犬とあなたと珈琲と。

聞逃し配信中(音楽は全てダミーです)
収録:レディオ湘南
宝製菓presents radio café『犬とあなたと珈琲と。』FM83.1MHz レディオ湘南(第1.第3土曜 16:00~16:29)放送
湘南の海を見下ろす、小さなコーヒーショップ「TAKARA CAFÉ」。オーナーは心理士でドッグカウンセラーのしらたゆうこ。店長はカフェオレ色の17歳、愛犬のうり。美味しい珈琲を飲みながら、お客様との会話に耳を傾けてみませんか。
4月19日のお客様は常連客のゆきさん(株式会社イヌと暮らす代表取締役)。今回のテーマは「犬に好かれる人の特徴」。ファーストコンタクトなのに、犬からふらっと近づき、足元に留まりカラダを触らせてあげる人。一旦興味を示しても、その後は犬から近づくことのない人。吠えられる人。全く関心を持たれない人。笑顔で駆け寄られる人。犬は何をもって「好き」や「嫌い」を判断しているのでしょう。人間は見た目に騙されやすく「第一印象」という幻想に惑わされがちですが、犬は実に客観的にその人なりを判断しているようです。だから犬に好かれる人には共通点があるのですね。こんなに犬愛が強いのにわかってもらえないのはどうして?今回も保護活動をしながらトリミングサロンを経営しているゆきさんと、人と犬の関わりを探究しているドッグカウンセラーの白田祐子がそれぞれの視点で紐解いていきます。

祐子 こんにちは。ゆきちゃん。いつもありがとうございます。
ゆき こんにちは祐子さん。うりちゃんもこんにちは!今日は日の丸君と来ましたー。とても落ち着いている子だからうりちゃんと気が合いそう(日の丸君の写真は本文最後)
祐子 うりも若い頃はワンプロが好きだったけど、もうハッスルしないからね。日の丸君はどこからやってきたの?
ゆき 繁殖場のレスキューで「マルプー」って呼ばれている、マルチーズとプードルのミックスです。本当に落ち着いた子なので初めての方やどんなご家庭でも向いていると思います。
*中山ゆきさんが所属する保護団体の譲渡会の情報は「PAK」(Paws Adoption かながわ)ただいまInstagramが乗っとられ被害中。フォロー中の方はフォローを外した方が安全です
目次
関係性でもかわる、
リーダーシップの必須要素

ゆき 祐子さん、この前は「犬に尊敬されるようになるにはどうしたらいいですか」なんて、とんでもなく壮大な質問をしちゃいましたー。
祐子 ゆきちゃんの名言も飛び出しました!「尊敬」される…犬の場合であればもう少しキラキラっとした「リスペクト」に置き換えてみたけど、社会的な動物、群れで暮らす犬たちにリスペクトされるには「優れたリーダーシップ」を発揮できる存在であることも大切な条件の一つ。その視点から「優れたリーダーとは」を考えてみました。結果、「リーダーシップは、みんなの信頼の上に成り立つ」っていう、ゆきちゃんの名言が残った(笑)
ゆき 最終的に、リーダーの行動には「攻め」と「守り」の二つがあって、どちらもバランスよくできるのが一番いいんだけど、私は心の支えになれる「守り型」の方が向いているんだって思いました。そして、それも立派なリーダーと言えるって知って、ちょっと自信が持てました…。
祐子 それに、リーダーって「ただ一人」っていう訳ではないんだよね。たとえば、野生のオオカミの場合、狩りの時は足が速くて、敵の動きを読むのが得意。あいつがいれば最高のフォーメーションを組みながら、獲物をしとめる確率があがる。そんなあいつが自然にリーダーになるだろうし、子育ての時は、良いコトとダメなコトの境界をしっかり教えて、安全に子供達を育てられる保育係がリーダーになったり。
ゆき なるほど。 沢山の犬たちを統率して上手にハンドリングしている人を目の当たりにすると、リーダーシップすごいなって思うけど、それだけではないってことですよね。
祐子 どの犬とどういう関係でありたいのか…。自分の理想や目指すもので、必要な資質や技術は変わるんじゃないかな。目的や関係性、おかれた立場や環境、そして犬の性格も含めて、「攻め」と「守り」のどこにシフトを入れて、どのくらいアクセルを踏みこむのか。そのバランスが重要だと私は思うかな。
ゆき すごい…なるほど。まずは自分がどんなふうに犬たちと生活していきたいのか。理想はどんな関係なのか…それをしっかり考えなくちゃですね。
祐子 そういうことだよね。それが明確にわかれば「しつけのポイント」もわかるし、自分に必要なことも見えてくる。
ゆき たしかに。共感です。それが段々わかってきました。
犬に好かれる人には
共通の特徴がある
ゆき そんなこんなで、普通にハッピーに暮らしていくには、あまり難しいことより犬に好かれる人には「共通の特徴」があるから、それを知ることの方がいいかもって話が終わったんですよね。
祐子 そうでした。犬に好かれる人の特徴!
ゆき 聞きたいでーす

音楽::COSA NOSTRA『JOLY』(楽曲はYouTubeにリンクしています)
犬は人と違って客観的?
見た目に騙されない!

