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犬とあなたと珈琲と。Vol.93 リードは張らず緩める。その理由

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南  

宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送

湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。

今回のお客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。ワンコとお散歩中、他の犬とすれ違ったり、挨拶をさせようと近づいたり。その時、ちょっと心配になってリードをグーっと後ろに引いてコントロールすることってありますよね。でもそれは、ときに犬同士のマナーを無視する結果となり、相手の犬に怖がられたり吠えられたりすることも。さらに、“危険なスイッチ”が入るきっかけや他の犬を見るだけで吠える習慣を生む原因にもなり得ます。「リードは張らずに緩める」。その理由を今回も保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関わりを探究しているドッグカウンセラーの白田祐子が紐解いていきます。


祐子 こんにちは。ゆきちゃん、いつもありがとうございます。

ゆき こんにちわ、祐子さん。今日はヌーヌーちゃんと来ました(写真は本文の中ほどにあります)

祐子 はじめましてだね。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのヌーヌーちゃん

ゆき ヌーヌーは市の福祉課からの依頼でレスキューした2頭のうちの1頭です。

祐子 じゃあ、福祉課のお世話になっていた方と暮らしていたのかな…?

ゆき そうです。4-5日、犬だけ残される状況があって、これ以上の飼育は難しいだろうと手放されました。

祐子 やむを得ない事情があって自宅に置き去りにされてしまう。特に一人暮らしだと誰もが起こり得る可能性があることだよね。突然の体調不良や事件や事故に巻き込まれる可能性だってセロじゃないものね。だから、万が一の時のために犬の行き場所をしっかり準備しておきたい…。

ゆき はい。犬の行く先をしっかり考えて、同意を得て、その連絡先を誰が見てもわかるようにしておく。そこまでやっておくのが当たり前っていう社会になるといいです。

祐子 支援を必要とする人とペットの関係…。動物を愛する人や団体だけではなくて、国や行政がリードしてくれないと、なかなか実現できない大きな課題だっていうことは痛感しているけど…。今は草の根活動…

ゆき やれることをコツコツ…。ただまぁ…いつまでこのままなのか…。いきなり、しんみりですが、いつものカフェオレお願いしまーす

*中山ゆきさんが所属する保護団体の譲渡会の情報は「PAK」(Paws Adoption かながわ)

力んだリードさばきは
危険スイッチをオンに…


ゆき そうそう、この前の話の続きですよー

祐子 そうでした。柴犬のケンちゃんとお散歩している時にちょっと失敗したことがあるっていう話…

ゆき そうなんです。前回、お散歩の時にオロオロしちゃうワンコ、臆病なワンコに対して私たちが「怖いね」って、同調する言葉を掛けるのは「逆効果」っていう話をして。それで、それ以外のワンコの場合ですよね…まさに、ずっとの家族募集中の柴犬のケンタ君。ケンちゃんは普段は本当にいい子なんですけど…スイッチが入るとガウガウしちゃう。だから、お散歩をしているときも、どうしてもリードを持つ手に力が入っちゃって…この前グイグイやり過ぎちゃって…

祐子 盛大にガウガウしちゃった?

ゆき はい…。力が入った瞬間、よその犬と喧嘩になっちゃって。しかもそこに、こちらも絶賛家族募集中の浦君も来て大騒ぎみたいな…

祐子 こっちが「大丈夫かな」ってちょっと力んだり、緊張したりしていると、たとえば、声かけとかちょっとした動きが犬にとっては「いけ!」の合図になってしまうこともある…

ゆき あー…「いけ!」の合図になってしまったんですね…。トラブルが起きないようにって、力んだ結果、生まれる負の連鎖~

祐子 あとから「あーっ…」てね。でも、喧嘩になっちゃったってことは、相手のワンコと距離が近かったのかな…

ゆき はい。ケンタが挨拶したそうに近づいて行って、相手も大丈夫そうだったし、ケンタも平気な子は沢山いるので…。でも、やっぱり心のどこかでは「大丈夫かな」っていうのはあったんです…信じてあげきれていなかった…

