犬とあなたと珈琲と。Vol.110 袴もな

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南
宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送
湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ『TAKARA CAFÉ』。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬の“うり”。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。
今回のお客様はフリーランスの編集ライター 袴もなさん。もなさんは人気の宅配型月刊誌『いぬのきもち』で連載記事を2本担当されています。これまで、犬を幸せにするために努力されている、多くの個人や団体さんを取材するなかで、影響を受けた人はいたのでしょうか。また、犬たちを取り巻く現状を記者として、愛犬家として、どのように感じているのかを伺いました。ミルボラ体験から芽生えた猫愛や動物好きはお父様 はかま満緒さんの影響だったなどなど。放送作家のお父様が、40年続けていらした、NHKラジオ「日曜喫茶室」のオマージュとまではいきませんが、もなさんとワンコと一緒に「土曜喫茶室」のオープンです。

――こんにちは。もなさん、いらっしゃいませ。お待ちしておりました。
袴もなさん(以下:袴):今日はありがとうございます。噂通り、うり店長もいるんですねー。うりちゃん初めまして(笑)
――ありがとうございます。こんにちわんこ!もなさんとお会いするのは3回目ですけど、1回目はビジネスライクな部分もありましたし、2回目は話したいことてんこもりで、あっという間に時間が過ぎてしまいました。なので、今日はとても楽しみにしていました。
袴:私も緊張と楽しみと半々なんですけど、本当に祐子さんとは色々な話で盛り上がったので、今日はその延長で色々お話しさせていただこうかなと思っています…。
目次
犬の専門誌の
編集ライターとして
――さて、もなさん、袴(はかま)もなさんはフリーの編集ライターでいらして、雑誌『いぬのきもち』の取材を通して知り合いました。
袴:祐子さんは保護犬猫のことも含めて、本当に真摯な姿勢でやってらっしゃるので、そういった縁でお知り合いになれて本当に良かったと思っています。出会いのきっかけになった『いぬのきもち』を少しご紹介させていただきますね。こちらは「ベネッセコーポレーション」という会社が、2002年に創刊した宅配型の月刊誌になります。この『いぬのきもち』がユニークなのは、初めて犬を飼う飼い主さん用とベテラン飼い主さん用の2つに分かれているので、自分に合わせて選べるという点です。それと、今は雑誌はどこでもウエブが必ずパッキングされていますが、『いぬのきもち』も「WEB MAGAZINE」があって、こちらは紙の雑誌で特に反響の大きかった記事を無料で誰でも見られるようになっているんです。
――実際に紙の雑誌を手に取ったことがなくても、犬好きさんであれば雑誌名は「知ってるよ」っていう人が殆どだと思います。私は書籍でも雑誌でも、やっぱり本は紙派なので、ずっと長く続いてもらえればいいなって思っています。
袴:そうですね。『いぬのきもち』が評判を得ているのは、犬用の付録が毎回いいものであったりするので、それが楽しみという読者さんもいらっしゃいますね。
――確かに!お散歩アイテムで「これ付録だったのー」って教えてくれる方、結構います。付録も最高の『いぬのきもち』…。その中で、もなさんが担当されているのが…
袴:私は2カ月に1本のレギュラーを2つ持っているので、毎月やっているということなんですけど、ひとつは「犬ために何ができるのだろうか」をテーマに、犬の幸せのために日頃から頑張って、保護活動をされていたり、保護犬のみならず、たとえば、犬のために歩行器具を作っていらっしゃる方などをフューチャーして、4ページでご紹介しています。もう一つは「困難と闘う」。これは、愛犬を前向きに看病されている方のお話しや実際のノウハウをおうかがいして、それを紹介するもので、こちらも4ページの連載特集となっています。
取材を通し、
影響を受けた人は…

