ちょーっとピリついてる気がします…。でも、そろそろ落ち着いてきたので、ここで一息って感じです。

祐子 お盆を過ぎても、まだまだ夏真っ盛りで、まだまだ注意が必要だよね…

ゆき この暑さだとお散歩の時間も限られるので結構大変ですよね。そうそう、それで、散歩と言えば…前回まで「抱っこ散歩」の話しをしていて、それは次回にっていうのありましたよね。

祐子 ありました。せっかく、抱っこから下に降ろしてあげても「抱っこしてー」って戻ってくる、あの行動はどうしたらいいですか?っていう質問だよね。

ゆき そうですそうです。私からの質問させてもらいました。

祐子 今日はそれも含めて「犬の安全地帯」について話をしようかな…

ゆき 「犬の安全地帯!」いいですねー

祐子 じゃあ、まず、せっかく外に一歩踏み出したのに、また戻ってきたら?それは想定内の行動だから大丈夫です!安心してください。なので「あー、やっぱり」とか「これだもんなぁ…ダメだ…」なんて、がっかりしたり、心配をしないこと。

ゆき うん!そうなんだ「やっぱりダメかぁ」って思っちゃいがちだけど、想定内だから大丈夫!

祐子 そう。一旦離れても戻ってくるのは「心が発達」していくための健全な行動。たとえば、子犬って最初は母犬の傍にずーっといるよね。でも、だんだん活動的になってくると、そこを抜け出して自由に動いてみて、さらには、母犬の周辺だけでは刺激も少ないし、不自由さや窮屈さを感じてきて、さらに少―しづつ離れる距離が遠くなっていく。でも、離れてみると、初めて見るモノ体験するものだらけで、不安になって、また母犬のところに戻る。これは実際に犬のそういうシーンを観察したことのない人でも、野生の哺乳動物の子育て映像などからでも、わりと簡単に想像することができると思う。

ゆき わたしは動物園のトラの親子でもみたことあります。面白いですよねー。”おかぁたま”はドンと構えていて、子供たちは必ずそこに戻るみたいな…。野犬の子犬も最初はロングリードを着けておくと、フラフラ―って離れてみたりして、でも戻ってくる。あっ、人間もそうですね!

そこが安心の基地だから、
安全な避難場所になる


祐子 人間も同じだよね。ボウルビィの「愛着理論」っていうのが有名。これは養育者に対する子供の感情的な強い結びつきを「愛着」って名付けた理論で、「愛着」とは、単なる友好的な態度ではないとして、愛着行動には「分離苦悩」「近接性希求(近くに居たいことを望み求める)、そして「安心の基地」「安全な避難場所」の4つの要素があるって提唱されている。

ゆき どれもなんだか聞き覚えのあるような…似たような…

祐子 ね。四要素とも、犬と飼い主の間にも当てはまることは確認されているのね。特に「安心の基地」と「安全な避難場所」っていうのが、今話していた「安全地帯」にあたる。でも、ボウルビィが2つに分けたのにはは理由があって、「安全な避難場所」は「安心の基地」という保証があるという前提、順番があるっていうことなんだよね。

ゆき 不安が芽生えても戻ると安心できる。っていうことを覚えるのではなくて、そもそも、そこは安心できる場所でなくては、戻ってこないかもしれないってことか…。なるほど…

祐子 そうだね。だから、まずは犬に好きになってもらうこと、安心できる人って思ってもらうこと、欲を言えば「信頼されること」が、とにかく優先順位の一番である。って、いつも話しているよね。そして、不安になって戻っても、叱られたり、突き放されたりすることなく、さっき、ゆきちゃんが言ってたように、ドンと構えて待っててくれる存在がいる。この成長過程は、社会化がうまくいかなかった成犬や、まだ人間社会に慣れていない保護犬にも同じことがいえそうだよね。なので、私たちがすべきは、動物のお母さんたちの態度を真似ること。

ゆき 母犬を真似することが一番いい方法ですね。確かに間違いないです。まずは愛情を作って、信頼されて、戻ってきてもドンと構えて見守る!


音楽:『Aloha E Komo Mai』byリロ&スティッチ日本語Ver.(楽曲はYouTubeにリンクされています)

顔に近づきたいから
抱っこをせがむ⁉


ゆき 見守るときは、どんな感じの姿勢で待ってるといいんですか?

祐子 そうね…まず、しゃがむこと。そこがフリースペースなら地べたに座っちゃう

ゆき 立ったままより、姿勢を低くする方がいい?