祐子 何でもないときもあるから…今日はどうだ、この子はどうだって緊張しながら…

ゆき はい。トレーナーさんと話していると、必ず「リードは緩める」「下に垂らす」って言われるので、それは頭ではわかるんですけど、一度でも危険なスイッチが入ったことの犬の場合はやっぱり難しいです。そういう「恐怖心」みたいのってどうしたら拭えるんでしょうね…。 祐子さんも「リードを緩めて」って指導しますか。

祐子 はい。します。大切なことだからね。ただ、犬の状態にもよるからケンタ君の場合は今は横に置くとして、一般的にはとリードを張らない状態は基本のき。

ゆき それはやっぱり、こっちが力んでいるとかネガティブな感情が伝わりやすいから?

祐子 私たちのネガティブな感情はリードを通さなくても犬には気付かれてしまうから、もっと物理的な理由…

ゆき 物理的な理由!知りたいです。

音楽:Tom Misch『It Runs Through Me (Feat. De La Soul)』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

頭を上げ胸を開いて
近づくのはマナー違反


祐子 大きく2つあるんだけど…理由の一つ目は「正しい姿勢で挨拶ができない」から

ゆき 正しい姿勢で挨拶…

祐子 そう。いつもの繰り返しになるけど、犬は群れで暮らす社会的な動物。だから、犬同士にはカーミングシグナルをはじめ、沢山のルールやマナーに通じる「ボディランゲージ」を持っているよね

ゆき はい。いわゆる犬語ですね。

祐子 だから当然、挨拶にも「正しい挨拶」の仕方、「礼儀正しい挨拶」の仕方がある。人間も挨拶は大切だよね。人も犬もそれは同じ

ゆき 本当にそう思います。最初は肝心!

祐子 ね。たとえば、初めて会う犬同士であれば、近づくときは「頭を下げ」て「胸は開かない」。特に、目下の犬は低姿勢で近づいていくのが正しい姿勢。どっちが年上かは互いにニオイでわかっているし、もしわからなければ、なんとなくお互いに頭を下げて近づく。私たちがビジネスシーンで、いきなりオードリーの春日みたいな挨拶はナシなのと同じ(笑)

ゆき トゥース!!!はびっくりされるだけですよね(笑)

横から近づくマナーにも
リードの余裕が必要


祐子 そして横から近づくのがマナー。正面から行って、しかも、頭が上がっていれば…

ゆき 喧嘩の合図!

祐子 すでに親しい関係なら「いぇーい!」でも「トゥース!」でもいいけど、普通は頭を下げて、胸を張らずに横から近づくのが全世界の犬たち共通のマナー。でも、そこでグーっと後ろに引かれると…

ゆき なるほど、リードが首輪でもハーネスでも小型犬なら完全に前足は地面から離れるし、大きな犬でも胸が開いてポジションが高くなる。

祐子 ねっ。キョンシーみたいなね。しかも、横に廻りたくてもリードに余裕がないから廻れない。

ゆき うんうん。その状態で来られたら、相手の犬は「怖い」って感じて逃げたり、吠えてくるかもしれない。気の強い犬なら「おー!やるのか!」って攻撃してくる可能性だってある…

祐子 人間が介入することで犬社会のバランスが崩れてしまうことって意外に多い…

ゆき なるほどー。タイミングもなにも考えずにリードを引っ張ることで、犬社会のバランスを崩してしまっていたとは気がついていませんでした。納得です。

ジリジリ近づけると
興奮度が高まりNG


祐子 それに、近づきたいのに近づけない。ニオイを嗅ぎたいのに嗅げない…。寸止めされてばかりだとフラストレーションは溜まる一方!もし、なんとかジリジリ近づけたとしても、さっきゆきちゃんが言ったように、相手に怖がられたり吠えられたりすることもあれば、「なんでだよーっ」て、面白くないしね。

ゆき なんとかジリジリ近づく…。これはよくやってしまうやつですね。挨拶させてあげたいけど怖いから、リードを緩めるでも、立ち去るでもなく、ジリジリさせちゃう…。これじゃ、好意的だったとしても相手には伝わらない…