――どちらも連載回数は相当な数になっていらしゃいますよね。これだけ多くの、個人さんや保護団体さんなどにお会いしてきて、どうですか?もなさんが個人的に、この考え方は素敵だな…とか…これっていいな…って、インスパイアされた方などはいらっしゃいますか
袴:そうですね。私も「犬のために~」は、もう6年位やっているので、数々の団体さんや個人さんと会って、いろんなお話をうかがってきました。その中でも個人の方で「すごくお手本になったな」と思う方は、田辺アンニイさんです。個人的にも親しくさせてもらっているんですけど、彼女は個人の活動家の「草分け的存在」って、言っていいですね。多分、30年位で300頭以上の犬猫を保護・譲渡されてきた方で、『それでも人を愛する犬』という本を読んだときに、すごく…こう…ありきたりな保護の話じゃなくて、本当に気持ちの入っているお話しがエピソードとしてあって、すごく感動しました。彼女の文章力もさることながら、無理なく丁寧に、一頭一頭を幸せにする譲渡活動というものに、すごく影響を受けたと思います。
――私もアンニイさん大ファンです。随分昔ですけど、1枚の写真を見て、その写真に完全にノックアウトさせられました。当時は本当に驚きました…自分のライフスタイルを崩すことなく、生活の中に自然に保護活動が組み込まれているように見えました。
袴:そうですね。彼女も決して…保護活動をやってる人って、人よりも余裕があるとか、人よりも意志が強いとか、何でもできる、っていうのでは決してないんですよね。実際、彼女も途中で挫折しそうになったり、悩んだり、もう辞めたいっていうのをすごく赤裸々に綴られていて、すごく「なるほどな…」って、思いましたね。
音楽:『Save Your Kisses for Me』 Brotherhood of Man(楽曲はYouTubeにリンクしています)
ミルボラから
湧き上がった猫愛

――もなさんは、わんこと猫ちゃんとお暮しなんですよね。わんちゃんはステラちゃん、そして猫ちゃんはレイアちゃん…。
袴:はい。実は今まで…、今年の1月までは中型のMIX犬が2頭いました。名前はサニーとステラで、そこに猫のレイアを迎えたんですけど、突発的に愛犬のサニーが虹の橋を渡ってしまったので、今は犬はステラ1頭で、今年で9才になります。猫のレイアは今年6才で、2頭とも女の子です。
――もなさんは、元々はどちらかというと犬派。猫は苦手…って思っていたのにミルボラ(母猫に代わってミルクをあげて育てるボランティア)をはじめてから、猫の魅力にハマったそうですね。
袴:そうですね。猫は外、野良猫で当たり前なんじゃない…?なんていう考えを、昔はもっていたんですけども、私も「ちょっと、保護活動に踏み出してみよう」と思ったことがあって、滝川クリステルさんがやってらっしゃる、『フォスターアカデミー』という、保護犬保護猫とどう接するか…みたいなセミナーに半年くらいかな…行っていました。そこでまた、沢山の仲間ができて、今も親しくしている保護活動仲間から「じゃあ、ミルボラを経験してみなよ」って言われて2頭きたんです。ちっちゃーくて…なんでしょう…もう、衝撃というか…「なんて一生懸命、この子たちは生きようとしているんだろう」って思った瞬間、ジーンときて、こういう一つ一つの命を疎かにしては絶対にダメって気持ちが、その時本当に衝撃として、私の中で芽生えたんです。それでもう、猫への愛情がぼわーって上がってきちゃったんですよね。
――うわぁ。身体は小さくても、生きようとする命の強さ…まさに衝撃です…。そう…このお店の名前は『TAKARA CAFÉ』って言うんですけど、いつもご来店くださる皆さんに「宝物」について、うかがっているんです。
袴:宝物ですか…面白いですね。そうですね…。自分にとっての「宝物」って、最近意識して考えたりしなかったんですけど、自分にとっての宝物って年齢によって大きく違ってくるなって…最近、感じていますね。
宝物は愛犬・愛猫・家族。
命あるもの

――では、もなさん。あなたの宝物はなんですか
袴:月並みな回答になるんですが、やはり「命あるもの」が、今の私の宝物です。今うちにいる、愛犬、愛猫、そして家族は、これ以上にない宝物です。私はバブル期真っ只中に学校を卒業して、就職というか仕事を得たので、当時はみんな贅沢三昧で「ブランドもの命」みたいな(笑)。私も買い漁っていた時期があります。でも、それが今は「命あるもの」こそ、どんな高級品よりも価値があるということに、最近また、ひしひしと感じるようになりました。
――犬や猫たち…。動物好きはお父様からの影響も大きいと聞きました。
袴:父は8年ほど前に他界しちゃったんですけど、昔から特に犬が大好きで、ずーっと途切れず、実家には父が連れて来た犬がいました。そして、必ず言っていたのが、当時の言い方になりますが「捨て犬にしなさい」って。犬を買う必要などなくて「困って捨てられちゃっている犬がいるんだから、そういう子を飼えばいい」って、ずーっと父は言い続けてきたんですね。ですから、今うちにいるステラも元保護犬で茨城県の団体さんから引き取ってきた子です。私が保護犬を迎える時って、何か強く縁を感じるっていうのでしょうか…。毎回「この子はうちに来る子だ」みたいな、なにか「ピン!」ときて、迎えているような気がします。
――一番大切なところだと思います…。
保護動物をトレンドで
終わらせないために