ゆき 犬に好かれる人の特徴…教えてください
祐子 では、ちょっとその前に…犬は、誰か他人とファーストコンタクトのとき「仕草」「表情」「物言い」「ニオイ」の全体から客観的に判断していることが、色々な検証でわかっているんだけど、この「客観的」って言うのがとっても重要なのね
ゆき 仕草・表情・物言い・ニオイからの客観的判断…
祐子 私たち人間は「第一印象」って呼ばれる、いわば「幻想」を判断基準にしている節があるから、悲しいかな「見た目に影響を受けやすい生き物」。でも、犬は客観的判断、ヒトは幻想…
ゆき ヒトは幻想。これはこれで気になる
祐子 話が逸れちゃうけど、たとえば、心理学用語に「ユニフォーム効果」っていうのがある。白衣を着ている人と着ていない人の写真を見せて、それぞれの印象を測定すると、白衣を着ている人の方が「信頼度」が高まる。それはなんとなく「そうかも」って思うよね。でも、なぜか白衣の人は身長も高くみられる。そこまでいくと「まぼろしー」でしょ。犬の判断能力はそういう幻想には捉われず実に客観的。ということは、犬視点からの「好きな人」っていうのは、ほぼ犬全体の共通項目であって、人とは違って見た目には騙されないらしい…。ちょっと怖い…
ゆき 全てお見通しってやつですね…
穏やかな人が好き。
表情や声・話し方に注目

祐子 では本題です。犬に好かれる人の特徴は大きく二つ。一つは“穏やかな人”。そして、もう一つは”待ってくれる人”
ゆき わたし両方ダメかもー
祐子 そう?犬の人に対する判断基準は「仕草・表情・物言い・ニオイ」っていうのを踏まえると、具体的に、穏やかな表情の、穏やかな話し方の、丁寧な仕草の、温かなエネルギーを放つ人。ってこと。
ゆき もうそれは絶対ですね。感覚的にわかります。だからと言って「穏やかそう」にしてみても見抜かれちゃうんですよねー。
祐子 本当にそう。愛想笑いしたり、優しい言葉で取り繕っても見抜かれちゃう。最高のウソ発見器だよね。犬は笑顔の人が好きっていうのは、いくつかの検証実験でもわかっていて、実験の方法は割愛するけど、犬に全く見知らぬ人たちの、目元と口元だけを切り取った写真を見せても、笑顔なのか怒った顔なのかを判断できるそう。だからマスクしていても、目が笑っていれば犬には笑顔が伝わる。
ゆき すごい!目元と口元だけで!
祐子 そう。だから、犬と目があったらゆったりと微笑んであげる。さらに、頷いてあげるとより愛は伝わるから、そういうゆとりのある雰囲気が犬は大好き
ゆき 穏やかな表情かぁ…微笑む、うなずく。これは案外知らないというか、やっていない人は多いと思いますね。それを知るだけでも違いますね…
祐子 そうかぁ…。どうしても人は喋り過ぎちゃう傾向にあるしね。犬にとって言葉は雑音になるから表情や気持ちで会話ができる人の方が犬は好む。うなずく、微笑む、温かなエネルギー
ゆき 人は喋り過ぎかぁ…納得です。私はどうしても楽しいとテンション高めで声も大きくなりがちだから、その辺は全然ダメですね。だから、最初はあまり犬が寄って来ないのか(笑)
祐子 そんなことないよー(笑)