祐子 そうそう、「抱っこして」って、せがむのは大抵小さなサイズの犬だよね。それは、抱っこ癖がついているっていうのもあるけど、そもそも、飼い主との距離があり過ぎて「シグナルが届かない」っていう理由が大きいのね。距離っていうのは顔と顔の距離。犬は相手が犬であれ、人間であれ、その表情やしぐさから、相手の感情を読み解く天才でしょ。だから表情を見たい。目配せやアイコンタクトは、人と犬のコミュニケーションを円滑にする重要なポイント。でも、小さな犬たちって…

ゆき そうか!飼い主までの顔が遠くてよく見えないー。顔を見たくて、顔に近づきたくて「上に行きたい」ってなる。それで、手をかけたりジャンプしていたとは!

祐子 特に、自分の行動に自信のないときや、不安なときは、犬って飼い主さんの顔を見るし、近づいてくるでしょ。これが、さっきの愛着理論の4要素の一つ「近接性希求」なのね。体の大きな犬は、振り向いたり見上げるだけで飼い主の顔が見えて、目があえばビビビって勇気をもらえちゃう。

ゆき なるほど…犬は顔をよーく見てきますね。目が合うようにちゃんと顔をみる。それは、小さい子でも大きな子でも同じだ

祐子 そうそう。だから、小さなワンコにも顔が見えるように、しゃがんであげる。そこで、膝に前足をかけてきても、抱き上げずにそのままの姿勢で撫でたり、ハグをしてあげて、安全地帯をキープする。

戻ってくるのは
信頼関係の確認作業


ゆき さらに「抱っこ、抱っこ」って膝によじ登ってきちゃったらどうしますか?

祐子 膝に登ってきたら、まず一旦は膝に乗せる。でも、落ち着いたら膝を地面につけて滑り降ろして、そのまま安全地帯をキープ。犬に「拒まれた」って思わせないこと、「あれ滑り降りちゃった」って犬に勘違いさせるのがコツかな。

ゆき うんうん。拒まないことが大事。そして、犬が宙に浮くほど抱き上げないってことですね。

祐子 そうそう。足はなるべく地面に着いているようにすると、そのうち「抱っこ」じゃなくても、傍にいるだけで、安心できるようになるよね。

ゆき なるほど。そいえば、これは、うるるが来たばかりの時に祐子さんがやっていたのを見ました。まさに、初めての場所の初めてのドッグランで、初めての犬もいて、まだまだ「遊びたいけど、どうしていいかわからない…」っていう雰囲気の時でしたね。で、走り回るたんびや他の犬に注目された時とか、祐子さんのところに戻ってきてた。

祐子 そうか。そんなことがあったねー。みんないい子ばかりだから、安心してフリーで遊ばせることができました。お馴染みの兄貴、浦君もいたしね。浦君は今日も明日も絶賛!「ずっとの家族募集中!」。戻ってきたら、ぎゅーっと勇気と愛を注入してあげれば、また安心してそこから踏み出すことができる。犬が横に来て、一緒に同じ方向を見て、そしてまた離れる。この繰り返しができたら、もう二人はナイスペア!

ゆき 素敵!すごく健全で前向きな気持ちになりますね。こういうコミュニケーションを繰り返すことで、信頼関係もどんどん強まっていって、やっぱり「おかあたまは安心できるなぁ」って再確認するんですね。

祐子 ね。信頼関係の確認作業でもある。ただ、これは人間側に余裕がないとできないと思うから、犬と向き合うときは心も時間も余裕を持つこと。実は、案外これが難しいところなのかなぁ…

犬の安全地帯になれることは、
この上ない幸せ


ゆき 犬のために時間を作ること。ここが基本の「き」ですかね。だから‥‥たとえば、自分には時間がないから他の人にお散歩をお願いするとか。これって、すごく効率的で犬的にも飼い主的にもいいことではあると思うんですけど、そうすると、信頼関係作るのって難しくなりますよね。私も経験してるので実感としてわかります。だから、あえて、信頼関係を作る時間を作らないといけない…

祐子 確かにね。犬との暮らしは、これはこれ、あれはあれ、ではなくて、全てがどこかで繋がっているんだよね。色々なことが連動しているから、全体を見て一つ一つを丁寧に仕上げていかなくちゃならない…

ゆき こうやって見ていくと、自分が犬の「安全地帯」になれているかって、すごく重要で、なれているなら、それはこの上ない幸せな気持ちになりますね。きっと、犬だって同じ気持ちですよね…。だからこそ、この「頼り頼られ」「思い思われ」っていう関係って、誰もが味わえてるものじゃないのかもしれないですね…。どうしても、どちらかの一方的な思いや行動で、関係性ができていくこともあるように思います。