祐子 さらに、さらに、他の犬に近づこうとすると自由を奪われ、首が絞めつけられ、時には「ダメ」って怒られて、なぜか罰の連続。全てがネガティブ体験…とほほ

ゆき 確かに、仰る通りです。とほほ…。

祐子 そうなると、犬は行動や出来事と感情がワンセットだから、次第にこんな嫌な気分になるのは、他の犬のせい、他の犬に会うからだって関連づけされてしまって、最終的には他の犬を見ただけで、吠えたり怯えたりするようになる。他の犬を見ただけで過剰に反応する犬のほとんどは、こういう間違った関連づけがされているケースが残念ながら多いかなぁ…。

ゆき 犬の学習「関連づけ」ですね。正しい挨拶ができないと、こんな大きな問題へ繋がっていってしまうとは…。大変だ…。

犬は忠告しあい
根に持たない


ゆき もう一つの理由は?

祐子 もう一つは「興奮スイッチが入るから」。リードを後ろにグーっと引くと、犬は後ろに引っ張られまいとしてより前に力をかけて興奮度も上がる。それって感覚的にわかるよね。

ゆき はい。犬ぞり状態ですね

祐子 興奮度レベル5のまま近づくより、レベル1で近づいた方がいいよね。私は挨拶をしたそうに近くに来たワンコのリードがビンビンの時は飼い主さんに「リード緩めていいですよ」って伝えるのね、それで緩めてもらうと高ぶったエネルギーがフッと軽くなるワンコの方が多いかな。そうやって二度、三度会っていると、飼い主さんもリラックスしていくのがわかる…

ゆき 成功体験の積み重ねの結果ですね…。正しい挨拶ができると騒動は起きない…本当に納得です。今日、一緒にきたヌーヌ―は今うちにいるんですけど、見ていたらヌーヌーは真正面から近寄るんですよ。そしたらケンタは怒る。だから、ヌーヌーを横から挨拶するように誘導していたら、ケンタも大人しくなったかな…

祐子 ケンちゃん!それはすごい!こっち側だけではなくて、相手の挨拶の仕方はどうなんだってことも大きいよね。される側になってみたら「なんなんだよ!」って「わん!」って一喝したくなることもある。注意をするのは犬的に間違った行動ではないし

ゆき なるほど。注意としての「一喝」か。それですね。実際、ケンタが一度ヌーヌーに強く出たとき、ヌーヌーはそれから引くようになりましたね。その後はケンタも安心したのか、お互いにガウガウやらなくなりました。

祐子 片方が「いい加減にしろ」って注意することで「わかりました」って、穏やかな雰囲気になることってあるよね。だから、お散歩をしていて他の犬に「わん」と吠えた、あるいは吠えられたからと言っても、それは「好き嫌い」とか「怒っている」っていうのではなくて、「それは嫌!」って“行動”を注意していることもある。それを沢山の人に知ってもらいたいなぁ。「あの子嫌いなんだよね」って決めつけちゃうと、また犬社会がややこしいことになる。犬はそうやって教えあう生き物だし、いつまでも根に持ったりはしないしね。

ゆき その話大好き。はっきり物申して、いつまでも根にもたない。犬の好きなところのひとつです。

祐子 私も憧れちゃう(笑)

ゆき うちにいた、ミミちゃんが「いい加減にしなさい」って一喝するとみんな大人しくなったし、今だとケンタがピリピリし始めたら、15歳のコイケルのアンちゃんが注意してくれる。そうすると素直に大人しくなるから、ケンタのことを信じている部分もあるんですけど…。ついつい、お散歩で力んじゃいましたね…。

犬の福祉が保たれているなら
散歩ではスルーもあり!