――保護動物を「譲渡する」「譲渡して貰う」には条件がありますよね。それは「適切なお世話をできなくなる人の傾向」っていうものがあって、それを加味して決まっていく訳ですけど、でも、たとえ、それらの条件が全部は揃わなくても、今、もなさんが仰ったように「この子と一緒に暮らしたい」「運命なんだ」「出会えた!」っていう、強い気持ちを持っている人こそが、その犬猫を幸せにできるんじゃないかな…って思う時があります。
袴:そうですよね。最近は特に、保護犬・保護猫って、一種のトレンドというか、ブームのような感じになっている側面もちょっとあるんじゃないかなって思います。それに比例して、保護団体さんの「条件付け」みたいのが、昔に比べて更にまた厳しくなっている気もします。確かに、一度に何百頭も保護しているような団体さんは、それぞれの希望者の”人となり”から、なにからなにまでも詳しく聞いて、向き合ってというは難しいと思います。だから、条件でふるい落としたり…という部分はあるかもしれません。ですけど、保護団体の条件が厳しくなればなるほど、ペットショップに行かれる率も高くなってきちゃう。そういう傾向も今はあります。
――そこは、なかなかもどかしいところでもありますよね。どう希望者と向き合い、なにを読み取っていくか…条件が揃っていないのなら、どうやってそこをカバーしていけばいいのか、支援することも考える。「人と向き合っていく」ことも、これからの保護団体に課せられた課題なのかもしれませんね。
袴:そうなんですよね…
お父様は昭和のテレビ、
一時代を築いた放送作家

――もなさんは、こうしてお話をしていても、とにかく話がお上手で、いつもこうやって何時間も過ぎてしまうんですけど、それもそのはず、もなさんのお父様は…これを言うと「わー!」っていう方が沢山いると思います。放送作家のはかま満緒さんのお嬢さんでいらっしゃるんですよね。子供の時は特別な環境で育ったのではないですか
袴:そうですね。それはまさに、当時の学生時代の同級生とは、かけ離れた家の感じでした。と、いうのは、父はずっと「門下生」みたいな…放送作家やお笑いの方々を門下生として、うちで生活してもらっていましたので、まず「家族だけ」という環境は殆どなくて、誰かしらの住民がいたりしました。家の出入りも激しかったので、母は大変だっただろうと思うんですけど、毎晩のようにお客さんというか、メディアの人たちを家に呼んでは、ワイワイやっていました。本当に賑やかな家でしたね。
――わぁ、昭和の映画の世界観です。「はかまお笑い塾」を作って、萩本欽一さんや市川森一さんなど、多くの芸人さんや脚本家を世に送り出したという話は有名です。そして、私も大好きでした、NHKラジオの「日曜喫茶室」では40年に渡って、トークを繰り広げられておられました。そんなお父様のお話しとか、子供時代の話しも聴きたいのですが、そうなってしまうと、閉店時間になってしまいます。ここで一息、なにかお好きな曲をおかけしましょうか
袴:じゃあ、今、私がお気に入りのアーティストはビリーアイリッシュなんですけど、彼女は個人で犬の保護活動をやっていてメディアにも結構載っています。ビリーちゃんは、今ピットブルのMIXかな…を団体さんから引き取って、愛犬として飼っているそうです。そのビリーアイリッシュの『CHIHIRO』をお願いします(楽曲はYouTubeにリンクしています)。
小さくてもいい!
アクションを起こす

――袴もなさん。今探している宝物はなんですか。
袴:それもちょっと月並みと言えば月並みなんですが…「人との出会い」ですかね。犬猫の保護活動もしかり、やはり待っているだけとか、どうせこんなことをしても無理だから…っていうのではなく、本当にちょっとしたアクションを自分から起こすっていうのが大切だと思います。その上でも、一人ではなかなか成し遂げられないことも、人と出会って、また何かが発展していく。今後もまた、色々な方と出会って、何か新しいことをしていけたらな…って思っています。
――素敵!もなさんの人との繋がり、ご縁があれば、絶対に何かを動かせると思います。私も微力ながら応援させてください。今日はまだお時間はまだありますか?楽しい会話のお礼に私から…もう1杯いかがでしょう…。今度はもっともっと色んなお話を聞きたいです。
袴:はい。ありがとうございます。楽しかったです!
もなさんの
番外編