祐子 飼い主が犬の「安全地帯」になるのって、実は、人と犬の究極のカタチなのかもしれないねー。うん…そういえば、今はアイアイの保護活動をされている、理学博士の島泰三先生って方がおられて、先生の著書の中に『犬とともにいるということの意味は、人間にとって心の共有関係に達するということで、ここまでこないと、イヌが犬にならないし、犬がそばにいる意味が見えてこない。ここまで来てはじめて、ヒトが人間たり得た実証ができる』って、すごいこと言ってるんだけど、「心の共有」「頼り頼られ」「思い思われ」の関係ができて、はじめて、犬は犬に、ヒトは人になれる…。哲学的だけど、実際、沁みる言葉だよね…。

ゆき 沁みますね。ただ、犬は人間よりもシンプルだから、失敗しても、もう一度チャレンジすることができるし、いつからでもやり直すことできますよね!それが犬の素晴らしいところだと思います。

祐子 うん。間違いない!

音楽:『 Slow & Easy』平井 大  

気持ちを切り替えて。
さぁ、地面を蹴りだそう!


祐子 今日は常連客で保護犬猫のシェルター付きトリミングサロン「イヌと暮らす」のオーナーのゆきちゃんと「犬の安全地帯」について話しています。

ゆき: 祐子さん、犬の安全地帯の話し、面白かったです。そして、これもまた奥が深かった…。「さぁ、行きなさい」って、降ろしてあげても戻ってきちゃう…って、実はよく聞く話です。でも、ガッカリすることはないんですね。そして、抱っこをせがんできても、すぐに諦めずに、じっくりドッシリ安全地帯になってあげれば、犬はまた気持ちを切り替えてチャレンジすることができる…。こういう相談をされたとき「大丈夫!それ想定内だから」って伝えます。

祐子 そうそう。うるるもね、ゆきちゃんが見ていた通り、最初はそんな感じ。家に来た時はずっと「うーうー」唸ってたから、2,3日はひたすら私に好意をもってもらえるよう、嫌なことは一切しない、手は出さない。そうやって、信用してもらって、抱っこができるようになったら「抱っこ散歩」をして、あとは常に安全地帯になれるようコミュニケーションをとる。地面に降ろして戻ってきたら、気持ちと行動を一旦リセットさせてあげる。これが最初のトレーニング。これってトレーニングに見えないと思うけど、前にも話した「攻めのトレーニング」の前に必要な「守りのトレーニング」だよね。ここまでくるだけで何週間もかかったけど、焦らずに根気よく続けてきたし、これからも継続が必要。

ゆき はい。見守ります!ずっとテーマにしてきた「抱っこ散歩」や「カート散歩」からの卒業って、簡単そうでいて、実は卒業までへのステップとか、知らないことが沢山ありました。そして、こうやってひも解いていくと「守りのトレーニング」の大事さがわかりますね。安心できる安全地帯のあり方にも大きく影響…。それで、ふと思ったんですけど、安全地帯、安心できる基地でいえば、あれどうですか?「ケージを安心できる場所にしましょう」って聞くんですけど、特に日本は多い印象です。この前「プレイストレーニング」って言うのも初めて聞いたんです。あんまり聞いたことなかったですね…。

祐子 本当だね。日本はケージ大国だよね。まあ、それには色々な理由もあるし…プレイストレーニングね…うん、その話も面白そう…でも、その話をすると閉店時間かなぁ…

ゆき 閉店時間かぁ…。じゃあ、次回はケージトレーニングとプレイストレーニングの話しと、安心できる場所がないと犬はどうなるか、逆に安心するとどうなるか…ってことまで、更に掘り下げて聞きたいです。

祐子 確かに!そこまでがワンセットかぁ…。ひゃー大変(笑)さて、時間は大丈夫?今日も犬談義のお礼に私からもう一杯…

ゆき ありがとうございまーす。いただきます。

祐子 ソーダ君は?うるると寝てるか…

ゆき はい、寝ちゃってます。チラチラこっちを見てきてたけど、やっと落ち着いたみたい。よかった〜


番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』  
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』 

放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

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ル・ブラン湘南のInstagram 


白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬のカウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは沖永良部島出身で雑種の女の子。名前はうるる(うりはお空組2005-2023)。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の社会心理学が専門。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持される。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合う。講師、専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。神奈川県三浦郡葉山町にて『お寺でわんにゃん縁結び』を主催

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