祐子 さっき「リードは緩める」って言われるのは分かるけど、ヒヤッとしたことのあるワンコだとやっぱりそれは怖いって言っていたでしょ、それはその通りだと思う。だからケンちゃんの場合は、交流できる犬が近くにいて、月に2回はドッグランに行って、他の犬たちのニオイを嗅いだり見たりして、犬の福祉は十分保たれているんだから、これからはもっとスルーすることを教えたらどうかな。その方がケンタ君のためになるかもしれない。

ゆき それやります!スルーの練習!本当なら相手の感情とか気配に気づいて、犬同士で「回避」しあえればいいですけど、きっと、そういう犬の方が少ないというのが、今の犬社会かもしれませんね。ミミちゃんはそれができていたし、うりちゃんもそういうタイプですよね。たぶん、そっちの方が今はレアキャラかもしれない…。

祐子 そうかもしれないね。うりもピリピリしたりオロオロしている犬には近づかないし、顔を背けたり、地面のニオイを嗅いでカーミングシグナルを出しながら堂々としていた。「こっちのことは気にせずに」って。挨拶をするときも悠々として、いいタイミングでサッと離れていたし。

ゆき そうそう、サッと離れる!すごいですよね。ミミちゃんも堂々としていたし、あーいうのは、どうやって身に着けたんでしょうね。

祐子 どうなんだろうね…。ミミちゃんはずっと年配の方と暮らしていたから、ピリピリ感やせかせかした感じとは無縁だったのかなぁ。刺激のありそうな相手は最初から無視…大切なのは自分のペースみたいな?

ゆき はい。そうでした。尊敬すべき状態。柴犬特有の自分のペースを大事にするっていうベースがあって、プラスアルファで環境や飼い主さんからの影響も大きかったということですかね。うりちゃんは?

祐子 うりは若い時は「みんな大好き!」って近づいて、噛まれたこともあったから、経験から学んだっていうのもある。

ゆき へえーそんな時もあったんですね。うりちゃんみたいなタイプの子は元から出来るんだと思ってました。

祐子 うん。たしかに、カーミングシグナルを上手に使うし、元々平和主義っていうのは大きいかな。あとは、最初から他の犬と上手に付き合うことを目標に育てていた。エッヘン…(笑)

ゆき 経験して、自分でうまくいく方法を学習したり、人と一緒に練習しての成果っていうのもあるんですね。やっぱり犬は「経験」することと、一緒にいる「人からの影響」。それがとっても大きい…

音楽:Mindme『I Wish』(楽曲はYouTubeにリンクされています)

いくつからでも
チャレンジしよう!


ゆき 祐子さん、スルーはどうやって練習していくといいですか?

祐子 実はうり店長の妹分として7月からうちにいる“りう”ちゃん…

ゆき りうちゃん!

祐子 「うり」を逆にした「りう」ちゃん。ちょっと紛らわしい名前だけど…。りうちゃんは元々他の犬に対して好意的な反応、ポジティブな興奮がちょっと高かった。でも、心臓が悪いのであまり興奮をさせたくないっていう理由もあってスルーの練習をはじめて2か月

ゆき えー、そんな練習を!どうですか今。

祐子 ちゃんとできるようになりました。でも、この話を始めると閉店時間になっちゃうので、また今度かなぁ…

ゆき えー、また今度―。絶対に忘れないようにしなくちゃ…。でも、今日はリードを緩めた方がいい理由がよくわかりました。ただただ、力んで後ろに引っ張ると「正しい姿勢」で挨拶をするチャンスを奪ってしまうし、綱引き状態で興奮させてしまう。いいことないですね。

祐子 次回はスルーを楽しみながらやる方法の話だね。

ゆき はい。楽しみにしてます!

祐子 さて、時間は大丈夫?じゃあ、今日も楽しい犬談義のお礼にもう一杯いかがでしょうか。
ゆき ありがとうございます。

祐子 あれ?ヌーヌーのこと忘れてた
ゆき 寝てました…可愛い。ずっとの家族、早く見つかるといいなぁ…


番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』 
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』 

放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)

うり店長のInstagram  
ル・ブラン湘南のInstagram 

白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬のカウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”(2023年天界へ)。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の関係や犬の成長の研究を行い、科学的根拠に基づいた独自のメソッドを確立する。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。

里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、犬専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。

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