印象に残った
団体や組織
――動物の幸せのために活動されている個人さんや団体さんを取材されるなかで、印象に残っている団体はありますか
袴:最近、すごく面白いなって思うのは、保護犬を助けるだけではなく、プラスアルファで先を目指している団体さんや組織がちょっとづつ増えてきていることです。たとえば、茨城県に『KIDOGS』というNPO法人が運営する施設があります。ここは、学校や会社に行くのが辛くなったなどの理由で、引きこもりがちになっている若者を、保護犬を通じて少しづつ社会参加してもらおうというコンセプトでやっています。代表の方は20代くらいに立ち上げられて、今ではとても大きな施設になっています。
もう一つは、あまり大きく知られていないと思いますが、『慈恵医大病院』です。ここでは苦労の末、3頭の保護犬たちを病院の犬として迎え入れていて、今はセラピー犬として、ロビーのセラピー会場や小児病棟で子供たちのリハビリや手術後の気持ちの癒しと活動しています。他の病院でも、いわゆるセラピー専門の犬を導入しているところはありますが、そうではなく完全保護犬にしたっていうのが、この『慈恵医大』のすごいところだと思っています。
――『KIDOGS』さんは私もとても興味があって、一度見学に行きたい場所の一つです。そして『慈恵医大病院』は、実験動物を入れていた犬舎が空いたので、そこに保護犬を迎えようというのが、最初だったそうですね。そして、保護犬たちを「セラピードッグ」とは呼ばず、「慈恵犬」って呼んでいると言う話を聞いたことがあります。
袴:よくご存じですね!
――私も院長先生、小島病院長先生とお話しさせていただいて、活動を見学しに行ったことがあるんです。犬のお世話やセラピー活動のボランティアはすべてお医者さんの奥様達がされていて、なんて素敵なんだろうって思いました…。
袴:そうだったんですね。『慈恵医大』のこのプロジェクトは嘉糠先生という先生がはじめられたのですが、嘉糠先生が「うちでは保護犬をセラピードッグにするためのトレーニングは一切していない。人を噛まなければそれでいい。それが一つの目標」って、話していたのがとても印象的でした。当然、3頭の犬たちはみんないい子なんですけど、トレーニングを一生懸命する必要はないとする理由が、「なぜなら家庭で飼っている犬というのは、その存在があるだけで癒されたり、家族としてすごく励みになったり、落ち込んでいるときには寄り添ってくれて、それだけで元気が出たりする。だから、なにか特別な技能やスキルなんて、なくてもいいんです」って。それを聞いて、なるほどなぁって思いましたね。
保護猫は大人気!
でも子猫が中心
――はじめてのミルボラの子猫ちゃんはどうなりましたか?
袴:無事に譲渡されました。「いくら」と「たら」って名付けて、本当にかわいい、始めての猫でした。この2匹を譲渡サイトに出したら、すぐに1頭につき10人くらいの希望があって、本当に猫は大人気だなと思いました。でも、そうなると今度は「どの方にしよう…」って、そういう苦労もはじめて経験しました。東京ではどうしても犬よりも猫が多いので、その後も約20頭くらいの猫のお世話をして、譲渡してきたんですけど、成猫で人慣れがまだそんなにできていない子たちには、一切応募がなかったですね。だから、その中でどうやって「希望者を見つけようか」って、色々と知恵を絞っていく必要がありました。保護・譲渡っていうのは、動物だけを相手にしていればいいってわけじゃなく、やっぱり、ヒト対ヒトなんですよね…。そう強く感じました。

関連サイト
『いぬのきもち』WEB MAGAZINE⇒「こちら」
袴もなさんのInstagram⇒「こちら」
番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』
⇒⇒過去のお客様が一覧で見られます
インタビュー・放送構成・文:白田祐子(しらたゆうこ)
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白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:認定心理士。ヒトと犬の心と行動カウンセリングラ「ル・ブラン湘南」代表・ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは沖永良部島出身、雑種の女の子で名前は“うるる”(うり店長は2023年お空組)。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の社会心理学と犬の心の成長が専門。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持されている。
保護犬猫の譲渡会開催や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合う。講師、犬専門雑誌の監修や執筆を行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1Mhzレディオ湘南にレギュラー出演、2022年4月から新番組『radio cafe犬とあなたと珈琲と。』がスタート。神奈川県三浦郡葉山町にて『お寺でわんにゃん縁結び』を主催