祐子 最初のうちは話しかけるのは最小限で。話すときは、ゆったりとしたスピードで少し高めの声。声の高さは人それぞれ違うから難しいところだけど、普段の話声が少し高めの女性位で大丈夫。変に高くしすぎる必要はない。最近は「笑声(えごえ)」って呼ばれるけど、口角をあげて笑顔で声を出す。そういう声が犬は大好き。ゆきちゃんの声はかわいくてそういう声だと思う。笑顔と仏頂面では声の高さも柔らかさも響き方も違うから、やっぱり笑顔が大切。
ゆき それはできているかも。犬を見るとついつい笑ってしまうんで。笑顔で声を出す!わかりやすいです。私はその「穏やかさ」は、あまりないって自覚しているので、仕事のときは意識して喋らないようにしていますね。で、そのまま仕事モードに入って集中していったら、気持ちもスッと落ち着いていくから、結局、二つはできているんですよね…きっと。仕事の時はこのスイッチがあるから、犬も安心してトリミングさせてくれるっていうのはあると思います。
祐子 さすが!それこそプロだよね。
犬にわかりやすい
身振りも大切

祐子 穏やかな表情で穏やかな話し声で…。あとは、丁寧な仕草の人
ゆき やっぱり、突然走ったり…大きな動きとか、動きもテンション高めの人より、落ち着いた人の方に近づいていきますもんね。
祐子 こどもが苦手な犬が多いのもそういうところだよね
ゆき なるほど納得です。でも仕草って…難しいかな…どんなのがありますかね
祐子 さっきの「うなずく」もそうだけど。犬にわかりやすい仕草っていうのも、丁寧な仕草にあたるんじゃないかな。たとえば、前に犬の「指さし実験」の話をしたでしょ。犬は人が目線や顔を向けるだけで、そちらに誘導されやすい傾向にある。だから、「コトバ」だけでワーワー伝えられるよりも、「どうぞ」って手で指し示してくれた方がわかりやすいから、犬はそういう丁寧な仕草の人の方が好き。それに、身振り手振りはコトバと違って、発信者のその時々の感情の影響って受けにくいでしょ
ゆき ですね。犬に注意をするときも、カラダを動かさないで声だけで注意するとか、どうしてもしゃべり過ぎちゃうとダメってやつですね。あと、犬の前で落ち着いていられる人って、犬を怖がっていないっていうのもありますよね。
祐子 そうか!そうだね。どんなに「犬が好きです」って言っても、心の隅で「怖いな」ってちょっとでも思っていたら、犬はすぐに見抜くよね。ちょっとした筋肉の動きやホルモン変化のミクロなニオイでも犬は反応するし、撫でようと出した手を躊躇って引っ込めたり。あれは犬にとってはイヤな動きの一つだね
ゆき 犬って素敵―。ミクロなニオイがわかる!って
祐子 コロナ感染者やがん患者をニオイで判別できるって言われているもんね
犬は待ってくれる
人が好き!

祐子 犬に好かれる人の特徴。もう一つは“待っていられる人”
ゆき 私、待っていられないー!(笑)
祐子 待っていられるって言うのは「犬が来てくれるまで待っていられるか」「犬が立ち止まっても、待っていられるか」「犬に考える時間を与えられるか」そして「動き出すまで待っていられるか」。どう?
ゆき 本当にその通りだと思います。待っていられない私はお座りさせるときも「お座り」って何回もたたみ掛けて、結局、お尻を押しちゃったりしてね
祐子 たたみ掛けたら、余計座らないよね。声にイライラが含まれて、穏やかな声からはかけ離れていく。あと「散歩に出たがるから連れて行ったのに、立ち止まって歩かなくなります」っていう相談が多いんだけど、犬が立ち止まったら、後ろに下がれば歩きだすパターンは多い。犬は自分のペースで歩きたい。もう少し待ってほしい。特に小型犬の場合は多い印象かな。視界をふさがれるのが嫌っていうのもあるみたい。
ゆき へー、それは面白い。知らなかったです。「犬が近づいてくるまで待つ」も、ちょっと苦手かなぁ。すぐ触っちゃう(笑)しかも、相手の隙を見てサッと触っちゃう…小学生みたいに…
祐子 犬は嗅覚で情報収集をしているから、ニオイを嗅いでくれるまで待って「この人は大丈夫だな」って犬にわかってもらう。ジャッジをしてもらった方がその先もずっと信用してもらえる。もちろん、誰にでも撫でてもらいたくて尻尾を振って駆け寄ってくる子は別の話だけど…。
ゆき よーく、わかりました。自分に置き換えてみます。
音楽:Bruno Mars『Count on Me』(楽曲はYouTubeにリンクしています)
人間のやり方や自分の気持ちを
押し付けない

祐子 じゃあ、今日のまとめ。ワンコのいるのお友達の家に遊びにいくことになりました。これからもずっと友達でいたいって思います。どういう振る舞いをするとワンコと仲良くなれるでしょうか。
ゆき はい。まずは「こんにちは〜」ってフレンドリーな声の高さで挨拶をして、おうちの人と仲良し感をアピール。表情は笑顔でリラックス。ワンコを確認したら、高まるテンションをグッと抑えてゆっくり動き、そっとそばに座ってニオイを嗅いでもらうのを待つ。その時は、声をあげるかわりにゆっくり頷く。その子の確認作業を「大木のような気持ち」で、ゆっくり待つ。それが終わっても、そばにいてくれるようならゆっくり撫でさせてもらって…。で、結局、撫でまわす(笑)どうですか。
祐子 撫で回すまでの道のり(笑)そばに座らず、家の人が座ってくださいっていうところ行くのがいいかな。犬のいるところは、犬の安全地帯のときもあるから、客は客席で待つ。結局、コミュニケーションだよね。人間のやり方や自分の気持ちを犬にあてはめず、押し付けないこと、尊重すること。
ゆき わかりました。ここまで話を聞いて「なるほどなー」って思ったのは、浦やアサヒを散歩させていると、よく会う小学生の二人組の子がいるんですよ。一人の子は犬好き全開で「可愛い!」って声をかけてくれるから、浦は嬉しくなってビュンビュンしちゃうんですけど、撫でようと手を出されると避けるんです。でも、もう一人の子は後ろの方で静かにニコニコしているだけ。で、浦がその子のニオイを嗅ぎに行く感じで近づいて行くと、その子は浦を撫でられるんですよ。しかも、優しく上手に触るから、いつも感心して見ているんだけど、自然にそういうことができるタイプっているんですよね。祐子さんもそうじゃないですか?
祐子 確かに人それぞれ、なにかの「強弱」みたいな違いはあると思う。
タイプの違いはあれど
犬の前では意識しよう

ゆき せっかちな人間にしてみたら、自分では「ゆっくりやってる」って思っちゃっているんですよ。だから気づかないんですね…。「お外を始めて歩きます」っていうレベルの犬の散歩動画をトレーナーさん見てもらったことがあるんですけど、その時「動きが20倍速い」って言われて…「そうか、私、自分が思っているより20倍速いんだ」って気付きました(笑)
祐子 ゆきちゃんの動きは20倍速(笑)犬に好かれる人の特徴、穏やかな人、待つことのできる人。そのどれかが苦手っていうのは、みんなあると思う。だから、ゆきちゃんが言っていたように「口は閉じておこう」とか、意識してやってみると何か楽しい発見があるかもだよね。それに、犬の前で穏やかな人も、違う場面では大きな声を出すこともあるはずで、犬に好かれる人は「犬に好かれるスイッチ」を持っていて、そのスイッチが意識的であれ無意識であれ、犬の前では「ON」になるってことなんじゃないかな。
ゆき なるほど!よかった。それなら、どんなタイプの人でも、これらのことを知っておけば大好きな犬たちと、もっと仲良くなれます。
祐子 犬のストレス軽減のためにも、みんなに知ってもらって実践してもらえるといいね。さて、時間は大丈夫?では、今日も犬談義のお礼に私からもう一杯…
ゆき いつもありがとうございます。いただきます。
祐子 そうだ、日の丸君は?
ゆき いい子に丸まって寝ています
祐子 日の丸の「まる」だね

番組サイト『犬とあなたと珈琲と。』
保護犬猫支援店/トリミングサロン『イヌと暮らす』
放送構成と文:白田祐子(しらたゆうこ)
うり店長のInstagram
ル・ブラン湘南のInstagram

白田祐子(しらたゆうこ)
プロフィール:日本心理学会認定心理士。ヒトと犬のカウンセリングラボ「ル・ブラン湘南」代表/ドッグカウンセラー。
1990年代から犬の行動や心理を独学し、保護施設などでしつけのボランティア活動を開始。現在のパートナーは2005年生まれの雑種の女の子で名前は“うり”(2023年天界へ)。大学で心理学を専門的に学び、人と犬の社会心理学が専門。2013年にパーソナルドッグカウンセリングを開始。人と犬のパーソナリティを重視したコーチングは特に多くの女性に支持される。
里親制度の普及や地域行政と連携した“犬のしつけ”相談業務など、教育、行政、法律と多方面で人と犬の問題に向き合い、専門雑誌の監修や執筆も行う。愛玩動物飼養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、ペット災害危機管理士、小動物防災アドバイザー、猫防災アドバイザー他、ペット関連資格多数。湘南ビジョン大学講師。2014年より神奈川県動物愛護推進員。2019年よりFM83.1MHzレディオ湘南に出演中。神奈川県三浦郡葉山町にて『お寺でわんにゃん縁結び』を主催